ジャスティン・ビーバー、コーチェラを席巻したライブ——『Swag』の新曲から「Baby」まで、過去と現在が交差した一夜

ジャスティン・ビーバー、コーチェラを席巻したライブ——『Swag』の新曲から「Baby」まで、過去と現在が交差した一夜 MUSIC/ARTISTS
ジャスティン・ビーバー

ジャスティン・ビーバーがコーチェラのヘッドライナーとして登場し、『Swag』期の楽曲を軸に「Baby」など初期の代表曲も織り交ぜたパーソナルなステージを披露した。


ジャスティン・ビーバーが土曜夜、コーチェラ(Coachella)のヘッドライナーとして数年ぶりの大規模公演に臨んだ。今回のステージは、前日にサブリナ・カーペンターが見せた大掛かりな演出とは対照的に、装飾をそぎ落としたシンプルな構成が特徴だった。

公演前半では昨年発表のアルバム『Swag』期の楽曲を中心に披露し、中盤ではノートパソコンを使って自身の過去のYouTube動画を映し出しながら、「Baby」をはじめとする初期楽曲へとさかのぼった。現在の表現とキャリア初期の記憶をひとつのステージで接続するような内容は、復帰公演としての意味合いをより強く印象づけるものとなった。

『Swag』期の楽曲を軸に据えた、コーチェラでの復帰ステージ

公演は午後11時半ごろにスタートし、「All I Can Take」で幕を開けた。続いて「Speed Demon」「First Place」「Go Baby」など、『Swag』期の楽曲が立て続けに披露され、今回のコーチェラ公演がまず“現在のジャスティン・ビーバー”を示す場であることを明確に打ち出した。

ステージ演出も徹底して簡潔だった。大部分を占めるハーフパイプ状のセットの上で、ビーバーはほぼひとりで歌い、歩き回りながら観客と向き合った。バックダンサーや大掛かりな舞台転換に頼ることなく、歌声と存在感そのものに焦点を絞った構成だったといえる。

ビーバーは観客に向けて、“こんなに近い距離でみんなと向き合えるなんて、特別だね”と語りかけ、“ずっと夢見てきた夜”だとその思いを明かした。派手な祝祭感を前面に出すのではなく、自身の歩みを見つめ直すような空気をまとっていたことが、この日のコーチェラのステージを特徴づけていた。

また、他のアーティストが登場する場面は限定的で、数曲でギタリストが加わったほか、スペシャルゲストとしてザ・キッド・ラロイ、テムズ、ウィズキッド、ディジョンらが姿を見せた。そのため、ゲストの豪華さ以上に、ビーバー自身の表現をどう見せるかに比重が置かれた公演だったといえそうだ。

「Baby」へさかのぼる演出が映した、ジャスティン・ビーバーの軌跡

セット中盤になると、公演は一転して回想的な色合いを強めた。ジャスティン・ビーバーはステージ後方の大スクリーンに繋いだノートパソコンを操作しながら、自身の過去のYouTube動画を呼び出し、観客をキャリア初期へと導いていった。

ビーバーは“今夜は本当に特別な夜だ”と語り、“みんなをちょっとした旅に連れていかなきゃって気がするね”とコメント。YouTubeの検索画面に文字が打ち込まれると、観客は「Baby」に気づき、大きく反応した。“この曲、覚えてる?”という呼びかけをきっかけに、会場は現在のコーチェラから、一気にビーバーの出発点へと引き戻されていった。

そこからビーバーは、過去の録音に合わせて短いフレーズを歌い継ぎ、「Beauty and a Beat」「Never Say Never」「Confident」なども披露した。とりわけ「Baby」が象徴したのは、単なる懐古ではなく、幼い頃から世界的な注目を集めてきた自身の時間の長さである。コーチェラの巨大スクリーンに幼少期のビーバーの姿が映し出され、その前で現在の彼が歌う光景は、長年にわたりポップスターであり続けてきた歩みを強く印象づけた。

この演出は、大掛かりなステージ装置とは異なるかたちで、公演に個人的な温度をもたらした。『Swag』期の楽曲で現在地を示したあとに、「Baby」など初期の楽曲へさかのぼる流れは、過去と現在をひとつのステージの上で結び直す試みとして機能していたといえる。

即興性もにじませた終盤、コーチェラの夜を「Daisies」で締めくくる

一方で、この日のステージは緻密に構成されたショーというより、即興性を前面に押し出した一夜でもあった。過去のYouTube動画をたどる流れは、ジャスティン・ビーバーの歩みを可視化する印象的な演出となった反面、場面によってはラフな空気もにじませた。

たとえば「Sorry」の動画が読み込み中になると、ビーバーは“Wi-Fi、勘弁してよ(笑)”と苦笑いを見せ、観客の笑いを誘った。さらにその後は、「Deez Nuts」や「Double Rainbow」といったミーム動画まで表示される展開となり、公演は一時的に脱線気味の様相も見せた。ビーバー自身も“ダークウェブに引き込まれてきた、ショーを続けなきゃ”と語り、パソコンを閉じて次の楽曲へと戻っていった。

こうした自由度の高い流れは、完成度の高い演出を見せる一般的なヘッドライナー公演とは異なるものだったが、その不安定さも含めて、現在のビーバーの姿をそのまま映し出していたともいえる。整いすぎた祝祭空間ではなく、その場の空気や自分自身の記憶をたぐり寄せながら進んでいくステージだったことが、この日のコーチェラ公演の個性になっていた。

終盤にはディジョンが「Devotion」に参加し、続いてテムズが登場してビーバーと「I Think You’re Special」をデュエット。さらにウィズキッドも姿を見せ、自身の楽曲「Essence」のカバーを披露した。フィナーレでは「Daisies」が歌われ、この曲を共同プロデュースしたMk.geeもステージに加わった。

ビーバーは観客に愛を叫びながら足早にステージを後にし、その背後では花火が打ち上がった。『Swag』期の楽曲を中心に据えつつ、「Baby」などの初期曲も交えた今回のステージは、過去と現在を行き来しながら、自身のキャリアを観客の前であらためてたどるようなヘッドライナー公演となった。ビーバーは来週土曜日にも、再びコーチェラのステージに立つ予定だ。

セットリスト

1. ALLI CAN TAKE
2. SPEED DEMON
3. FIRST PLACE
4. GO BABY
5. BUTTERFLIES
6. WALKING AWAY
7. ALL THE WAY
8. 405
9. TOO LONG
10. PETTING ZOO
11. I DO
12. STAY (with The Kid LAROI)
13. THINGS YOU DO (Acoustic)
14. GLORY VOICE MEMO (Acoustic)
15. ZUMA HOUSE (Acoustic)
16. DOTTED LINE (Acoustic)
17. EVERYTHING HALLELUJAH (Acoustic)
18. Baby (short)
19. Favorite Girl (short)
20. That Should Be Me (short)
21. Beauty and a Beat (short)
22. Never Say Never (short)
23. Confident (short)
24. All That Matters (short)
25. With You (short)
26. So Sick (short)
27. Sorry (short)
28. Where Are Ü Now (short)
29. I’m the One (short)
30. YUKON
31. DEVOTION (with Dijon)
32. I THINK YOU’RE SPECIAL (with Tems)
33. Essence (with Wizkid and Tems)
34. DAISIES (with Mk.gee)

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