イヴァナ・リンチが歩んだキャリアと現在―『ハリー・ポッター』ルーナ役から動物保護活動、ダンス番組での満点獲得まで

イヴァナ・リンチを特集。 (Photo: © 2025 Tokyo comic con All rights reserved.) FILMS/TV SERIES
イヴァナ・リンチを特集。 (Photo: © 2025 Tokyo comic con All rights reserved.)

イヴァナ・リンチの今とは?幅広く活動する彼女のキャリアと活動を振り返る。


アイルランド出身の俳優・作家・アクティビスト、イヴァナ・リンチ(Evanna Lynch)。14歳で映画『ハリー・ポッター』シリーズにルーナ・ラブグッド役で抜擢され、その透明感ある存在感で世界中のファンを魅了した。以降、映画・舞台・朗読・テレビ番組出演など多彩な活動を展開しながら、動物福祉やビーガン運動の訴求者としても知られるようになった。

本稿では、「東京コミコン2025」での再来日が決まった彼女のキャリアを時系列でたどるとともに、作品・執筆・社会活動の各側面を浮き彫りにしていきたい。

1|“ルーナ・ラブグッド”というきっかけ:映画界への扉

イヴァナ・リンチが世界に知られるきっかけとなったのは、14歳で出演した『ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団』(2007年)である。アイルランド・ラウス県出身のひとりの少女として参加したオープンオーディションを経て、彼女は個性的で不思議な魅力を持つルーナ・ラブグッド役に抜擢された。ワーナー・ブラザースが当時発表したプレスリリースによれば、数千人の応募者の中から選ばれた

ルーナ・ラブグッドを演じたイヴァナ・リンチ Harry Potter characters, names and related indicia are trademarks of and © Warner Bros. Entertainment Inc. Harry Potter Publishing Rights © J.K.R.© 2006 Warner Bros. Entertainment Inc. All rights reserved.

ルーナ・ラブグッドを演じたイヴァナ・リンチ Harry Potter characters, names and related indicia are trademarks of and © Warner Bros. Entertainment Inc. Harry Potter Publishing Rights © J.K.R.© 2006 Warner Bros. Entertainment Inc. All rights reserved.

リンチは幼少期から『ハリー・ポッター』シリーズの熱心な読者であり、原作への深い愛着を持っていたことを公言している。彼女自身の感受性と繊細な表現力が、原作ファンの間で「まさにルーナそのもの」と評され、初登場作である第5作から最終章『ハリー・ポッターと死の秘宝 PART2』(2011年)まで、同役としてシリーズ全体に存在感を残した。

スクリーン上のルーナは、風変わりでありながらも他者を受け入れる優しさを持つキャラクターとして描かれている。リンチは演技経験がほとんどなかったにもかかわらず、その自然体の演技が高く評価され、共演者のダニエル・ラドクリフエマ・ワトソンらからも「役にぴったりだった」と称賛された。撮影現場では、衣装や小道具の細部にまで意見を出すなど、演技への真摯な姿勢を見せていたという。

シリーズ完結後、リンチはハリウッド的な大作路線には進まず、自身のペースで独立系映画や舞台へと活動の幅を広げていく。その背景には、ルーナ役で得た知名度に頼ることなく、俳優としてより多面的な表現を探求したいという思いがあったと語っている。

2|独立映画への挑戦と俳優としての確立

『ハリー・ポッター』シリーズ終了後、イヴァナ・リンチはスター的な注目から一歩距離を置き、自分の内側にある表現を見つめ直していった。2015年に撮影され、翌16年にアイルランドで公開された主演映画『My Name Is Emily(原題)』は、その姿勢を象徴する作品である。

本作はアイルランド政府の映画庁「Screen Ireland(旧Irish Film Board)」が製作を支援したロードムービーで、リンチは心を閉ざした少女エミリーを繊細に演じた。父を精神病院から救い出そうとする娘の旅路を描いた物語は、彼女の透明感と内面的な強さを余すところなく映し出している。批評家からは「彼女の静かな演技が作品全体に真実味を与えている」と評され、子役時代の印象を脱し、俳優としての立ち位置を示す契機となった。

【動画】『My Name Is Emily(原題)』米予告編

リンチはこの作品の公開時に、「ルーナ・ラブグッドというキャラクターを通じて得た想像力を、自分自身の創作にも活かしたかった」と語っている。華やかなハリウッドの流れとは異なる方向を選び、地元アイルランドの小規模な製作現場に身を置いたことで、俳優としての原点を再確認する機会となった。

