映画『アンブッシュ』(2021)を紹介&解説。
映画『アンブッシュ』概要
映画『アンブッシュ』は、2018年に内戦下のイエメンで発生したUAE軍兵士への待ち伏せ攻撃と救出作戦を基に、敵陣で孤立した兵士たちの死闘を描くミリタリーアクション。ピエール・モレル監督(『96時間』)が、地雷やロケット弾、装甲車、ドローン、ヘリコプターなどを駆使した戦闘を臨場感豊かに映像化した。出演はマルワーン・アブドゥッラ・サーリフ、ハリーファ・アル・ジャースィム、ムハンマド・アフマドら。
作品情報
| 日本版タイトル | 『アンブッシュ』 |
|---|---|
| 原題 | Al Kameen(英題:The Ambush) |
| 製作年 | 2021年 |
| 本国公開日 | 2021年11月25日 |
| 日本公開日 | 2023年12月29日 |
| ジャンル | 戦争/アクション |
| 製作国 | アラブ首長国連邦/フランス |
| 原作 | 無(2018年にイエメンで発生した実話に基づく) |
| 上映時間 | 111分 |
| 監督 | ピエール・モレル |
|---|---|
| 脚本 | カーティス・バーテル/ブランドン・バーテル |
| 製作 | デレク・ドーチー/ジェニファー・ロス |
| 製作総指揮 | スチュアート・フォード/ジェローム・ラトゥール |
| 撮影 | ティエリー・アルボガスト |
| 編集 | フレデリック・トラヴァル/シャナーズ・ドゥライミー |
| 作曲 | ハリー・グレッグソン=ウィリアムズ |
| 出演 | マルワーン・アブドゥッラ・サーリフ/ハリーファ・アル・ジャースィム/ムハンマド・アフマド/アブドゥッラ・サイード・ビン・ハイダル/マンスール・アルフィーラ/サイード・アルハシュ |
| 製作 | AGCスタジオズ/イメージ・ネーション・アブダビ |
| 配給 | VOXディストリビューション(UAE)/クロックワークス(日本) |
あらすじ
2018年、内戦下のイエメン南部。帰国を目前にしたUAE軍兵士アリ、ビラル、ヒンダシは、支援物資を運ぶ通常任務中、渓谷で武装勢力の待ち伏せを受ける。地雷とロケット弾で装甲車を封じられ、通信も途絶するなか、司令部は仲間を生還させるため総力を挙げた救出作戦に挑む。
主な登場人物(キャスト)
アリ・アル=ミスマリ(マルワーン・アブドゥッラ・サーリフ):UAE軍の軍曹。任期を終えて帰国する直前、ビラル、ヒンダシとともに通常の巡回任務へ向かう。渓谷で武装勢力の待ち伏せを受け、装甲車の中に閉じ込められる。
ビラル・アル=サーディ(ハリーファ・アル・ジャースィム):UAE軍の准尉。アリ、ヒンダシと同じ装甲車に乗っていた兵士のひとり。
アリ・アル=ヒンダシ(ムハンマド・アフマド):UAE軍の軍曹。支援物資を運ぶ巡回任務中に奇襲を受けた3人の兵士のひとり。
モハメド・アルマズルーイ中佐(アブドゥッラ・サイード・ビン・ハイダル):奇襲を受けた兵士たちが所属する部隊の指揮官。
作品の魅力解説
限られた舞台で緊張感を持続させるテンポ
戦争映画としての迫力はもちろん、本作で特筆すべきは、観客を立ち止まらせないテンポのよさだ。物語の中心となる舞台は狭い渓谷周辺にほぼ限定され、装甲車の中で救援を待つ兵士たちと、彼らを救おうとする部隊の攻防が繰り返される。それでも映像が単調に感じられないのは、敵の位置がつかめない恐怖や刻々と変化する戦況を、演出と撮影によって絶えず更新しているからだ。緊張の糸を切らすことなく、救出作戦の行方へ観客を引き込んでいく。
雄大な映像美と息詰まる戦闘描写
『96時間』『パリより愛をこめて』などで知られるピエール・モレル監督は、逃げ場のない渓谷という地形を生かし、地雷、狙撃、ロケット弾による攻撃を臨場感豊かに映像化。装甲車から見える限られた視界と、ドローンや航空機が捉える広大な景観を組み合わせることで、兵士たちが置かれた状況を立体的に伝えている。乾いた大地や岩山が織りなす美しい映像と、息詰まるような戦闘描写が絶妙なバランスで共存している点も見逃せない。
特定の戦場から浮かび上がる普遍的な感情
本作が描くのは、2018年のイエメンで戦ったUAE軍兵士たちの物語である。しかし、戦場であらわになる感情に国籍や文化の違いはない。自らの正義を信じる意志、死を目前にした恐怖、避けることのできない犠牲への痛み、それでも前へ進もうとする勇気、そして仲間を思う熱い心。極限状態に置かれた兵士たちの姿から、時代や地域を越えて変わらない人間の本質が浮かび上がる。
「誰かの戦争」を観客自身の問題へ変える力
イエメン内戦やUAE軍に馴染みのない観客にとって、本作の背景は遠い国で起きた出来事に映るかもしれない。しかし、目の前で傷つく仲間を救いたいという切実な思いは、知識や立場を越えて伝わってくる。どこの誰の戦争であっても、その中には普遍的な恐怖や悲しみ、連帯が存在する。本作は、それらをスクリーン越しに生々しく体感させ、遠い戦場の出来事を観客自身にも通じる人間の物語へと変える戦争映画である。
ライター/エディター/映画インスタグラマー。2019年に早稲田大学法学部を卒業。東京都職員として国際業務等を経験後、ライター業に転身。各種SNS(Instagram・X)やYouTubeチャンネル「cula 見て聞く映画マガジン(旧:アルテミシネマ)」においても映画や海外ドラマ、音楽といったカルチャーに関する情報レビューを発信している。
