映画『F1®/エフワン』の魅力を、映画ライター3人が語り合った独占座談会をお届け。
6月27日(金)に公開される映画『F1®/エフワン』。主演は“ブラピ”ことブラッド・ピット、監督は『トップガン マーヴェリック』のジョセフ・コシンスキー。現役のF1®ドライバーや実際のサーキットも登場し、映像もドラマもリアリティに満ちた注目作だ。
本記事では、cula主宰ライターのヨダセアだけでなく2名の映画ライター(アナイス氏、傭兵ペンギン氏)をゲストに迎えた3名の映画ライターによる座談会の様子を全文形式でお届けする。ブラピの俳優キャリアから、本作の映像表現、F1®愛好家だからこそわかるリアルな描写まで、語り尽くした熱量そのままにお楽しみいただきたい。

左からヨダセア、アナイス、傭兵ペンギン
ブラッド・ピットを知ったきっかけや、好きなブラピ出演作品は?
ヨダセア:
自分は『ファイトクラブ』ですね。最初に「なんだこの人は!」って気になったのがこの作品でした。タイラーの危ういセクシーさというか、絶対に近づいちゃいけないのに惹かれて彼の世界に導かれてしまうような魅力って、ブラピならではですよね。幼少から先に“ブラピ”という名前だけ知っていたけど、「この人がブラピか」と認識したのはそこからです。色々な映画を観るようになって本作に出会って、「これがブラピのすごさか」と感じさせられました。
アナイス:
私が最初にブラピを見たのは『オーシャンズ11』だと思います。ハリウッドスターとして認識したのは『Mr.&Mrs. スミス』で、『トロイ』とか色々観ていって。あんまり詳しくない子どもでも“ムービースター”という印象があるというか、ポスターに顔がバンと出ているのがこの頃のブラピでした。『バベル』や『オーシャンズ12』と続いて、『バーン・アフター・リーディング』や『ベンジャミン・バトン 数奇な人生』もあって。
でも個人的推しブラピは『セブン』とか、高校生ぐらいになって観た作品でした。『スナッチ』も大好きだし、『イングロリアス・バスターズ』もめちゃくちゃ好き。『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』のブラピはどうしても推さざるを得ないという感じですね。やっぱりすごく“良い年の取り方”をしているし、映画スターとしての魅力を再確認させてくれる存在でした。あのブラピは推しです、だってかっこいいんだもん!
傭兵ペンギン:
(ブラピ作品は)大体観てるんですけど、思い返すと『インタビュー・ウィズ・ヴァンパイア』がなんとも印象に残っています。トム・クルーズと共演している映画で、当時ブラピはまだそこまで有名ではなかったけど、「こんなにかっこいいやついるんだ…!」みたいな感じで話題になりました。
そのあとに『セブン』や『セブン・イヤーズ・イン・チベット』も観ていって、『ジョー・ブラックをよろしく』のブラピは記憶を持っていない死神の役なんだけど、“空想上のかっこいいやつ”みたいな…まさに夢みたいなキャラクターでいいですよね。映画としては『スナッチ』も、名優ロバート・レッドフォードと共演した『スパイゲーム』も好きです。若い頃のレッドフォードにブラピがそっくりで、本当に親子なんじゃ?くらいの印象でしたね。
あとあまり取り上げられないけど、アニメ映画『メガマインド』のメトロマン役の声もやってて、あれもすごく良かったです。『イングロリアス・バスターズ』『トロイ』『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』もめちゃくちゃ好きだし、歴史モノにも出る一方で『バーン・アフター・リーディング』みたいな変な役もビビらず演じるのがかっこいい印象があります。
あと、すごいなと思うのは、こんなにたくさん映画に出てキャリアを積んでいて、ずっと「超かっこいい」って言われてるのに、「俺かっこいいだろ」って感じを全然出さないんですよ!特に近年はそれが顕著で。若くてかっこよかった昔は、どうしても作り手が彼を前面に押し出すような映画が多かったと思うんですけど、『オーシャンズ11』の頃からだんだんその控えめな雰囲気が見えてきましたね。かっこいいのに、うざくない。かっこよさを押しつけてこないっていうのがあって、だから汚い役も悪い役もできるっていうところも、すごくいいですよね。この映画『F1®/エフワン』もそうなんですけど、近年は制作側にも回ってて、ほんとに「自分が作りたい映画を作ってるんだな」と感じさせられる。出たい映画にちゃんと出てるなっていう感じもあって、キャリアとしてもすごくかっこいいです。
アナイス:
『スパイゲーム』は、ロバート・レッドフォードが『テルマ&ルイーズ』のブラピを見て「若い時の自分を見た」ということで起用したという話もありますね。