同時期には短編映画やインディーズ作品にも積極的に参加し、表現の幅を広げた。また、2017年にはエンダ・ウォルシュ作の舞台『Disco Pigs(原題)』20周年リバイバル公演に出演。ロンドンからニューヨークのオフ・ブロードウェイまで上演が延長され、舞台上でも確かな存在感を放った。台詞劇という新たな挑戦を経て、彼女は映像だけでなくライブパフォーマンスでも観客を魅了する俳優へと進化していった。

3|社会活動と発信者としての顔―ヴィーガン、動物愛護、そして執筆へ

俳優としての活動と並行し、イヴァナ・リンチは早くから動物愛護とビーガンライフスタイルの推進に力を注いできた。2018年には、米俳優ダニエラ・モネと共にクルエルティフリーな美容サブスクリプションサービス「Kinder Beauty Box」を立ち上げ、環境負荷の少ないコスメ選びを提案した。この事業は単なるブランド展開ではなく、「動物実験を前提としない製品を日常的に使う選択肢を増やす」という理念のもとに始まったものである(現在はサービス終了)。

同年には、ヴィーガンをテーマにしたポッドキャスト「The ChickPeeps」を自身で創設し、ゲストとの対話を通じて“倫理的に生きるとは何か”を問い続けた。番組は俳優仲間や活動家を招き、食やファッション、環境など幅広いテーマを取り上げ、リスナーの間で高い支持を得ている。

「東京コミコン2025」で来日するイヴァナ・リンチ © 2025 Tokyo comic con All rights reserved.

「東京コミコン2025」で来日するイヴァナ・リンチ © 2025 Tokyo comic con All rights reserved.

その発信の延長線上にあるのが、2021年に刊行された自伝的著書『The Opposite of Butterfly Hunting(原題)』である。出版社ペンギン・ランダム・ハウスによる公式紹介では、本書が「自己嫌悪と回復の物語」であり、「心の闇と創造性の関係を見つめ直す試み」であると説明されている。リンチ自身が思春期に経験した摂食障害や自己イメージの葛藤を率直に描き、読者に“自分を傷つけることから創造へ向かう道”を示す内容となっている。俳優としての華やかさよりも、人としての脆さや回復力に焦点を当てたこの作品は、多くの読者に共感を呼んだ。

2024年6月には国際NGO「世界動物保護協会」がリンチを新たなグローバル・アンバサダーに任命したと公式発表した。長年にわたる動物保護活動が正式に評価された形であり、彼女は同団体の発信を通じて「動物が搾取されない世界をつくる」ための啓発活動を続けている。

このように、リンチのキャリアは単なる俳優業にとどまらず、創作と倫理、芸術と社会意識を結びつける表現の軌跡として発展している。ハリウッドの輝きよりも、自身の信念と向き合う生き方を選んだ彼女は、俳優という枠を超えた現代的なアーティストのひとりといえるだろう。

4|ダンスの才能と朗読での活躍も

『ダンシング・ウィズ・ザ・スターズ』シーズン27より ©ABC Entertainment

『ダンシング・ウィズ・ザ・スターズ』シーズン27より ©ABC Entertainment

2018年、リンチは米ABCの人気番組『ダンシング・ウィズ・ザ・スターズ』シーズン27にプロのケオ・モツェペとペアで出場した。番組公式の決勝リキャップによれば、決勝当日(11月19日)にリピートダンス(タンゴ)とフリースタイルの両方で満点を獲得し、合計60/60を記録。最終的な優勝はボビー・ボーンズ組だったが、リンチ&モツェペはファイナリストとして大健闘を見せた事実が明記されている。

2020年には、J.K.ローリングの短編集『吟遊詩人ビードルの物語』(The Tales of Beedle the Bard)オーディオブック版で一部朗読を担当。ウィザーディング・ワールド(魔法ワールド)公式のアナウンスで配役が示され、配信開始告知でもリンチの朗読の一部が紹介されている。

イヴァナ・リンチ|簡易年表

2006年:ワーナー・ブラザースがルーナ役の新人として14歳のイヴァナ・リンチを初公開。

2007–2011年:『ハリー・ポッター』シリーズ第5~8作に出演。

2016年:主演映画『My Name Is Emily(原題)』が公開。

2017–2018年:舞台『Disco Pigs(原題)』に出演(ロンドン→NYオフ・ブロードウェイへ)。

2018年:『ダンシング・ウィズ・ザ・スターズ』シーズン27に出場、決勝で満点を獲得。

2020年:『吟遊詩人ビードルの物語』朗読版が米配信開始、リンチは一編を朗読。

2021年:回想録『The Opposite of Butterfly Hunting(原題)』刊行。

2024年:アニメ映画『My Freaky Family(原題)』で主演声優/短編『Sanctuary(原題)』ナレーション。

2024年:世界動物保護協会グローバル・アンバサダー就任。

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