新作映画『FEVER ビーバー!』 を紹介&解説するレビュー。
4月17日(金)日本公開の『FEVER ビーバー!』は、雪山を舞台にした毛皮猟師とビーバーの死闘を、モノクロ映像とほぼ無声のスラップスティックコメディで描く異色作だ。りんご酒売りを廃業した男が、恋した相手に近づくため数百匹のビーバーに挑むというあらすじだけでも、その振り切れ具合は伝わるだろう。監督はマイク・チェスリック、主演はライランド・ブリクソン・コール・テューズ。これは、ジャンルの常識を軽やかに無視した映画の話だ。
一本筋の通ったバカバカしいカオス
めちゃくちゃなのに、どこか一本筋が通っている。シュールなギャグが矢継ぎ早に放たれ続けるのだが、不思議とそのリズムに身を委ねているうちに、このカオスが心地よくなってくる。そんな不思議な引力を持った1作だ。

『FEVER ビーバー!』より © 2022 SABLJAK RAVENWOOD HOGERTON
ギャグのセンスは徹底してオリジナルだ。たとえば、魚を捕るために釣り竿を持たせた雪だるまがその竿を落としてしまうと、次に登場する雪だるまが筋骨隆々の体型になっている。「それで強度は変わらないだろ!」と思わず画面に突っ込んでしまうのだが、そのバカバカしさの中にちゃんと可愛げとオリジナリティがあって、素直に笑えてしまう。そういった笑いが、本作にはぎっしり詰まっている。
ノスタルジーと斬新さの同居
セリフがないわけではないが、ほとんど言葉を必要としない。モノクロ映像と相まって、キートンやチャップリンといったクラシックコメディの系譜への深い愛情が伝わってくる。

『FEVER ビーバー!』より © 2022 SABLJAK RAVENWOOD HOGERTON
しかし本作が単なるオマージュに留まらないのは、その発想のクレイジーさが徹底して現代的だからだ。古き良き映画へのノスタルジーと、どこにも前例のない斬新さが同居している——この両立こそが、本作の独自の作風を形づくっている。手作り感の滲むプロップや、低予算感をあえて隠さない演出も、取り繕わない作家のクラフト精神として機能しており、それ自体がひとつの味になっている。
この映画にしかないクエスト体験
構造はシンプルだ。ビーバーや動物を決まった数だけ仕留めると新しいアイテムが手に入り、それが思い人との結婚へと近づいていく。日本版ポスターでもパロディされている『モンスターハンター』、あるいは由緒正しきRPGのクエスト進行そのもので、そのわかりやすさが純粋な楽しさに直結している。

『FEVER ビーバー!』より © 2022 SABLJAK RAVENWOOD HOGERTON
1時間48分という尺が本当に必要だったかどうかは、少し留保したい。それでも、この映画にしか生み出せない体験があることは確かで、独特な映画を愛する者としては、素直に楽しかったと言える一本だった。
『FEVER ビーバー!』は、バカバカしく、手作りで、どこか懐かしく、それでいてどこにもなかった。そういった映画だ。本作は4月17日(金)より日本公開される。理屈ではなく、この体験そのものを受け取って楽しんでいただきたい。