ブラピのキャリアを振り返ると、『テルマ&ルイーズ』でセクシー路線のイケメン俳優として売り出された後、小さい作品にいくつか出演しました。カルト的な人気を誇った『トゥルー・ロマンス』では、ちょっと手応えを感じていたと思います。『インタビュー・ウィズ・ヴァンパイア』は彼の中ではトラウマ的な作品だったと思いますが、『セブン』でフィンチャーと組んで、『12モンキーズ』に出てと、イケメン俳優だけど彼には「脚本が面白い作品を選ぼう」という意識が若い頃から既にあったと思うんです。
でも売れたもんだから調子に乗るのも早くて…『デビル』や『セブン・イヤーズ・イン・チベット』で興行的にふるわなかった後、『スナッチ』では低いギャラでも好きな監督と仕事をしたいとラブコールして出演。『オーシャンズ11』も友人のジョージ・クルーニーに頼まれて出たという流れで。作品選びをしっかり考えてきた俳優さんだというのは、(傭兵ペンギン氏の)おっしゃる通りだなと思いました。
『Mr.&Mrs. スミス』は一度断ったけどアンジェリーナ・ジョリーが出るならと出演して、結果ああなったという(笑)(※)。その後はテリー・ギリアムやデヴィッド・フィンチャーなど監督との関係性で作品を選ぶようになり、『それでも夜は明ける』あたりから制作・プロデューサーにも回って…同タイプの俳優の中でも早かった気がします。『マネー・ショート 華麗なる大逆転』もすごく良い作品でした。
※ブラッド・ピットとアンジェリーナ・ジョリーはその後結婚したが、後に離婚し、現在も法的な対立がしばしば報じられている。
そうしてキャリアを積む中で、最近は『デッドプール』のカメオなど小さな役が多くて裏方に回ろうとしていたところを、クエンティン・タランティーノが引っ張り上げた感もあります。だから『F1®/エフワン』で「そっか!久々のブラピ主演か!」と思いました。
映画『F1®/エフワン』の感想

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ヨダセア:
序盤から一人称視点のレースシーンがあって…やっぱり大画面ならではのレースの迫力がありました。これまでにも『フォードvsフェラーリ』など他にもレース映画はありましたが、それらは他のチームとの関係なんかも結構描きますよね。でも今回は他のチームのことはほぼ名前しか出てこないしあまり映らない。こっちのチームの物語だけでやっていけるぐらい、チーム内のドラマがすごく明確に出ていて、本当にチームの物語になっています。
僕はレース素人なので映画やゲームでしか分からないんですが、「『F1®』ってすごく“まんま”なタイトルだな」と思って観に行きました。でもこの映画を観て、他のレースと違う“F1®という競技の面白さ”がちゃんと分かるなと思いましたね。
他の映画では色々なトラックレースや耐久レースが題材になっていて、『ラッシュ/プライドと友情』は多分F1®だと思うんですけど。今作ではチームで作戦を作ったり、“予選に落ちても決勝に行ける”とか、逆に予選に行かなかった分有利な要素があったりとか…そういう一つ一つの要素でF1®という競技の面白さが素人にも伝わってきて、F1®に興味を持てるなと思いました。それがタイトルの『F1®/エフワン』に象徴されている通りだなと思いましたね。
アナイス:
とにかく“プロダクションがすごい映画”でした!夏休み映画でも全然良かったと思うぐらい、絶対に映画館で観なきゃいけない作品ですね。撮影が本当に素晴らしいし、デザインやハンス・ジマーの音楽も本当に良くて、レース映画に必要な重厚感と臨場感がちゃんと揃えられている。キャスティングも本当に良くて、プロダクションとキャスティングが抜群でした。
確かにセリフや展開は、こういう映画でよく見るクリシェ(定番)が詰まっているなと思うんです。でも、それらの映画の中ですごく抜きんでているのがプロダクションとキャスティングで、俳優陣の演技は本当にピカイチ。観た後の感想が「すごく面白かった」になるんですよね。もしプロットに物足りなさを感じたとしても、キャストの演技と映像がそれを完全にカバーしています。映像体験がすごすぎて、粗があまり気にならなくなるんです。
人間ドラマもありますが、やっぱり圧倒的な映像とレースシーンの緊迫感が魅力の映画だと思いました。そしてブラピが本当にかっこいい!キャラクターもちょっと訳分からないところがあるけど(笑)、ブラピイズムがすごくあって、そこが良かったです。
とにかく迫力がすごくて、「わー!」ってなりました。スクリーンで観るべきというのはもう絶対に絶対!劇場で観ることを100%推します。脚本に言いたいことがあったとしても、それが害になってない。家族や友達と普通に映画館に楽しみに行くという点で、この作品は間違いないと思いました。
ヨダセア:
「お手本!」みたいな映画でしたね。
アナイス:
本当に。エンターテイメント。

『F1®︎/エフワン』© 2025 WARNER BROS. ENT. ALL RIGHTS RESERVED.
ヨダセア:
傭兵ペンギンさんはF1®がお好きとお聞きしていまして…。
傭兵ペンギン:
F1®が詳しい人として来ているわけではないです(笑)。たまたまF1®も好きでちょっと見たことがあって…くらいですよ!
