『星つなぎのエリオ』LGBTQ+要素はなぜ削除されたのか-ピート・ドクターが語った制作判断と試写不振で起きた作り直し「映画を作っているんだ、セラピーじゃない」

『星つなぎのエリオ』LGBTQ+要素はなぜ削除されたのか-ピート・ドクターが語った制作判断と試写不振で起きた作り直し「映画を作っているんだ、セラピーじゃない」 FILMS/TV SERIES
『星つなぎのエリオ』より ©2025 Disney/Pixar. All Rights Reserved.

『星つなぎのエリオ』制作過程でLGBTQ+要素が削除された理由を、ピクサーCCOピート・ドクターが語った。


ピート・ドクターピクサーCCO/監督)が、2025年公開の『星つなぎのエリオ』を制作する過程でLGBTQ+のストーリーラインを削除した理由について語った。米紙ウォール・ストリート・ジャーナルのインタビューで明らかにしたものとして『Variety』誌ほか英語圏の媒体で報じられており、彼はその理由を“幼い観客への配慮”であると発言している。

幼い観客への配慮としてLGBTQ+要素を削除

ウォール・ストリート・ジャーナルによると、ドクターは『星つなぎのエリオ』の内容を見直す判断について、幼い観客が理解する準備ができていないテーマを提示することへの懸念があったと説明した。子どもたちの中には、まだ家庭でそうした(ジェンダーに関する)話題について話し合っていない場合もあるとの考えだ。

そのため制作チームは作品の方向性を再検討することになり、結果としてLGBTQ+を示唆する要素が削除された。ドクターは作品づくりの姿勢について「映画を作っているんだよ、何億ドルものセラピーじゃないよね」と語り、娯楽作品としての判断だったことを強調している。

試写結果を受け制作は大幅な見直しへ

『星つなぎのエリオ』は、同世代の子どもたちからはみだし者として拒絶された孤独な少年エリオが、友達を求めて星空に目を向けるという物語である。しかしウォール・ストリート・ジャーナルによると、初期の試写では期待した結果が得られず、多くの観客が劇場で鑑賞するためにお金を払わないと答えたという。

この結果を受け、ドクターは制作がかなり進んだ段階で作品の全面的な見直しを指示。オリジナル版の監督を務めていたエイドリアン・モリーナはプロジェクトを離れることとなり、その後マデリン・シャラフィアンドミー・シーが制作を引き継いだ。

ウォール・ストリート・ジャーナルによれば、この刷新の過程でストーリーやキャラクター設定には大幅な変更が加えられ、その一部には主人公エリオの性的指向を示唆する描写の削除も含まれていたという。

初期バージョンにはLGBTQ+を示唆する描写も

ウォール・ストリート・ジャーナルによると、初期のバージョンでは『星つなぎのエリオ』にLGBTQ+を示唆する描写が含まれていたという。たとえば主人公エリオがピンク色の自転車に乗る場面のほか、男性の片想い相手と将来を共にする姿を想像するシーンも存在していたと報じられている。

しかし制作の見直しに伴い、こうした描写は最終版から削除された。この変更はピクサー社内でも議論を呼び、反発の声も上がったと報じられている。

さらに、ディズニーがピクサーのアニメシリーズ『ウィン OR ルーズ』からトランスジェンダーのキャラクターを削除する決定を下したこともあり、LGBTQ+表現を巡る議論はより大きな広がりを見せた。

2025年6月に公開された『星つなぎのエリオ』は、最終的に全世界で1億5000万ドルを記録した。ただし制作費が1億5000万ドルだったこと、さらに世界規模のマーケティング費用を考慮すると、興行成績は必ずしも順調とはいえない結果となった。

映画づくりにおいて、まず作品としてのわかりやすさ、ターゲットとなる観客層を楽しませる姿勢が求められるのは当然のことであり、すべての映画にあらゆる要素を詰め込むことはできない。ただ今回のケースでは“元々あった要素を削った”ということに対してマイナスの印象を抱いている人々が生じているように見受けられ、賛否両論が生まれるトピックになりそうだ。

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