【映画レビュー『Shiva Baby シヴァ・ベイビー』】逃げ場のない家で心を削る1日――撮影と音楽が演出する”ドラマなのにホラー”な圧力

『Shiva Baby シヴァ・ベイビー』とはどんな映画?あらすじ・キャスト・注目ポイントを紹介・解説 Film Review
『Shiva Baby シヴァ・ベイビー』より ©2020 SHIVA BABY LLC. All Rights Reserved.

新作映画『Shiva Baby シヴァ・ベイビー』 を紹介&解説するレビュー。


2月27日(金)日本公開となるShiva Baby シヴァ・ベイビーは、ユダヤ教の弔問儀礼“シヴァ”という密室的な空間を舞台に、家族の圧と恋愛のもつれを不穏な笑いへと昇華させたコメディドラマだ。メガホンを取ったのは新鋭エマ・セリグマン。主演にレイチェル・セノット、共演にモリー・ゴードンポリー・ドレイパーらを迎えている。

『Shiva Baby シヴァ・ベイビー』あらすじ

大学生のダニエルは両親に連れられ、知人宅で営まれるシヴァに参加する。ところが会場で待ち受けていたのは、元恋人マヤ、そして“パパ活”で関係を持つ既婚男性──さらにはその妻と赤ん坊までもが姿を現す。親戚たちの容赦ない詮索が重なり、狭い家の中で嘘と本音が絡み合ううちに、ダニエルは文字通り居場所を失っていく。

【映画レビュー『Shiva Baby シヴァ・ベイビー』】逃げ場のない家で心を削る1日――撮影と音楽が演出する”ドラマなのにホラー”な圧力

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空間が牙を剥く──音と映像が生む物理的圧力

コメディドラマを標榜しながら、スコアはホラー/スリラーさながらの不穏さで胃をじわじわと締め上げてくる。

そしてその不安は、音だけにとどまらない。レンズのわずかな歪みが壁や人との距離感を圧縮し、空間そのものが主人公を押し潰しにかかっているような錯覚を生む。人物の配置と撮影構図も巧みで、常に誰かがフレームに入り込み、ダニエルを”逃げ場のない中心”に据え続ける。

時間の経過とともに室内の光はじわじわと翳りを帯び、窓は閉ざされ、影は濃さを増し、空気はいっそう重くなる。舞台はひとつの家の中だけ──にもかかわらず、心理的な袋小路は加速度的に狭まっていく。その閉塞感の設計は、もはやホラーの領域に片足を踏み入れている。

【映画レビュー『Shiva Baby シヴァ・ベイビー』】逃げ場のない家で心を削る1日――撮影と音楽が演出する”ドラマなのにホラー”な圧力

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死んでいく目--フレームの中の残酷な対比

レイチェル・セノットの目が凄まじい。そこに存在しているのに、瞳の奥はとうに死んでいる──そんな表情をカメラがじりじりと捉えるたび、観客もまた逃げ場を失っていく。

その傍らで、彼女の動揺には目もくれず、善意なのか無自覚なのか判別のつかない圧をかけ続ける親戚や元恋人たち。フレームの中で”成功している側”と”評価されていない側”が同居する構図は、残酷という言葉すら生ぬるい。

【映画レビュー『Shiva Baby シヴァ・ベイビー』】逃げ場のない家で心を削る1日――撮影と音楽が演出する”ドラマなのにホラー”な圧力

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親戚という逃げられない距離

親戚からの圧というのは、他のどんな人間関係とも違う独特の重さがある。血縁ゆえに拒絶できず、善意を装っているぶん反論もできない。本作が最も恐ろしいのは、その「逃げ場のない集団の視線」を、音とレンズと照明によって物理的な圧力へと変換してみせた点にある。

『Shiva Baby シヴァ・ベイビー』は2月27日(金)日本公開。77分というコンパクトな上映時間が、(いい意味で)その何倍もの体感に引き伸ばされるはずだ。

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