ジュリアン・ムーアが、カンヌで作品選びと女性表象への思いを語った。
アカデミー賞俳優のジュリアン・ムーアが、カンヌで行われたケリング社(Kering)の“Women in Motion Talk”に登壇し、自身のキャリア、映画界における女性表象、そして現在の作品選びについて語った。今年の映画祭で“Women in Motion Award”を受けるムーアは、同賞について“大きな喜びであり、途方もない名誉”と表現。俳優という仕事を“ひとつの仕事から次の仕事へ移っていくギグ・エコノミーの一部”と語りながら、キャリアを振り返る機会を“自分が人生の中で作り上げてきたものを見つめ直す、すばらしい名誉”と受け止めた。
女性表象の課題は映画界だけのものではない
トークで話題に上ったのは、2025年の高興収映画における女性主演作の割合が37%となり、2024年から10%低下したという調査結果だ。ムーアはこの問題について、“映画業界だけに特有のものではなく、世界的な問題だ”と指摘した。
“企業の経営層にも、メディアにも、高等教育にも、私たちがふさわしいだけの代表性はない。だから、これはもっと大きな問題だと思う”とムーアは語る。そのうえで、変化の起こし方については“ネズミはどうやって壁を抜けるのか。一口ずつだ。ゆっくり、着実に、意識的に、選択し、声を上げ、自分の特権を使い、より多くの人を雇い、連帯について話し、撮影現場で私たちのために物事を変えていく”と述べた。
ムーアはまた、“女性は互いにとって最大の味方”であり、それこそが“成功の秘訣”だとも語った。誰が物語を語るのか、誰の視点で描かれるのかという問いは、彼女にとって作品選びの重要な基準でもある。
“爆発や銃”よりも、感情の真実を求めて
キャリアを重ね、役を選べる立場になったムーアは、近年の自身の関心についても率直に明かした。彼女が重視するのは、物語が誰の視点から語られ、その描き方が誠実であるかどうかだという。
“悲劇にはますます関心が薄れていると思う。特に今、世界的に物事が厳しい時期には、作り物だと思える物語に気持ちを注ぐのが難しい。そこで描かれる感情の深さが、世界で起きていることに見合っていないと感じるから”とムーアは語った。
さらに、“誰かが殺されるのは好きではない。爆発や銃は好きではない。大げさな芝居も好きではない。本当の感情が下にないまま、出来事の重大さだけを高めるようなものは好きではない”と続け、“それはノイズのようなものだ。どう演じればいいのかわからないし、見たいとも思わない”と説明した。単に刺激を避けたいというより、感情の裏付けがないドラマを、いまの時代に受け入れにくいという姿勢がにじむ発言である。
メリル・ストリープが示した“人間らしさ”と到達点
トークでは、ムーアの代表作のひとつである『めぐりあう時間たち』にも話が及んだ。同作で共演したメリル・ストリープについて聞かれると、ムーアは“彼女はゴールドスタンダード”と称賛した。
ムーアは、テレビや映画を見ながら育ち、多くの映画スターを目にしてきた中で、ストリープを“触れられる存在であり、同時に手の届かない存在でもあるように見えた最初の女性”と振り返る。“彼女にはとても人間的なものがあり、とても現代的なものがあった”とし、その演技の精密さ、親しみやすさ、華やかさ、勇敢さが、同世代や後進の俳優たちに“自分たちが仕事で何を達成できるのか”を示したと語った。
女性の物語を誰が語るのか。そして、厳しい現実の時代に、フィクションはどのような感情の真実を持ち得るのか。ムーアの言葉は、長いキャリアを経た俳優の回想であると同時に、いま映画に何を求めるのかを問い直すものでもある。
