『1917 命をかけた伝令』とはどんな映画?あらすじ・キャスト・魅力まとめ

映画『1917 命をかけた伝令』(2019)を紹介&解説。


映画『1917 命をかけた伝令』概要

映画『1917 命をかけた伝令』は、サム・メンデス監督(『007 スカイフォール』『007 スペクター』)が、第一次世界大戦の西部戦線を舞台に描く戦争ドラマ。敵の罠に向かおうとしている味方部隊を救うため、作戦中止の命令を届ける若きイギリス兵たちの決死の任務を追う。複数の長回しを緻密につなぎ、全編がひとつながりの映像に見える撮影手法も大きな特徴。ジョージ・マッケイディーン=チャールズ・チャップマンが主演を務め、コリン・ファースベネディクト・カンバーバッチマーク・ストロングらが共演した。

作品情報

日本版タイトル 『1917 命をかけた伝令』
原題 1917
製作年 2019年
本国公開日 2019年12月25日(アメリカ限定公開)/2020年1月10日(イギリス公開・全米拡大公開)
日本公開日 2020年2月14日
ジャンル 戦争ドラマ
製作国 イギリス/アメリカ
原作 無(サム・メンデスの祖父アルフレッド・メンデスが語った従軍体験に着想)
上映時間 119分
監督 サム・メンデス
脚本 サム・メンデス/クリスティ・ウィルソン=ケアンズ
製作 サム・メンデス/ピッパ・ハリス/ジェイン=アン・テングレン/カラム・マクドゥガル/ブライアン・オリバー
製作総指揮 ジェブ・ブロディ/オレグ・ペトロフ/イグナシオ・サラザール=シンプソン/リカルド・マルコ・ブーデ
撮影 ロジャー・ディーキンス
編集 リー・スミス
作曲 トーマス・ニューマン
出演 ジョージ・マッケイ/ディーン=チャールズ・チャップマン/マーク・ストロング/アンドリュー・スコット/リチャード・マッデン/クレア・デュバーク/コリン・ファースベネディクト・カンバーバッチ
製作 ドリームワークス・ピクチャーズ/リライアンス・エンターテインメント/ニュー・リパブリック・ピクチャーズ/ニール・ストリート・プロダクションズ/アンブリン・パートナーズ
配給 ユニバーサル・ピクチャーズ(アメリカ)/エンターテインメント・ワン(イギリス)/東宝東和(日本)

あらすじ

第一次世界大戦下の1917年4月。若きイギリス兵スコフィールドとブレイクは、敵の罠に気づかず攻撃を始めようとしている味方部隊へ、作戦中止の命令を届ける任務を託される。救うべき1600人の中にはブレイクの兄もいた。ふたりは翌朝までに伝令を届けるため、危険に満ちた敵陣へ踏み込んでいく。

主な登場人物(キャスト)

スコフィールド上等兵(ジョージ・マッケイ):第一次世界大戦最大級の激戦となったソンムの戦いを経験しているイギリス兵。ブレイクとともに作戦中止の命令を届ける任務に就き、爆撃跡や廃墟が広がる敵陣を進んでいく。

ブレイク上等兵(ディーン=チャールズ・チャップマン):スコフィールドと行動をともにする若きイギリス兵。攻撃に参加する部隊に兄が所属しているため、一刻も早く命令を届けようと強い使命感を燃やす。

スミス大尉(マーク・ストロング):スコフィールドたちが任務の途中で出会うイギリス軍の将校。前線へ向かう彼らに手を差し伸べ、マッケンジー大佐と話す際の重要な助言を与える。

レスリー中尉(アンドリュー・スコット):最前線の塹壕を守るイギリス軍将校。ドイツ軍が撤退した無人地帯に向かうスコフィールドとブレイクへ、戦場の危険性を皮肉交じりに伝える。

ブレイク中尉(リチャード・マッデン):ブレイク上等兵の兄。翌朝の攻撃に参加するデヴォンシャー連隊に所属しており、その命を救うことが弟にとって任務を急ぐ大きな理由となる。

