『スーパーマン』で注目を集めたサラ・サンパイオが、演じたイブ役の舞台裏を明かす。
※この記事には『スーパーマン(2025)』のネタバレを含みます。
ジェームズ・ガン監督の新作『スーパーマン』で、レックス・ルーサー陣営の一員として強烈な印象を残したイブ・テシュマッカー。攻撃中にセルフィーを撮るという予告編のワンシーンは議論を呼んだが、演じたサラ・サンパイオは米『ハリウッド・リポーター』のインタビューに応じ、その行動の裏にある現代的なリアリティとキャラクターの多面性を語っている。
誤解されるキャラクターに込めたリアリティ
サンパイオは、予告編の公開直後から観客の反応を予期していたという。「みんな最初からイブを過小評価してた:“彼女は映画で何をしてるの?なぜセルフィーを撮ってるの?こんなのばかばかしい”って。そして今、みんな“あ!”って感じ。彼女は最後に世界を救うの」と語る通り、セルフィーという軽薄に見える行動の裏に、キャラクターとしての戦略性と自己防衛の意図が込められていた。
実際、物語の後半ではイブがレックスの陰謀を暴く重要な役割を果たす。サンパイオは「彼女は自分の道具と人々が彼女についてどう思うかを自分の利益のために使った。それはある種の天才よ」と述べ、軽さと狡猾さが同居する人物像をリアルに捉えていることがわかる。
セルフィーの描写についても「彼女にとって、それはたくさんの“いいね”を得られるすばらしい写真に過ぎないの。彼女の心はソーシャルメディアでうまくいくものにもっと集中してる」と述べる一方で、「でも同時に、彼女はばかじゃないし、それを自分の利益のために使うの」と強調する。単なるギャグや風刺ではない、現代的な人物としてのイブを構築しようとしたサンパイオの意図がうかがえる。
“NOを知らない女性”が求めたもの
イブ・テシュマッカーは、華やかな外見と強烈な自己主張で物語に登場するが、その振る舞いの裏には「安全を渇望する心」があったとサラ・サンパイオは分析する。「彼女は“NO”という言葉を聞き慣れてない人だと思う。彼女は欲しいものを手に入れることに慣れてる」と語る通り、イブは自分を守る手段として魅力や影響力を使ってきた人物だ。
レックス・ルーサーとの関係についても、単なる恋愛ではない複雑な背景がある。「レックスは力があって、金持ちで、ハンサムで、彼女があまり慣れていないライフスタイルと安全を提供してくれる。何よりも、安全が彼女が最も渇望するもので、レックスはそれを彼女に提供してくれるの」と明かし、イブが依存的な関係に陥る理由を丁寧に読み解いている。
一方で、記者のジミー・オルセンとの関係は、そんな彼女の“攻略不能”を初めて突きつけた存在だった。「ジミーはおそらく彼女にNOと言った最初の男性だったでしょう。だから彼女の心の中では“私と一緒にいたくないってどういう意味?”って感じ。…あなたが私を欲しくないから、もっと欲しくなった」と、サンパイオはイブの中にある征服欲と執着を語る。
「征服欲といたちごっこの駆け引きを伴う強迫的な思考なの」と彼女は続ける。単なる“派手な女性”ではない、欲望・恐れ・承認欲求が複雑に絡み合うキャラクター像が、サンパイオの演技によって体現されている。

『スーパーマン』キャラクターポスター(イブ・テシュマッカー)© &TM DC © 2025 WBEI
「人生これでいいの?」から始まったサンパイオの挑戦
『スーパーマン』でブレイクを果たすまで、サンパイオはモデルとしてキャリアを築いてきた。しかし、俳優志望としては彼女の中でずっとくすぶっている想いがあったという。
「モデルは本来の計画じゃなかった。私はずっと演技をしたかっただけ」と語る彼女は、リスボン大学に通っていた当時も演技に興味を持っていたが、両親の勧めで“普通の”学位を取得する道を選んだ。その後、モデルの仕事に恵まれたものの、「何かが足りなかった」と常に心の中に違和感を抱えていたという。
2018年、ロサンゼルスに拠点を移し、本格的に演技に挑戦する決意を固めた。「何が起こっても、起こるままよ。でも今試さなかったら、絶対にやらないでしょう」という思いで踏み出した一歩が、最終的にジェームズ・ガン監督の目に留まることになる。
オーディションはパンデミック下で行われたセルフテープによる応募だったが、その後、ガン監督の妻ジェニファー・ホランドが彼女を推薦し、スクリーンテストの機会が巡ってきた。サンパイオは「私のセルフテープをジェームズに紹介してくれなかったら、ここにいなかったでしょう」と振り返り、チャンスをつないでくれた周囲への感謝を口にしている。
緊張の中で臨んだ初日、北極圏スヴァールバルでの“孤独の要塞”ロケは今も彼女の記憶に強く刻まれているという。「私がどんなに緊張してたか、その場所がどんなに美しかったか…それを永遠に頭に持ち続けるでしょう。私はただ本当に幸せで、それが残りの人生これをやりたいと分かった瞬間だったの」。
『スーパーマン』に置いて、イブ・テシュマッカーは一見すると物語の“色物”のように映る。しかしその背後には、自己防衛本能、愛されたい欲求、世間からの承認を求める気持ち、そして危機の中で自分なりに世界を救おうとする意志が重なっている。サラ・サンパイオは「彼女は確かにその瞬間意味をなさない愚かなことをするけど、それはすべて人々の二面性を示すためだった」と語っている。
演じる本人がその複雑さを深く理解し、丁寧に落とし込んだからこそ、セルフィーを撮る姿すら、物語の一部として成立している。イブは“おバカなインフルエンサー”の枠を超え、物語の鍵を握る存在となった。そこにこそ、彼女がこの役を通じて伝えたかった人間の奥行きがある。