この映画はもちろん映画としてもすごいところがあって、「地上版トップガン」という表現通り、監督・脚本・プロデューサーが『トップガン マーヴェリック』のチームの再結集なんですよね。コシンスキー監督はめちゃくちゃ映像を撮るのが上手い人で、それはもう超かっこいい映像を撮っていて「どうやって撮ったんだろう」みたいな…メイキングを見ると絶対楽しいだろうなと思います。
本物の車にブラピやダムソン・イドリスを実際に乗せて運転させて撮影していて…実際のレース現場に行って、予選パートの前後にブラピたちが乗った車を実際に走らせて撮影してるんです。現場で実際に撮るというリアルな映像作りにこだわっています。
F1®的な話をすると、実際のF1®の中継って走行中のドライバーの顔はあんまり映らないんですよ。車の前方部分が映るカメラで撮ることが多いんですけど、この映画では見たことがないタイプの映像を結構見せてくれています。特にかっこいいのが、前を見ているカメラで完全に道路が映っている状態から、カメラが横を向くんです。あれは多分合成じゃなくて実際にやってると思うんですけど、今までの普通ではやらない映像を作っていますね。
あと序盤の花火が反射する中を走るシーンとか、わざと泥っぽく撮ったショットとか、監督が作品に合った映像を作るのが好きなんだなという感じで、めちゃくちゃかっこよかったです。もちろんブラピもかっこよく撮れていました。
F1®︎ファンに刺さる「あるある」要素も
傭兵ペンギン:
F1®の話になりますが、F1®ってちょっと変わったスポーツで、予選はスタートの順番を決めるだけなんです。予選の結果で出場できるかとかは決まらないのですが、スタートの順番でレースの勝敗が左右されるので、予選にはちゃんと出ないとダメ。でもこの映画を観たら「いやいやいやそんなことしたらダメじゃん!」と。ブラピ演じる主人公ソニーがルール上スレスレのことをやりまくるんですけど、あれは別に前代未聞ではなくて、実際にああいうことをする選手はいるんですよ。
この映画には本物のF1®ドライバーがちょろちょろ本編に出てきますし、プロデューサーのルイス・ハミルトンもすごいレーサーですが、ああいうことをしないわけじゃないタイプの人です。ハミルトンはF1®史上初の黒人ドライバーで、今回の映画でソニーのチームにジョシュア(ダムソン・イドリス)という黒人ドライバーが出てくるのも、ハミルトン自身を投影してるなと思います。
ベテランが他のレースに出たけどやっぱり「F1®やりてえ!」って戻ってくるみたいな話も実際にあります。フェルナンド・アロンソという実在の選手は、10年以上レースをやって引退セレモニーをしたのに、他のレースで勝ちまくった後、気がついたら戻ってきたんです。映画で「後で話しようね」みたいな感じでソニーのインタビューの後ろに出てくるおじさんがアロンソ(本人)です。(アロンソが)F1®で今走ってる中では最年長なので、F1®ファンからは「これでアロンソが最年長じゃなくなったね(ブラピの方が年上だから)」なんてコメントされてるのをネットで見かけましたね。
そういう実際にいる人の要素が結構入ってるので、F1®ファンにも楽しめると思います。見たことない映像も見られるし、超カッコよく撮ってるし、ほぼ本物なので。インタビューをするシーンが結構多いんですけど、実際のF1®でもレース中にめちゃくちゃインタビューをするんですよ。記者から「カスでしたね」みたいなこととか、「どうやって挽回するんですか」とか結構ひどいことを言われます。映画にも“嫌なことを言ってくる名物おじさん”みたいな記者が出てきますが、あれも実在するタイプの人です。「いるいる!」って感じで、実際の会場を知ってる人には面白いところですね。

『F1®︎/エフワン』© 2025 WARNER BROS. ENT. ALL RIGHTS RESERVED.
セットで楽しみたいドキュメンタリー作品
傭兵ペンギン:
この映画を観てF1®に興味を持ったり、「よくわからなかったから知りたいな」と思ったりした場合は、Netflixの『Formula 1: 栄光のグランプリ』というドキュメンタリーがおすすめです。各シーズンごとにその年の振り返りを10話前後でまとめたもので、順番通りにレースを見るんじゃなくて、その年何が起こったかを描いています。映画でも「F1®は全然見たことないけど、ドキュメンタリーだけ見た」とお金を出してくれる人が出てきましたよね。コシンスキー監督もコロナ禍にこのドキュメンタリーを観て「これだったら映画にできる」と思ったそうです。『Formula 1: 栄光のグランプリ』を観ると、「このおじさん映画『F1®/エフワン』で見た!」って人が結構出てきますよ。
特に特徴的なのがハースという小さなチーム(ハースF1®チーム)。本体は工作機械のメーカーで、自動車メーカーではないんですが、もしかしたら上に上がれるかもしれないというチームです。そのチームで、レーサー同士がめちゃくちゃ揉めるんですよ(笑)。勢いのある若手選手とベテランだけど気が狂ってる選手がぶつかっちゃうみたいな。まさに映画『F1®/エフワン』でやってることで、着想はかなりそこから得てるなと思います。
もう一つ面白いのが、ハビエル・バルデムのキャラクターにかなり投影されているなと思った、ギュンター・シュタイナーというハースのチーム代表。ベテランですごく好かれてるんだけど、いつもひどい目に遭わされるおじさんです。ドキュメンタリーですごく人気になって、会場でファンに「ギュンター!」って声をかけられるぐらいになったんです。映画でも主人公チームの隣のブースにいて怒っているおじさんがいますよね、あれがギュンターです。
インタビューしてる人や実況の人も本物が出ているので、知ってる人が観たら「あれもこれも」という感じで面白いと思います。この映画を観てF1®に興味を持ったら、ドキュメンタリーを見るとエンタメとして楽しめますよ。F1®が分からなくても楽しいんですが、分からないなと思った時はNetflixのドキュメンタリーをついでに観ると「わー!」ってなると思います。
【動画】『Formula 1: 栄光のグランプリ』予告編
アナイス:
私はパパがF1®が好きで、家で『グランツーリスモ』とかやっていたのを横で見ていて……私もカーレースゲームとかは好きだったんですけど。『Formula 1: 栄光のグランプリ』は、映画『F1®/エフワン』鑑賞後に観たんですよ。そうしたら「これって映画に出てきたあれだろうな、これだろうな」っていうのがすっごい分かってきて。だからもう1回(映画を)観たいんです。 そういう意味で『F1®/エフワン』はリピート映画にもなるなと思いました。間に『Formula 1: 栄光のグランプリ』を挟んでもう1回観たい、もう1回おかわりしたい。そしたら今度はそういうところで面白さがグンって増すような気がしていて、作品の魅力が上がるなって思いました。
