新作映画『ランニング・マン』を紹介&レビュー。
1月30日(金)公開となる『ランニング・マン』は、『ベイビー・ドライバー』のエドガー・ライト監督が、スティーヴン・キング原作小説を基に描く、デスゲーム番組を題材にした社会派アクションスリラー。近未来社会で最高視聴率を誇る番組「ランニング・マン」に挑む男が、30日間の逃走劇へと追い込まれていく。主演はグレン・パウエル、共演にジョシュ・ブローリン、コールマン・ドミンゴら。
『ランニング・マン』あらすじ
近未来の米国では、最高視聴率を記録する逃走番組「ランニング・マン」が国民的娯楽として君臨していた。貧しい男ベン(グレン・パウエル)は、病気の娘を救うため、30日間生き延びれば賞金が得られるというこの番組への参加を決意する。全世界に生中継される中、彼はプロの殺し屋たちに追われながら、反撃の糸口を必死に探っていく。

グレン・パウエル、『ランニング・マン』より ©2025 Paramount Pictures. All Rights Reserved.
エドガー・ライト流ディストピアの到来
日本のテレビ視聴者にとって『逃走中』はなじみ深いバラエティ番組だろう。その“命懸けバージョン”ともいえるスリリングなデスゲーム作品『ランニング・マン』が公開となる。絶え間ない暴力で命を狙われ続け、誰一人として味方がいない恐怖。そして番組の裏側に横たわる漆黒の真実──情報社会特有の不安感、ディストピアアクションならではの緊張感、そして生死を賭けたゲーム性が三位一体となったエンタメ体験が待ち受けている。

『ランニング・マン』より ©2025 Paramount Pictures. All Rights Reserved.
エドガー・ライト監督は、ストリートカルチャーとビビッドな色彩、そしてノリのいい時代音楽を洗練された映像美と融合させることで、大衆性と芸術性を兼ね備えたエンタメ作品を世に送り出してきた。本作『ランニング・マン』は、『ベイビー・ドライバー』や『ラストナイト・イン・ソーホー』のような”極限までスタイリッシュな撮影や編集”が際立つ作品ではない。映像表現としては、ある程度典型的なディストピアSFアクションの範疇にとどまっている。しかし、エキサイティングなビジュアルデザインと、サイバーサウンドと時代音楽を巧みに織り交ぜた音響設計によって、世界観に一定の独自性を付与することには成功している。荒廃した外界と、弱者を排除し洗練させた支配者層の世界──この二つの対比を際立たせた独特のディストピア世界の構築は、本作の大きな達成点といえるだろう。
グレン・パウエルら存在感あるキャストたち
主人公には『トップガン マーヴェリック』で知名度を飛躍的に高めて以降、『ヒットマン』や『ツイスターズ』で“不器用ながらもパワフル”な男性像を体現してきたグレン・パウエルを起用。アクションシーンでもその鍛え抜かれた肉体が存分に活かされている。

ジョシュ・ブローリン、『ランニング・マン』より ©2025 Paramount Pictures. All Rights Reserved.
狂気じみた番組の支配者役には『アベンジャーズ』シリーズや『DUNE』シリーズで圧倒的な存在感を放つジョシュ・ブローリン、掴みどころのない番組司会者には実力派コールマン・ドミンゴを配し、脇役陣も『恋はアステロイド』のケイティ・オブライアンや『コーダ あいのうた』のエミリア・ジョーンズなど、たしかな演技力を持つ俳優たちで固めている。この盤石なキャスティングによって、本作の完成度は一段と引き上げられているといえるだろう。

コールマン・ドミンゴ、『ランニング・マン』より ©2025 Paramount Pictures. All Rights Reserved.
情報社会の孤独と、スリリングな逃走劇
本作は、情報に囲まれた現代人の孤独と不安に満ちた、スリリングな逃走劇である。マスメディアによる報道はもともと編集可能であり、これまでも大衆に伝えたい情報だけを選別して流すことができていた。しかしAIを含むさらなる技術革新によって、いまや一般人ですらハイクオリティなフェイク映像を作成できる時代となった。情報が氾濫する現代において、その”情報”を審美眼をもって精査しなければ何一つ信頼できない──そんな時代に私たちは足を踏み入れている。権力者も、インフルエンサーも、多数決も、祭り上げられる”ヒーロー”も、誰一人として100%信じることなどできない。
そんな時代に生まれたこのSFアクション作品は、単純な「支配的な体制VS反体制派のヒーロー」という対立構造を描くことを自らに許していない。グレン・パウエル演じる主人公ベンを通して、本作が提示するのは“孤独な正義”だ。団結は容易ではない。自分が正義であり善であると信じるならば、それを信じて一人でも耐え抜き、戦い続けるしかない。「どんなに周囲が情報に踊らされようと、自分だけは正しくある」という困難な道を、“正しくあろうとする人”ほど貫かねばならないのだ。

『ランニング・マン』より ©2025 Paramount Pictures. All Rights Reserved.
振り回される“感情的なヒーロー”
しかし本作は主人公ベンを、単に正しいだけのヒーローには仕立て上げていない。気の毒な立場に置かれているとはいえ、彼はアンガーマネジメントができず軽率な判断を下してしまう感情的な男として描かれる。「本当にその行動を選択してよかったのか」と観客に疑問を抱かせるシーンが意図的に配置されており、彼もまた目の前の情報に翻弄され、選択肢を十分に精査できていない人間の一人なのだ。(そんな人間臭さと芯の通った正義感のバランスを体現するキャストとして、グレン・パウエルは見事な適役だった。)

『ランニング・マン』より ©2025 Paramount Pictures. All Rights Reserved.
情報を精査し、慎重に選び抜くこと──それは本作のディストピア世界のみならず、私たちが生きる現代社会においても求められる姿勢だろう。現代ならではの価値観と、エンタメ映画としての興奮を同時に味わえる一作である。『ランニング・マン』は1月30日(金)日本公開。
