7月4日(金)より“ショーン・ベイカー初期傑作選”として特別上映される『フォー・レター・ワーズ』は、後に『タンジェリン』『フロリダ・プロジェクト』といった話題作を手がけることになるショーン・ベイカー監督の長編デビュー作である。真夏の夜のホームパーティーを舞台に、男子大学生たちの生々しい会話劇を描いた本作からは、既に監督の鋭い観察眼と独特な人間愛が垣間見える。一見すると取るに足らない若者たちの与太話に過ぎないが、そこには確かにベイカー映画の原点が刻まれている。
『フォー・レター・ワーズ』あらすじ
ある真夏の夜のパーティーで酔っ払い、戯れ、いさかいを起こす若者たちを描いた長編デビュー作。アメリカ郊外に暮らす男子大学生の間で、特有の生々しい会話が飛び交う。リチャード・リンクレイター作品などを彷彿とさせる青春のポートレートに、ベイカーの鋭い観察眼が光る。
ベイカー監督らしさが既に光るデビュー作
後に『タンジェリン』をはじめとする傑作群を世に送り出すショーン・ベイカー監督の原点がここにある。『Four Letter Words』つまり「四文字の言葉」。英語圏の映画で四文字の言葉とわざわざ指し示されて、多感な男子大学生たちがホームパーティーで繰り広げる与太話を描いた作品と聞けば、自ずと「Fワード」が連想されるが、本作はまさにその予想を裏切らない。
若者たちの会話の中身は「誰とヤった」「何人とヤった」「好きなAV女優」「酒」「タバコ」といった話題のオンパレード。延々と続くこうした会話に辟易する向きもあるだろうが、大学生という絶妙な年頃の男性たちが、一人前の大人になったつもりで調子に乗っている様子としては、これ以上ないほどリアルな描写と言える。
愛すべき愚か者たちの群像劇
登場する若者たちは皆、似たり寄ったりの平凡な存在だ。特別頭が切れるわけでもなく、ユーモアセンスが輝くわけでもなく、際立って容姿に恵まれているわけでもない。そんな彼らが、少しでも自分の優位性を示そうと「俺の方が偉い」「俺の方がすごい」「俺の方がモテる」「俺の方が大人で人生を知っている」と張り合うかのようにトークを繰り広げる姿は、鬱陶しくもあり微笑ましくもある。
特に興味深いのは、女性関係の自慢話や知識話に花を咲かせる場面だ。当の女性たちはその場にいないため、勝手な持論と妄想が入り乱れ、結局は「声の大きい者、主張の強い者が勝つ(ように見える)」という力学が支配する。これこそが男性社会の縮図と言えるだろう。マッチョイズムとホモソーシャルが混在した、クレイジーで愛すべき愚か者たちの群像劇。そんな彼らを捉えるショーン・ベイカーのカメラワークは、監督の一貫したスタンスを体現している。社会の“勝ち組”からは外れた、弱さや情けなさを抱えた人々への変わらぬ愛情に満ちた視線がそこにはある。
『フォー・レター・ワーズ』は、ショーン・ベイカーというフィルムメーカーの出発点を知る上で貴重な一作と言えるだろう。粗削りながらも、後の傑作群に通じる監督の資質がここには既に宿っている。7月4日(金)からの”ショーン・ベイカー初期傑作選”特別上映で、この才能ある監督の原点に触れてみてはいかがだろうか。きっと、その後の作品群をより深く理解する手がかりが見つかるはずだ。



作品情報
タイトル:フォー・レター・ワーズ
原題:Four Letter Words
監督:ショーン・ベイカー
脚本:ショーン・ベイカー
出演:デイヴィッド・アリ、ヘンリー・ベイリン、フレッド・バーマン
2000年|アメリカ|英語|82分|カラー
© CreFilm. All Rights Reserved