傭兵ペンギン:
『Formula 1: 栄光のグランプリ』を観ると、映画『F1®/エフワン』のプロデューサーでもあるルイス・ハミルトンの乗ってる車も分かるようになりますよ。この映画の中でも走ってるところが出てきます。
ヨダセア:
映画に出てくる主人公のチーム(エイペックス)はフィクションだけど、世代として「(ナイジェル・)マンセル、(アイルトン・)セナ、(アラン・)プロストと走ってたんだ」みたいな発言が出てきたりするから、F1®に詳しいほどソニーの解像度も高くなるんじゃないかなと思いますね。
アナイス:
ほかの映画で聞いたことあるサーキットの名前が出てくると、「どこそこを走った」って言われたときにピンとくるっていう。近年もカーレース映画がいい盛り上がり方をしているので、『F1®/エフワン』でまたぐっと上がりそうだなと思います。
嘘をつかないF1®映画
傭兵ペンギン:
この映画がすごいなと思ったのは、F1®というスポーツの描き方です。レース映画って結構嘘をつきがちなんですよ。同じチームに別のドライバーがいるという話はやりづらくてカットされることが多いんです。でもF1®はすごく特殊なレースで、自分のライバルは前を走ってる別チームの車だけじゃないんですよね。(チームで)連携するところはしなきゃいけないけど、基本的に自分のチームにいるもう一人のドライバーにも勝たないとキャリアアップができない。(チームメイトにも)勝ちたいんです。
同じチームだと基本的には同じ車に乗っている(ため言い訳がしにくい)んですよ。それでも負けたら「俺の車の調整ができてないんじゃないか」とか「指示が悪いんじゃないか」とかチームに文句を言ったりするんですけどね(笑)。キレると仲間同士ぶつかっちゃったりします。
もう一つ特徴的なのが、F1®は1回で勝負が確定しないんですよ。映画の中でもあるけど、一番になるんじゃなくてポイント権で上位に入ればOK。そこに入るためにピットインのタイミングを計ったり、自分以外のチームの選手を全員邪魔したりするんです…絶対怒られますけど(笑)。
この映画は本当にF1®部分においてあまり嘘をついてなくて、ソニーが反則スレスレな行為をするところも含めてリアルです。F1®が全面協力してることもあるんですが、F1®というスポーツの面白いところを真摯に盛り込んでいて。ハリウッド映画って面白くするためにスポーツの細かいところをないがしろにしがちなんですが、本作は嘘少なめで新しいというか、「こういう風に撮れるんじゃん!」と思いましたね。
アナイス:
それが実現できた撮影環境ってすごいですよね。ハミルトンが製作に入っているのも大きかったと思うし。
F1®というスポーツを楽しむ作品でもあるけど、同じチーム内で競う部分もあって、でもチームとしても勝たなきゃいけない。予算を取るためとか色々なしがらみがある中で、結構社会的な映画だなと思いました。社会的というのは個人の社会というか、自分がこれからどう生きていくかという出世術に近いですけど、個人としてキャリアアップしなきゃいけないけど他者も大事にしなきゃいけないということを考える上でのお手本映画だなと。
割とここに社会が詰まっているなと感じました。いつだって、よく分からないくせにお金は持っていて、助けようとしたり邪魔しようとしたりする人もいるし。「結局自分に言い訳はできないよね、個人でがんばらないといけないよね、他者を犠牲にする頑張り方をしたとしても、最終的には自分の実力がものを言うから強くなろうね」、というのは、ストレートに大作映画においていいメッセージだと思いました。色々な人がこういう作品を通して「そうだよね」と思うところはあるかもなと感じましたね。
ヨダセア:
どこでエゴを通すかみたいな。エゴを通さないと勝てないけど、通してばかりだと周りに嫌われる。周りをどう助けて、どこで自分に感心させて、ここではエゴを通すぞ!みたいな、バランス感覚みたいなものがすごく物語に表れていたと思いますね。
チーム内の人間関係と成長-競技のすべてを曝け出す物語とキャラクター構築
アナイス:
そういう意味では物語がよくできているというか、わかりやすいですよね。たとえばルーキーのジョシュアは、最初はソニーと対立したり、自分のせいで大変な目に遭ったり、“若さはって愚かさでもある”ってことをこの映画は実直に描いていて。若い人からしたら「うるせえ」って思うかもしれないけど、時に若さは愚かだよなっていうのは本当にその通りだなと思って。それを自認したうえで彼がどう上に行くのかというのも、物語において大事なポイントだったのかなって思いますね。
傭兵ペンギン:
キャラクターの描き方もすごくよかったですよね。チームものとして、ドライバーだけじゃなくてメカニックの人たちも描かれていて、かつ、明確な「悪のドライバー」みたいな敵のキャラクターが出てくるわけではなくて、悪いやつはお金を右から左へ動かして儲けようとしているやつで、そういうやつを悪として描いていて。まあ、実在のチームなんで、ほかのチームに悪いやつがいるという描き方をしたらまずいんですけど(笑)。
あと、レース直前に「このチームのパーツはおかしいんじゃないか、違反じゃないか」っていわれるくだりが映画に出てくるんですけど、あれも実際のF1®でよくあることなんですよ。トップ常連のチームが自分たちが負けそうになると、「あのチームはレギュレーション違反をしてる」みたいなことを運営に講義するなんてこともよくあるし、逆にルール的に合法スレスレのパーツを使うなんてこともよくあるんです。
ほかのスポーツって、チームものっていっても個人ががんばったりすごいトレーニングしたらなんとかなるわけですけど、F1®はどんなにドライバーがよくてもマシンがダメだったらダメだし。エンジンのせい、タイヤのせい、ピットクルーのしくじりとかいろんなことが重なるので、そういうのも含めて全部見せていて面白い映画だなと思いますね。
ヨダセア:
F1®はどうしてもドライバーに目が行くと思うんですけど、この映画ではピットクルーとかエンジニア、メカニックとかすべての人に脚光が当たっていたなという感覚がありますよね。
アナイス:
最初ピットクルーの若手の女の子が結構なしくじりをやらかしちゃって、素人目線でも「結構なことやっちゃったな……」と思っちゃったんですけど、そういうところもしっかり映していたというか。意外と登場人物が多いんですよね、この映画。その中でピットクルーやメカニックとして女性キャラが登場するのも、よかったですよね。ケリー・コンドン演じるメカニックのケイトはすごくかっこよかった!