ラウリ(クレア・デュバーク):戦闘によって荒廃した町に身を潜めているフランス人女性。戦争のただ中で幼い命を守りながら暮らし、スコフィールドと静かな交流を交わす。

エリンモア将軍(コリン・ファース):ドイツ軍の撤退が味方を誘い込む罠だと知り、スコフィールドとブレイクへ攻撃中止の伝令を命じるイギリス軍の将軍。

マッケンジー大佐(ベネディクト・カンバーバッチ):1600人の兵士を率い、撤退したドイツ軍への攻撃を計画している指揮官。通信網が断たれているため、作戦を止めるには書面による命令を直接届けなければならない。

作品の魅力解説

映像と観客をシンクロさせるワンカット風撮影

最大の魅力は、撮影、音響、演技が一体となり、観客の感覚を登場人物と強く重ね合わせる没入感にある。撮影監督ロジャー・ディーキンスによる長回しと巧妙な場面転換によって、カメラは塹壕、無人地帯、地下壕、廃墟を進む兵士たちに密着。銃弾がはじける音や爆発音、飛び散る砂利の音まで生々しく響き、観客を戦場のただ中へと引き込んでいく。

とりわけ、複雑な動きが求められる長回しの中でも感情の連続性を保ち続けるジョージ・マッケイの演技は圧巻だ。恐怖、緊張、孤独、悲しみ、そして戦場でふと差し込む人間的な温かさまでが途切れることなく伝わり、観客はスコフィールドの体験を追うだけでなく、その感覚を共有することになる。

立体音響と大画面で真価を発揮する映画体験

本作の映像と音響は、映画館の大画面と立体的な音響環境でこそ最大限の効果を発揮する。前後左右から迫る銃声や砲撃音、足元まで振動させるような爆発音は、敵の位置を把握できない戦場の恐怖を身体的に体感させるものだ。広大な無人地帯や炎に包まれた廃墟を捉えた映像にも圧倒的なスケールがあり、劇場で鑑賞する機会があれば、優先してスクリーンで観たい作品といえる。

静かに緊張と感情を増幅させるトーマス・ニューマンの音楽

トーマス・ニューマンによる音楽は、映像を覆い尽くすような過剰な自己主張を避けながら、場面ごとの緊張や哀感を的確に増幅させている。抑制された音量と独特の旋律が、伝令の切迫感や兵士の心細さ、わずかな希望を静かにすくい上げる。劇中音楽として映像へ溶け込む一方、サウンドトラック単体でも楽しめる力強さと完成度を備えている。

名もなき兵士の一日から浮かび上がる戦争

本作が追うのは戦争を左右する英雄や壮大な作戦ではなく、ひとつの命令を届けようとする若い兵士たちだ。サム・メンデスは、第一次世界大戦に従軍した祖父アルフレッド・メンデスから聞いた体験談に着想を得て、史実を背景とする架空の物語を構築した。兵士たちの疲労や恐怖、偶然によって生死が分かれる戦場の理不尽さを個人的な視点から捉えることで、歴史上の数字だけでは見えない人間の姿を浮かび上がらせている。

物語の独自性よりも体験の強度で記憶に残る

一方で、危険な戦場を突破して重大な命令を届けるという物語自体は比較的シンプルであり、展開や人物造形に、映像技術と同等の独自性を期待すると物足りなさを感じる可能性もある。賞レースでの高い評価や予告編が生み出した期待の大きさに対して、物語そのものの印象は控えめだと捉える観客もいるだろう。

しかし、その簡潔な構成は、観客を伝令の任務から逸らさず、時間と空間を共有させるための意図的な選択でもある。物語の新奇さではなく、戦場を進む兵士の感覚をどこまで観客に追体験させられるか。その一点を撮影、音響、音楽、演技によって極限まで突き詰めたことが、『1917 命をかけた伝令』を傑出した映画体験へと押し上げている。

アカデミー賞でも認められた技術的完成度

第92回アカデミー賞では作品賞や監督賞を含む10部門にノミネートされ、撮影賞、録音賞、視覚効果賞の3部門を受賞した。ジョージ・マッケイとディーン=チャールズ・チャップマンを中心とする俳優陣の演技に加え、撮影、美術、視覚効果、音響を綿密に連動させた技術的完成度は、本作が単なる撮影上の実験にとどまらないことを証明している。

cula をもっと見る

今すぐ購読し、続きを読んで、すべてのアーカイブにアクセスしましょう。

続きを読む