『TATAMI』当時の目撃者! 柔道専門家が語る衝撃の実話-イスラエル・イラン共同監督が描く勇気の物語【イベントレポート】

古田英毅氏(左)、森直人氏(右) ©2023 Judo Production LLC. All Rights Reserved NEWS
古田英毅氏(左)、森直人氏(右) ©2023 Judo Production LLC. All Rights Reserved

柔道界の現場で起きた衝撃の事件-『TATAMI』が描く自由への戦い

『TATAMI』は、2019年の世界柔道選手権で実際に起きた政治介入事件を基に描かれた社会派ドラマである。ガイ・ナッティヴザーラ・アミールという、映画史上初めてイスラエルとイランをルーツに持つ2人の監督が手を組み、アスリートたちの自由と尊厳をかけた戦いを映像化した。第36回東京国際映画祭で審査委員特別賞と最優秀女優賞の2冠を獲得し、第80回ヴェネツィア国際映画祭でもブライアン賞を受賞した注目作が、2月28日(金)より全国公開される。

この度、2月21日(金)に神楽座で開催された公開記念トークイベントでは、2019年の世界柔道選手権で起きた事件を実況解説者として目撃した柔道専門メディアeJudo編集長の古田英毅氏が、当時の衝撃的な体験を明かした。

『TATAMI』©2023 Judo Production LLC. All Rights Reserved

『TATAMI』©2023 Judo Production LLC. All Rights Reserved

柔道の競技者にも衝撃を与えた緊迫の実話

トークイベントに登壇した古田氏は、本作の着想の一部となった「サイード・モラエイ事件」の目撃者として、当時の緊張感を生々しく伝えた。「いわゆる“イスラエル・ボイコット”については知識としては持っていましたが、実際に目の当たりにしても現実味がありませんでした。日本のメディアも気が付いていなかったと思います」と、政治と競技が交錯する瞬間を語る。

古田英毅氏 ©2023 Judo Production LLC. All Rights Reserved

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イランのモラエイは前年の世界王者、対するイスラエルのサギ・ムキはワールドランキング1位の選手という、まさに注目の対戦が期待された場面だった。「最初は躊躇があるかと思ったモラエイは、途中から吹っ切れたように一本勝ちで勝ち上がりました。これはいよいよモラエイ対ムキが決勝で見られると思っていたら、準決勝でモラエイの様子がおかしくなりました」と古田氏は振り返る。

政治介入の瞬間を捉えた衝撃のストーリー

森直人氏 ©2023 Judo Production LLC. All Rights Reserved

森直人氏 ©2023 Judo Production LLC. All Rights Reserved

本作では、ジョージアの首都トビリシでの女子世界柔道選手権を舞台に、イラン代表のレイラ・ホセイニと監督のマルヤム・ガンバリが直面する政治的圧力を描く。順調に勝ち進んでいた彼女たちは、金メダルを目前にして政府から敵対国であるイスラエルとの対戦回避を命じられる。自身と家族の身に危険が及ぶ中、彼女たちは過酷な選択を迫られることになる。

注目すべきは、本作が映画史上初めて、イスラエル出身のガイ・ナッティヴ監督と、イラン出身のザーラ・アミール監督による共同監督作品であることだ。ナッティヴ監督は『SKIN 短編』(2018年)で第91回アカデミー賞短編実写映画賞を受賞し、アミール監督は『聖地には蜘蛛が巣を張る』(2022年)で第75回カンヌ国際映画祭女優賞を受賞した実力者である。

アスリートとしての葛藤を映し出す卓越した演出

©2023 Judo Production LLC. All Rights Reserved

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古田氏は、柔道の専門家としての視点から本作の見所を語る。主演のアリエンヌ・マンディ演じるレイラ・ホセイニの競技シーンについて、「柔道未経験者がやった柔道アクションのなかでは間違いなく最高峰」と高く評価。「競技シーンはカメラが近く、一人称視点に近い。競技のメジャーな中継映像に引っ張られずに、『わたしはこれを撮りたい』というのが見える、没入感が得られる映像だ」と分析し、緊迫のストーリーとリアルな試合シーンの双方が見事に調和していると指摘した。

特に印象深いのは、アミール監督が演じる柔道女子イランチームの監督マルヤム・ガンバリのキャラクターだという。「人間的な弱さ、人間らしさが見える人物です。彼女は明らかにアレシュ・ミレスマイリにインスパイアされたキャラクターだと感じました」と語る。ミレスマイリは、アテネオリンピックで世界チャンピオンの立場でありながら、イスラエルの選手との対戦を避けるため、体重超過による失格を選んだ実在の選手である。

スポーツを通じて描かれる政治への抵抗

イスラエルとイラン、政治的に対立する2つの国をルーツに持つ監督たちの共同作業について、古田氏は深い敬意を示す。「スポーツや文化は、いろんな抑圧があれど政治よりは自由な世界です。この作品を見て感じることがすごくあったし、文化は抑圧への抵抗の手段として大きい勢力になりうるということを改めて思いました」と語った。

さらに柔道という競技が本作の題材として選ばれた意義についても言及。「柔道の文化はとてもつながりが強く、国や政治体制を超えて”柔道ファミリー”という別の体系でまとまっている。そのジャンルを使って表現してくれたことに誇りを思います。スポーツと芸術は、政治に対する勢力として非常に似ているんだと再認識しました」と締めくくった。

『TATAMI』は2月28日(金)より新宿ピカデリーほか全国ロードショー。

作品情報

<STORY>
ジョージアの首都トビリシで開催中の女子世界柔道選手権。イラン代表のレイラ・ホセイニと監督のマルヤム・ガンバリは、順調に勝ち進んでいくが、金メダルを目前に、政府から敵対国であるイスラエルとの対戦を避けるため、棄権を命じられる。自分自身と人質に取られた家族にも危険が及ぶ中、ふたりは人生最大の決断を迫られる。

タイトル:『TATAMI』
原題:TATAMI
監督:ガイ・ナッティヴ、ザーラ・アミール
脚本:ガイ・ナッティヴ、エルハム・エルファニ
出演:アリエンヌ・マンディ、ザーラ・アミール、ジェイミー・レイ・ニューマン、ナディーン・マーシャル
日本公開:2025年2月28日(金)より新宿ピカデリーほか全国ロードショー
2023年|アメリカ、ジョージア|英語、ペルシア語|103分|モノクロ|1.78:1|5.1ch
字幕:間渕康子
©2023 Judo Production LLC. All Rights Reserved
配給:ミモザフィルムズ

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