映画『ブロークン・ヴォイス』(2025)を紹介&解説。
映画『ブロークン・ヴォイス』概要
映画『ブロークン・ヴォイス』は、チェコの名門児童合唱団「バンビーニ・ディ・プラーガ」で実際に発覚した性的虐待事件から着想を得て、名門少女合唱団へ入団した13歳の少女とカリスマ的な指揮者の関係を描くチェコ・スロバキア合作のドラマ/サスペンス。
オンドジェイ・プロヴァズニークが監督・脚本を務め、カテジナ・ファルブロヴァ、ユライ・ロイ、マヤ・キンテラらが出演。事件そのものを再現するのではなく、権威に認められることを望む少女が、閉鎖的で競争の激しい環境の中で徐々に危険な状況へ追い込まれていく過程を描く。
作品情報
| 日本版タイトル | 『ブロークン・ヴォイス』 |
|---|---|
| 原題 | Sbormistr |
| 英題 | Broken Voices |
| 製作年 | 2025年 |
| 本国公開日 | 2025年7月10日 |
| 日本公開日 | 2026年9月19日 |
| ジャンル | ドラマ/スリラー |
| 製作国 | チェコ/スロバキア |
| 原作 | 無 |
| 上映時間 | 106分 |
| 監督・脚本 | オンドジェイ・プロヴァズニーク |
|---|---|
| 製作 | イジー・コネチニー/イヴァン・オストロホフスキー |
| 撮影 | ルカーシュ・ミロタ |
| 編集 | アンナ・ジョンソン・リンドヴァー |
| 作曲 | Pjoni/Aid Kid |
| 出演 | カテジナ・ファルブロヴァ/ユライ・ロイ/マヤ・キンテラ/ズザナ・シュライオヴァ/マレク・チソフスキー ほか |
| 製作 | endorfilm/Punkchart films/Česká televize/innogy/Barrandov Studio |
| 配給 | CinemArt(チェコ)/クレプスキュール フィルム(日本) |
あらすじ
1990年代初頭のチェコ。13歳のカロリーナは、姉ルツィエに続いて、世界的に知られる名門少女合唱団へ入団する。そこは美しい歌声と華やかな海外公演の裏側で、少女たちが厳しい競争を繰り広げる閉鎖的な世界だった。
カロリーナは才能を発揮し、合唱団を率いるカリスマ的な指揮者ヴィート・マーハから次第に注目されるようになる。憧れの指揮者に認められ、特別な存在として選ばれることは、当初カロリーナにとって大きな喜びだったが、指揮者との距離が近づくにつれ、その「特別扱い」の裏側にある危うさが徐々に姿を現していく。
合唱団という閉ざされた共同体で、才能、競争、憧れ、権力が絡み合い、少女は自分でも理解しきれない状況へ追い込まれていく。
主な登場人物(キャスト)
カロリーナ(カテジナ・ファルブロヴァ):13歳の少女。姉を追って名門少女合唱団に入り、才能を認められて指揮者から特別な注目を受けるようになる。
ヴィート・マーハ(ユライ・ロイ):名門少女合唱団を率いる指揮者。才能ある指導者として少女たちから尊敬と憧れを集めている一方、強い権力を持つ。
ルツィエ(マヤ・キンテラ):カロリーナの姉。妹より先に合唱団へ所属しており、競争相手でもある。
カロリーナとルツィエの両親(ズザナ・シュライオヴァ、マレク・チソフスキー)
作品の魅力解説
「悪人」だけでは説明できない権力構造を描く
本作が着想を得たのは、名門合唱団「バンビーニ・ディ・プラーガ」の指導者をめぐって発覚した性的虐待事件。
しかし映画は実際の事件をそのまま再現するのではなく、なぜ若い少女が大人の権威へ逆らいにくくなるのか、その環境そのものをドラマとして構築している。
指揮者から認められることが成功につながる世界では、少女にとって「特別扱い」は最初から恐怖として見えるわけではない。その曖昧さを丹念に描くことが、本作のサスペンスを形作る。
美しい合唱と、その裏側に存在する不穏さ
少女たちが生み出すハーモニーは美しい。一方、その舞台へ立つためには激しい競争を勝ち抜き、指導者から認められなければならない。
音楽の美しさと閉鎖的な環境の不穏さを同時に描くことで、「美しいものが生まれる場所=安全な場所」とは限らない現実を浮かび上がらせる。
タイトルの「Broken Voices=壊された声」も、歌声だけではなく、被害について声を上げることのできない少女たちの状況を想起させるものになっている。
カテジナ・ファルブロヴァの視点から体験する物語
物語は大人が事件を検証する視点ではなく、13歳のカロリーナの経験を中心に進む。
カテジナ・ファルブロヴァは本作でカルロヴィ・ヴァリ国際映画祭の演技に関する特別賞を受賞。少女自身が状況の危険性を完全に理解していない段階から観客を同じ視点へ置くことで、「いつから一線を越えていたのか」という恐怖を徐々に実感させていく。