ソニーを通して体現される“ブラピイズム”

『F1®︎/エフワン』より、ブラッド・ピット ©2025 WARNER BROS. ENT. ALL RIGHTS RESERVED.
ヨダセア:
ソニーというキャラクターの描き方もよかったです。グレーでこすい戦法、よくいったらクレバーなやり方、素人目にも「なんかすごいことやるなこの人」みたいな。ヒールっぽいこともやるんですけど、普段は筋トレしたりレースのシミュレーションしたりルーティンワークを欠かさなかったり、実はただただ勝ちに貪欲、勝ちに対してまじめなだけなのがわかってくる。
最初こそ、若いルーキーのジョシュアにとってそんなソニーは、ずるいしこすいし自分ばっかりで飄々としていて腹が立つ、目の上のたんこぶみたいに見えてしまうけど、一緒のチームにいるうちに、どれだけソニーが真摯に勝利に向かって寄り道せずに努力しているかがわかってくるという展開がよかったなと。そしてだんだんチームとして完成していって、お互いを勝たせたりとか、チームとしての勝利を目指すようになっていく段階を、王道ながらも丁寧に描いていましたよね。

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アナイス:
ソニーの魅力にもつながっていると思うけど、“継続は力なり”だなって。めちゃくちゃベーシックなことをメッセージとして伝えてくれるのは映画としていいなと思って。とにかくソニーがかっこいいんですよね、かっこよさにちゃんと裏付けがあるっていうか。「これをしたらこすいかもしれないけど勝てるじゃん、なんでお前らやらないの?俺はやるよ?」って……「そうですね」ってなるしかないんですよね(笑)。アメリカマインドというか。F1®はヨーロッパものだと思っていて、そこにそういうアメリカマインドがつっこまれている。
実際にソニーみたいな反則スレスレ行為をする選手たちもいるというお話もありましたが、アメリカを代表するスター俳優のブラピが演じるからすごいアメリカの介入感があって。彼のマインドが“個”なんですよね。インディビジュアル(個人)で勝ちに行くというか。チームだけど最終的に己だろというのがアメリカっぽくて面白かったです。そういうブラピイズム満載の彼を主役に『トップガン マーヴェリック』の製作陣が描くF1®が、メタ的に見て面白い映画だなと感じましたね。
ヨダセア:
やっぱり、勝ちしか見えてないというストレートさがかっこよかったですね。「かっこいいし、こうはなれないかも」みたいな(笑)。ここまで周りの顰蹙(ひんしゅく)を買うし認められるまではボロクソに言われたり軽蔑されたりするのに、それを飄々とスルーしながら、こんなに自分やチームの正しい成功への道を突き進めるってすごいかっこよさ。
ブラピって基本的に飄々としている雰囲気が似合う俳優で、周囲からは何を考えているかわからない役が多いというイメージがあります。本作でもそういうブラピがハマり役でした。
本当はまじめなのに飄々としているから周りからもまじめには見られないし、ソニーもちょっと不器用でまじめなところを周りに見せようとしないので顰蹙を買っちゃう。「なんだこいつ」と思われるけど、やっぱり正しかったみたいな。正義が勝つんじゃなくて勝ったものが正義なんだ、みたいな感じが今回のブラピにハマっていたなと思います。
走る理由は“好き”で十分
アナイス:
ソニーは「なんで走り続けるの?」と聞かれても、本人がその答えを持ってない感じがすごくいいなと思いました。答えは分からないけど走りたいから走っている感じで。その道のベテランとして何年も同じことをやってきて、体もボロボロになっているけどやってしまう。
その答えの出ないことを、あの年齢の人間が、答えを持っていなくてもやっているんだよというのを、物語として提示するのもすごくいいなと思って。「何でそれが好きなの?何でそれをやっているの?」という問いに対して答えを用意しなきゃいけないと感じる場面が日常生活でも多い中で、「好きだから」という理由でいい、それを押し通すキャラクター性がソニーの魅力の一つでもあるなと思いました。
あと、これは『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』の頃から思っていて本作で確信したことなんですけど、ブラピはやわらかいクタクタの、オフホワイトのTシャツが一番似合うなと思って(笑)。パリッとしているんじゃなくて、気持ちヨレヨレな感じ、カリフォルニアで売ってそうな感じの。柔らかい服との相性がすごすぎて、ちょっとそこは一言言わざるを得なかったです!
