【映画レビュー『君がトクベツ』】大橋和也×畑芽育が描く現代の“推し活”ラブストーリー|“好き”は最強の力

『君がトクベツ』© 幸田もも子/集英社 集英社マーガレットコミックス刊 REVIEWS
『君がトクベツ』© 幸田もも子/集英社 集英社マーガレットコミックス刊

6月20日(金)に日本公開となった『君がトクベツ』は、”好き”という感情が持つ力を改めて信じさせてくれる、現代の“推し活”を描いた恋愛映画だ。“陰キャ女子と国民的アイドル”という極端な組み合わせから生まれる物語は、単なるシンデレラストーリーを超えて、誰かを応援することの意味を問いかけてくる。

王道キラキラ映画として、まず楽しめばいい

『君がトクベツ』© 幸田もも子/集英社 集英社マーガレットコミックス刊

『君がトクベツ』© 幸田もも子/集英社 集英社マーガレットコミックス刊

大前提として、本作は紛れもない王道の“キュンキュン映画”である。現実の重さから一歩離れ、甘美で眩しい時間に身を委ねる──そんな純粋な娯楽体験こそが、このジャンルが持つ本質的な価値なのだ。深く考え込む必要はない。ただ素直に、その甘やかな世界観に浸ればいい。

“好き”は人生の原動力-この映画が描く“応援する力”

しかし本作が描くのは、単なる恋愛劇にとどまらない。「誰かを真剣に応援するという行為が持つ力強さ」──これこそが作品の核心にあるテーマだろう。現代的な”推し活”という現象は、実のところ祈りの形であり、愛の告白であり、そして何より自分自身を表現する手段でもある。誰かを”好き”になることで生まれるエネルギーは、日常を支える原動力となり、時として人生そのものを大きく動かす推進力にもなる。他者への応援が、結果的に自分自身を奮い立たせる──そんな感情の循環を、本作は丁寧に描き出している。

アイドルだって、夢を見る側の人間だ

『君がトクベツ』© 幸田もも子/集英社 集英社マーガレットコミックス刊

『君がトクベツ』© 幸田もも子/集英社 集英社マーガレットコミックス刊

男女問わずアイドルが群雄割拠する現代において、本作は実にタイムリーな作品と言える。劇中に登場するアイドルグループが象徴するように、彼らは夢を届ける職業として舞台に立っている。

その役割ゆえに、時として高慢なナルシストかのように映る瞬間があるかもしれない。だが、それは彼らが背負う「演じる仕事」の一面に過ぎない。スポットライトの向こう側には、我々と何ら変わらない悩みや希望を抱えた一人の人間がいる。SNSで切り取られた煌びやかな断片だけでは見えてこない、等身大の人間性──本作はそうした当たり前の事実を、改めて観客に気づかせてくれる。

キャストと演出-光る部分と、毎度のツッコミどころ

大橋和也(なにわ男子)の持つハスキーな声質と温和な佇まいは、本作が求める理想的な王子様像と見事に合致している。彼の演技からは、観客が自然と応援したくなる魅力が溢れ出ており、ひとりのアイドルの内面がきちんと表現されている。

また、本作に登場するアイドルグループ「LiKE LEGEND(ライクレ)」にも注目だ。クールに引っ張ってくれそうなメンバーから“愛されるコメディキャラ”といえるメンバーまで、バランスの取れた愛されグループが見事に出来上がっており、このグループが本作のみの活動であることを惜しむ観客もいるのではないか。

『君がトクベツ』© 幸田もも子/集英社 集英社マーガレットコミックス刊

『君がトクベツ』© 幸田もも子/集英社 集英社マーガレットコミックス刊

一方で、このジャンルの宿命的な問題も指摘せざるを得ない。世間一般に美しいとされる女優に“パッとしない陰キャ”の役を演じさせる設定は、もはや説得力の限界を迎えているのではないか。畑芽育は明らかに整った容姿の持ち主であり、どう見ても外見にコンプレックスを抱くようなビジュアルではない。この手のキャスティングはもはやこのジャンルの名物といえるが、やはり毎回ツッコミを入れたくなるところだ。

好きなものを持つということ──それは人生において、これほど尊い体験はないだろう。6月20日(金)に公開された『君がトクベツ』は、忙しい日常の中で忘れがちなその感覚を、優しく思い出させてくれる。これは確かに、現代を生きる全ての人への応援映画なのだ。

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