映画『トム・クルーズ/栄光の彼方に』(1983)を紹介&解説。
映画『トム・クルーズ/栄光の彼方に』概要
映画『トム・クルーズ/栄光の彼方に』は、『タクシードライバー』『レイジング・ブル』などの撮影で知られるマイケル・チャップマンが長編映画監督デビューを飾り、衰退する鉄鋼の町から抜け出すことを夢見る高校生を描いた青春スポーツドラマ。ペンシルベニア州の小さな町で暮らすアメリカンフットボール選手ステフは、大学の奨学金を得ることに将来を懸けるが、重要な試合をきっかけにコーチと激しく対立してしまう。主演はトム・クルーズ、共演にクレイグ・T・ネルソン、リー・トンプソン、クリス・ペンら。
作品情報
| 日本版タイトル | 『トム・クルーズ/栄光の彼方に』 |
|---|---|
| 原題 | All the Right Moves |
| 製作年 | 1983年 |
| 本国公開日 | 1983年10月21日 |
| 日本公開日 | 劇場未公開・ビデオ発売 |
| ジャンル | スポーツ/ドラマ |
| 製作国 | アメリカ |
| 原作 | パット・ジョーダン「A Football High」(GEO誌掲載記事) |
| 上映時間 | 91分 |
| 監督 | マイケル・チャップマン |
|---|---|
| 脚本 | マイケル・ケーン |
| 製作 | スティーヴン・ドイッチ/フィリップ・M・ゴールドファーブ(共同製作) |
| 製作総指揮 | ゲイリー・モートン |
| 撮影 | ヤン・デ・ボン |
| 編集 | デヴィッド・ガーフィールド |
| 作曲 | デヴィッド・キャンベル |
| 出演 | トム・クルーズ/クレイグ・T・ネルソン/リー・トンプソン/チャールズ・シオッフィ/ゲイリー・グレアム/ポール・カラフォテス/クリス・ペン/サンディ・ファイソン |
| 製作 | 20世紀フォックス/ルシル・ボール・プロダクションズ |
| 配給 | 20世紀フォックス(米国) |
あらすじ
不況に苦しむペンシルベニア州の鉄鋼の町アンパイプ。高校生のステフ・ジョルジェヴィッチはアメリカンフットボール部のスター選手で、スポーツ奨学金を得て大学へ進み、鉄工所で働く以外にほとんど選択肢のない故郷から抜け出すことを夢見ていた。しかし大事な試合での敗北をめぐってコーチのニッカーソンと衝突し、感情を爆発させたステフはチームから追放されてしまう。大学進学への道まで閉ざされかねない状況の中、ステフは自らの行動と将来に向き合っていく。
主な登場人物(キャスト)
ステフ・ジョルジェヴィッチ(トム・クルーズ):高校アメリカンフットボール部の中心選手。工業の衰退した故郷を離れて大学で工学を学ぶことを望み、そのための奨学金獲得に将来を懸けている。
ニッカーソン(クレイグ・T・ネルソン):ステフが所属するアメリカンフットボール部のコーチ。選手たちに厳しく接する一方、自身も高校チームで結果を残して次のキャリアへ進むことを望んでいる。
リサ(リー・トンプソン):ステフの恋人。町から出たいというステフの夢や不安を身近で見つめながら、彼を支える。
ブライアン(クリス・ペン):ステフのチームメイト。ステフと同じ町で青春を過ごす若者のひとりとして、将来の選択肢が限られた地域社会の現実を映し出す。
作品の魅力解説
勝利よりも「この町を出られるか」を描くスポーツ映画
本作でアメリカンフットボールは単なる青春の舞台ではなく、ステフにとって人生を変えるための数少ない手段として描かれる。父や兄のように鉄工所で働く未来を避け、工学を学ぶためには奨学金が必要。その切迫感が試合やコーチとの対立に重さを与えており、典型的なスポーツ映画以上に労働者階級の青春ドラマとしての性格が強い。
舞台となるペンシルベニア州ジョンズタウン周辺でロケが行われ、工業都市の風景そのものが登場人物たちの閉塞感と結びついている点も特徴。成功すればすべて解決するという単純なサクセスストーリーではなく、若者だけでなく大人たちも町から抜け出す方法を探している。
スターになる直前のトム・クルーズが見せる荒々しい青春像
1983年は『卒業白書』によってトム・クルーズが一躍スターとなった年でもある。本作のステフには、後年のクルーズ作品で定番となる強烈な向上心や負けず嫌いなエネルギーがすでに見える一方、感情を制御できず自ら将来を危うくしてしまう未熟さも強く表れている。
対するクレイグ・T・ネルソン演じるニッカーソンも単純な悪役ではない。ステフとコーチは立場こそ違うものの、現在いる場所から抜け出したいという点ではよく似ており、その似た者同士の意地が対立を激化させていく。
泥と寒さまで感じさせるフットボール場面
撮影を担当したのは、後に『スピード』などを監督するヤン・デ・ボン。雨と泥にまみれた試合場面は華やかなスポーツ映画というより肉体的な消耗戦として撮られ、地域社会にとって高校フットボールがどれほど大きな意味を持っているかを視覚的に伝える。
物語には青春映画やスポーツ映画として定型的な部分もあるが、閉塞した町、経済状況、親世代の人生まで含めて若者の進路を描くことで、比較的地に足のついた作品に仕上がっている。