ヨダセア:
こだわりなさそうな服がめちゃくちゃ似合うというか、着こなしていますよね。
アナイス:
筋肉の肌感と、太さのギャップというか、コントラストが映像的に撮れているって、めっちゃすごい俳優だなと思いました。
ヨダセア:
僕はバルコニーのシーンが印象的で、あのシーンのソニーに「レースが好きだ」という感じが全部詰まっていました。ブラピが「俺は走るのが好きなんだ」とバルコニーでまじめな顔をして言ったから。それまではひょうひょうとしてたけど、レースへの愛をあのシーンだけまじめな顔をして言ってて。
F1®でもそうじゃなくても、(レースの)ジャンルが変わっても、ソニーはただただ走るのが好きなんだというのが、ジャンルを経ていくことで分かってくる。そこがちゃんと描かれていて、レースへのまっすぐな愛がずっと描かれていたなと思います。
ソニーとルーベン(ハビエル・バルデム)の熱い友情関係
傭兵ペンギン:
ブラピって控えめにしてるんですよね。「俺かっこいいだろ」っていうのを出してないというか、かっこいいんですけど(笑)、ほっといてもかっこいいというのもあって。飄々としているし、勝利に対して貪欲なのは分かるけど「そういう風にやってないよ、俺はただ仕事しに来たんだよ」という風にやってるのがいいです。
この映画ですごいと思ったのは、ソニーは教える側・ベテラン側なのに説教しないこと。説教臭くなくて、説教的なセリフをほとんど言わないんです。ルーキーのジョシュアに「お前態度悪いぞ」と怒ることはするけど、「レースでもっとこうしろ」とか「こうやって勝つんだ」とは言わないで、若手が自分で答えを見つけられるように勝たせてやろうとする。
でも、だんだん「自分のキャリア的にはこれが最後なんだよな」と追い詰められてきた時に、「やっぱ俺、勝ちたいんだよな」って言い出したりもする。それを見ると「やっぱソニーも勝ちたいんだな、かっこいい!」って思うんですよね。「若手に譲って勝たせて俺は去るぜ」じゃなくて、俺も勝ちたいと言っちゃうところも含めてかっこいい。この映画はちょっと西部劇っぽいところもあって、突然やってきた流れ者が街を救って去るとか、あまり口数多くないけどかっこよく出てきて去るみたいな。
あと、ハビエル・バルデム演じるチーム代表のルーベンとも、すごく仲良かったんだろうなと思って。この二人については多くが語られてるわけじゃないけど、関係性がよく出ていました。
ヨダセア:
ルーベンが「オーマイガー!」って感動しているところが僕は一番グッときました!

『F1®︎/エフワン』© 2025 WARNER BROS. ENT. ALL RIGHTS RESERVED.
傭兵ペンギン:
ソニーとルーベン、そんなにいっぱい二人で出てくるわけじゃないんだけど、常にソニーはルーベンに迷惑をかけ続けてて、しょっちゅうF1®マシンも破壊し続けて(笑)。何千万とか何億とかするパーツとか壊しまくるし。実は一部のパーツは、交換できる回数が決まってるんですよ。そうじゃないと資金があるチームが有利になっちゃうので、限界が一応ルールとして決まってるんです。その上でソニーはすれすれのところで壊し続けるんですけど(笑)、そんな胃を痛め続けていたルーベンとも最後ああいうふうな感じになるんだっていう終わり方するのも良かったですね。あそこに結構グッとくる。
アナイス:
ルーベンが本当に懐深すぎて、見えないところでどれだけソニーと仲良かったんだっていう(笑)。あれだけ何回も迷惑かけられて、ソニーに説教もしていて、普通絶交するよって思いますよね。
傭兵ペンギン:
ソニーとルーベンは若手時代に同じチームのドライバーとしてライバル同士だったんですよね。同じチームメンバーって不仲になることが多いんですよ。
序盤にはルーベンがチームにソニーを連れてきて、トライアルでソニーの実力をみんなで見ようというくだりで、ソニーはF1®マシンをボッコボコに壊しちゃって「この車クソだから」って言っちゃうようなシーンもありましたよね(笑)。
アナイス:
普通の映画だとそこでかっこよく合格すると思うんですけど、ソニーはクラッシュして失敗するんですよね。タイム的には合格するけど。
ヨダセア:
ルーベンだけが、ソニーを最初からずっと信じてるんですよね。初めてルーベンがソニーをチームに連れて来るとき、ルーベンだけが「こいつが希望だ」みたいな感じで画面の右側を観た時に、そこからソニーが現れる。チームからしたら「誰だこいつ、変な奴が来たぞ」みたいな感じなんですけど、映画の後半で「チームがピンチだ」みたいになったとき、ソニーが今度は全員の希望として右側から現れる。あの対比が、めちゃくちゃ関係性の変化を感じてよかったですね。先ほど「西部劇っぽい」と言うお話がありましたけど、ソニーが西部劇のヒーローみたいで。
アナイス:
『トップガン マーヴェリック』で観たような感じ、コシンスキー監督はやっぱりこういうのが好きなんだろうなと思いました。
コシンスキー監督は、あの日本アニメが好きすぎる?
