映画『しびれ』(2025)を紹介&解説。
映画『しびれ』概要
映画『しびれ』は、内山拓也監督(『佐々木、イン、マイマイン』『若き見知らぬ者たち』)が、自身の故郷・新潟を舞台に、自らの半生を投影して描いた自伝的なヒューマンドラマ。監督が10年以上前から執筆を続けてきたオリジナル脚本をもとに、父親の暴力をきっかけに言葉を発さなくなった少年・大地の約20年間を描く。
青年期の大地を北村匠海、母・亜樹を宮沢りえ、父・大原を永瀬正敏が演じる。少年期の大地を榎本司、加藤庵次、穐本陽月が年代ごとに演じた。
第26回東京フィルメックスで審査員特別賞を受賞し、第76回ベルリン国際映画祭パノラマ部門にも正式出品された。
作品情報
| 日本版タイトル | 『しびれ』 |
|---|---|
| 英題 | Numb |
| 製作年 | 2025年 |
| 日本公開日 | 2025年11月22日(ワールドプレミア) |
| 日本公開日 | 2026年9月25日(劇場公開) |
| ジャンル | ドラマ/青春 |
| 製作国 | 日本 |
| 原作 | 無 |
| 上映時間 | 118分 |
| 監督・原案・脚本 | 内山拓也 |
|---|---|
| 出演 | 北村匠海/宮沢りえ/永瀬正敏/榎本司/加藤庵次/穐本陽月/今野由起子 ほか |
| 配給 | ナカチカピクチャーズ |
あらすじ
日本海に面した田舎町。少年・大地は、幼い頃に暴君のように振る舞っていた父・大原から受けた影響によって、言葉を発しなくなっていた。母・亜樹は夜の仕事で生活費を稼ぎ、大地と二人でビル屋上のプレハブに暮らしている。
しかし亜樹はほとんど家に帰らず、生活も苦しい。やがて母子は叔母の家へ身を寄せるが、大地はそこにも自分の居場所を見つけられない。孤独の中で少年期を過ごし、青年へ成長した大地は、自分たちのもとから姿を消した父への静かな怒りと、女手一つで自分を育てた母への愛情と憎しみを抱え続けていた。
そしてある時、大地は行方のわからなくなった父を捜すため、生まれ育った家へ向かうことを決意。その選択をきっかけに、止まっていた大地の人生が大きく動き始める。
主な登場人物(キャスト)
大地(北村匠海):本作の主人公。父から受けた幼少期の傷によって言葉を発さなくなり、孤独な少年時代を過ごす。青年期には父への怒りと母への複雑な感情を抱えながら、自分の居場所を探す。
亜樹(宮沢りえ):大地の母。夜の仕事で生活費を稼ぎながら息子を育てる。外から見れば育児放棄とも捉えられかねない生活を送る一方、大地への愛情を持ち続けている。
大原(永瀬正敏):大地の父。幼い大地の前では暴君のように振る舞い、それが大地が言葉を失う大きな原因となる。年月を経て、かつての威厳を失った姿で再び物語へ関わる。
少年期の大地(榎本司/加藤庵次/穐本陽月):幼少期から青年期へ至るまでの大地を、年代の異なる3人の俳優が演じる。
作品の魅力解説
内山拓也監督が10年以上抱えてきた、自伝的な物語
『しびれ』の脚本は、『佐々木、イン、マイマイン』以前から内山拓也監督が書き続けてきたもの。
舞台も監督自身の故郷である新潟に設定され、家族、孤独、土地、自分の居場所といった個人的な記憶や感情が作品へ組み込まれている。
単なる「実話映画」ではなく、自身の記憶をフィクションとして再構築し、一人の少年の約20年間へ変換している点が、本作の核となっている。
言葉を発しない主人公を、視線と身体で演じる
大地は幼少期の傷によって言葉を発しない。
そのため映画では、台詞によって感情を説明するのではなく、視線、呼吸、立ち姿、人物との距離といった映像的な情報が重要になる。
青年期を演じる北村匠海も「あえて自らを消し去るような演技」に取り組み、主人公の内側にある感情を説明ではなく身体によって表現した。
母を「愛している」と「憎んでいる」が同時に存在する
大地にとって母・亜樹は、自分を育てた唯一無二の存在である一方、幼少期の自分を孤独にした人物でもある。
愛か憎しみか、感謝か恨みかという二択では整理できない感情を抱えたまま成長することが、大地という人物を形作っている。
宮沢りえが演じる亜樹もまた、単純な「良い母」「悪い母」ではない。
家庭環境の傷を善悪で整理せず、家族への愛情と苦しさが同時に存在する状態を描くことが、本作の重要なテーマとなっている。