傭兵ペンギン:
本作は『トップガン マーヴェリック』と監督も脚本も同じ人なので、確かにそういうところはあるかもしれないですね。でも『トップガン マーヴェリック』だと、トム・クルーズが一番かっこいい映画として作ってた気がするんです。「若者がなまってるからここでおじさんが出ちゃおうかな!?」みたいな話で、一番活躍するのがトムになってる。若者とタッグを組んで「おじさんもがんばるぜ、おじさんもやる時やるんだぜ」みたいな話で。
でも『F1®/エフワン』のブラピって、別にすごくかっこよくはないよねっていうか、泥をかぶりに来て若者を勝たせてやるという話をやってて、最後にそれが報われるというお話になってる。おじさんに対してのメッセージはこっちの方がいいな、しゃしゃらなくていいなと思いましたね(笑)。
アナイス:
それは本当に思いました!それから、『トップガン マーヴェリック』も『F1®/エフワン』も、エイジングの話は、ひとつのキーワードだと思っていて。どういう年の取り方をするか、年を重ねた上でその立場としてどう振舞うか、ブラピとトムで出した答えの違いがあると思うんですけど、ブラピの答えは凄くブラピっぽいなと。
ヨダセア:
トニー・スコット監督が『トップガン』の後にレースもの『デイズ・オブ・サンダー』を撮ったように、コシンスキー監督も『トップガン マーヴェリック』のあとにレースもの『F1®/エフワン』を撮っているのも、2作の共通点というか面白いなと思いましたね。
傭兵ペンギン:
あと思ったのは、コシンスキー監督、アニメ『マクロスプラス』が好きすぎると思うんですよ。『トップガン マーヴェリック』を観て思ったんですけど、話が一緒なんですよ。『F1®/エフワン』もかなりそれっぽい。女性の恋人と空を見ながら思いを話したりとか、同じようなところがあって。(『マクロスプラス』は)2人のテストパイロットのライバル関係を描く話なんですけど、『トップガン マーヴェリック』に関しては前半が、『F1®/エフワン』に関しては後半が『マクロスプラス』にそっくりだと思うんですよね。
エンジニアのケイト(ケリー・コンドン)の存在感

『F1®︎/エフワン』© 2025 WARNER BROS. ENT. ALL RIGHTS RESERVED.
アナイス:
ケリー・コンドン演じるエンジニアのケイトとソニーがちょっとイイ感じになるのも、その辺りの影響がありそうですね。男性ばかりの職場で女性性を自ら排除してがんばっているようなキャラクターかなと思いきや、やっぱりソニー/ブラピの魅力には勝てなかったのかと……(笑)。
傭兵ペンギン:
その辺は結構ドライな感じでやっていくのかと思ったら、ちょっとしたロマンスもありましたね。
アナイス:
そこがアメリカ映画でしたね。ケリー・コンドンのことはもともと好きなんですけど、この映画の彼女もすごく綺麗でしたね。衣装も素敵だった。普段はユニフォームだけど、オフのときはゆるい大人のニットの着こなしをしていて、「大人かわいいがすごいぞ!」と思いました。女性が見てもあのオンオフの感じは「かわいいな、いいな」と思いましたね。
ルーベンのスーツもかっこよかったし。確か良いブランドのスーツを着ているんですよね。そういう意味で、本作のキャラクターの振る舞いのなかに、「装い」という要素もあるんだなと思いましたね。レースシーンと、オフのシーンと、ちょっと飲みに行くときのアフターワークの服と、ラスベガスではドレス着ているとか……結構キャラクターたちがいろんな服を着ている作品なんですよね。
ヨダセア:
ソニーと、ジョシュアのお母さんとのやり取りも印象的でした。
傭兵ペンギン:
ソニーはこんな感じのキャラなのに、お母さんにはちゃんと挨拶するんだって思いました(笑)。意外に礼儀がちゃんとしているとか、いいキャラの作り方だなと思いましたね。
ヨダセア:
最初ジョシュアが色々気にしちゃってるところで、「言われたことを思い出しなさい、ただ走れって言われたでしょ」みたいなこと言われますけど、それって結構ソニーがやっているムーブと同じだから、もう序盤ですでに目指すところは同じだったんですよね。そういうところもよかった。
アナイス:
「どれだけ提示されていても、本人が気づかないとダメだよね」っていうのも超リアルだなって思いました。ジョシュアは最初年長者の言葉を聞かないから、文字通り“痛い目を見ないとわからないよ”という展開もあって。その分の代償も大きかったけど……。
リアルと楽しさを追求した撮影現場の空気が伝わる
傭兵ペンギン:
昔のF1®ってめちゃくちゃ危なかったんですよ。今はすごく安全になるよう色々なことをやっています。映画の中でも、操縦席に棒みたいなHalo(ヘイロー)というパーツがついてるんですけど、あれって当初F1®の人たちはすごく嫌がったんです。見た目がカッコ悪いし、見づらくなっちゃうから。でもあれがついたことで、クラッシュしても人が死ななくなったんです。ドライバーが乗った後に上からガコンッてつけるんですが、飛んできたものが当たりにくくするためのもので、実際に命を救ったケースもいくつもあるんです。
『ラッシュ/プライドと友情』とか『グランツーリスモ』でも事故で人が亡くなりますけど、「ちゃんと安全対策やっていますよ!」という作り手のメッセージも感じましたね。F1®マシンはすごく進化してますから。昔の映画だったらその棒もないバージョンで撮ろうとすると思うんですけど、『F1®/エフワン』はそういうことをやらない。俳優の顔を見せるためにヘルメットを外しちゃったりするのかなと思ったら全然そういうことはしないし、ヘルメットもしっかりかぶってる。そこがすごく誠実な映画だなと思ったし、ブラピだからできたのかなとも思いましたね。
アナイス:
ブラピはやっぱり『ブレット・トレイン』でもすごく思ったんですけど、やはり本人がいろんなキャリアを経て、割と早い段階で酸いも甘いも体験したからか、“禅モード”に入ってきてると思うんですよ。「安らかでいたい」という自分を『ブレット・トレイン』のキャラに投影しているなというのも感じて。あそこから「よくわからないけど飄々としていて、自分のペースで僕は生きていきます」っていうキャラをずっとやっているなと思っています。ソニーも結構“禅っぽい”じゃないですか。悟りを開いている感じがするというか。
傭兵ペンギン:
なんか撮影現場でブラピ楽しそうですよね(笑)。やっぱり製作側に入ってうまくいってる人だなと常々思うんですよね。普通はもっとかっこよく振る舞っちゃうと思うんですけど。
ヨダセア:
ブラピは、“かっこよくないもののかっこよさ”についての達観みたいなものがある気がして。かっこいいものはかっこいい、でもかっこよくないことやってるブラピもかっこいい、っていうのをブラピ自身も達観してわかってるよなと。
アナイス:
あと、一緒に働く人を大事にする、環境を整えているんだろうなってことはすごく感じましたね。『ウルフズ』も結局友達と撮った映画だったので。結構本人的には「ブラピ、きゃー!」って黄色い声より良い映画を撮りたい。「プランB(※)」としての視点もあるし、個人としても「自分が出演するのであれば、撮影も現場も楽しみたい」みたいな。そういうガツガツしていない感じが、「俺かっこいいぜ」って気張っていない雰囲気にもつながってるのかなと思いました。
※プランBエンターテインメント:ブラッド・ピットが設立した映画製作会社。『それでも夜は明ける』『ムーンライト』など高評価の作品を多数手がけている。
傭兵ペンギン:
ブラピって映画の中だけじゃなくて、内外でかっこいいですよね。
総括:映画『F1®/エフワン』のブラピ最高!

左からヨダセア、アナイス、傭兵ペンギン
アナイス:
『F1®/エフワン』は、ブラピ主演じゃなかったら違う映画になっていたと思います。それぐらい、ブラピだからこういう感じになった、っていうのは大きいんじゃないかなと思いますね。『F1®/エフワン』のブラピ最高!
ヨダセア:
かっこいい時のブラピは当然にかっこいいし、「かっこいいのか?」みたいなことをやってることもかっこいいんだと、ブラピを見てると思うんですよね。それを貫く姿勢が、俳優としてのブラピもそうだし、ソニーというキャラとしてもそう。
結局誰かがかっこいいかそうでないかを決めるのではなくて、本人が貫き通したら最終的にかっこよくなるということを、ソニーというキャラが示していて、それがブラピの生き方も体現していると思うんです。ブラピが演じるソニーというキャラは最高だし、ソニーを演じるブラピも最高!ということですね。
傭兵ペンギン:
ブラピはもちろん最高なんですが、映画『F1®/エフワン』は劇場で観ることにすごく大きな価値がある映画だと思っていて。映像も本当にかっこいいし、ブラピもすごくかっこいいし、可能な限り大きな画面で観てほしいです。「最高にかっこいいブラピを大画面で観てください」と言いたいです。
もちろん気楽に観に行っても楽しめるし、オーソドックスな魅力もあるし。何より、「こういう感じのかっこいいおじさんがいいんだよ」っていうのがわかると思います(笑)!
(座談会以上)
映画『F1®︎/エフワン』は6月27日(金)より全国公開。
ゲストプロフィール
アナイス
映画とポップカルチャーを愛するナードなコラムニスト。ウェブメディアや雑誌など複数の媒体でレビューやコラムの執筆、インタビュー取材を行う。YouTubeやインターネット放送局の番組にも出演する。
X(旧Twitter):@cinemababyanais
傭兵ペンギン
アメコミ&筋肉映画ライター兼翻訳者。近刊は「渡辺信一郎の世界 『カウボーイビバップ』から『LAZARUS ラザロ』まで」。
X(旧Twitter):@Sir_Motor
作品情報
<STORY>
伝説的元カリスマF1®︎ドライバーのソニーは、最弱のF1®︎チームを救う為、現役復帰を果たす。常識破りなソニーの振る舞いに、チームメイトである若きルーキーやチームメンバーは困惑し、度々衝突を繰り返すが、次第に圧倒的なソニーの才能と実力に導かれていくー。果たしてソニーは、バラバラのチームと共に過酷な試練を乗り越え、並み居る強敵たちを相手に逆転できるのか?!それぞれの情熱と誇りを胸に、命がけで夢<スピードの頂点>に挑む!
タイトル:映画『F1®︎/エフワン』
原題:F1®︎
監督:ジョセフ・コシンスキー
脚本:アーレン・クルーガー
出演:ブラッド・ピット、ダムソン・イドリス、ケリー・コンドン、ハビエル・バルデム
日本公開:2025年6月27日(金)全国公開
© 2025 WARNER BROS. ENT. ALL RIGHTS RESERVED.
配給:ワーナー・ブラザース映画
公式サイト:f1-movie.jp
X:@f1movie_jp
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