ブラジル映画初のアカデミー賞作品賞ノミネート作品『アイム・スティル・ヒア』が描く、軍事政権下の静かな闘い
名匠ウォルター・サレス監督の16年ぶりのブラジル作品『アイム・スティル・ヒア』(原題:I’m Still Here)が、2025年8月に日本公開されることが決定した。ブラジル映画として初めてアカデミー賞作品賞にノミネートされた本作は、1970年代の軍事政権下で夫を奪われた女性の闘いを描いた実話に基づく作品である。
間もなく開催される第97回アカデミー賞において、本作は作品賞、主演女優賞、国際長編映画賞の3部門にノミネート。主演のフェルナンダ・トーレスは、すでに第82回ゴールデングローブ賞主演女優賞を受賞しており、その演技力に世界中から注目が集まっている。
軍事政権下の消息不明事件を描く衝撃作

『アイム・スティル・ヒア』©2024 VideoFilmes/RT Features/Globoplay/Conspiração/MACT Productions/ARTE France Cinéma
1970年代、軍事政権下のブラジル。元国会議員のルーベンス・パイヴァとその妻エウニセはリオデジャネイロで子どもたちと共に平穏な生活を送っていた。しかし、スイス大使誘拐事件を契機に国内の情勢は一変。抑圧の波が広がる中、ある日ルーベンスは突如として軍に逮捕され、その後消息を絶つ。愛する夫を奪われたエウニセは必死にその行方を追うが、捜索の過程で彼女自身も軍に拘束され、数日間にわたる過酷な尋問を受けることとなる。
本作は、ルーベンス・パイヴァの実の息子であり作家のマルセロ・ルーベンス・パイヴァによる書籍「Ainda Estou Aqui」(日本未発売)を原作としている。幼い頃からパイヴァ家と親交のあったウォルター・サレス監督にとって、本作は自らが見聞きし、体験してきた歴史と向き合う重要な作品となった。『セントラル・ステーション』『モーターサイクル・ダイアリーズ』で知られる名匠が、16年ぶりのブラジル作品として送り出す渾身の一作である。
母娘2代で挑む女性の魂の叫び

『アイム・スティル・ヒア』フェルナンダ・トーレス ©2024 VideoFilmes/RT Features/Globoplay/Conspiração/MACT Productions/ARTE France Cinéma
妻エウニセを演じるのは、フェルナンダ・トーレス。夫を奪われた女性の慟哭と決意を滲ませる圧巻の演技は、第82回ゴールデングローブ賞主演女優賞を受賞。さらに第97回アカデミー賞主演女優賞へのノミネートという快挙を成し遂げた。
そしてエウニセの老年期を演じるのが、トーレスの実母であり、サレス監督の『セントラル・ステーション』に出演したフェルナンダ・モンテネグロである。27年前、モンテネグロはブラジル人女優として初めてアカデミー賞主演女優賞にノミネートされ、歴史を刻んだ。95歳となった今、その意志は娘トーレスによって受け継がれ、同じサレス監督のもとで新たな歴史を紡ぐこととなった。
世界が認めた新たなブラジル映画の金字塔
本作は2023年の第81回ヴェネツィア国際映画祭で最優秀脚本賞を受賞。そして第97回アカデミー賞では、ブラジル映画として史上初めて作品賞にノミネートという快挙を達成。主演女優賞、国際長編映画賞と合わせて3部門でノミネートを果たした。サレス監督は極限状況下での人間の尊厳を描き続けてきたが、本作でも静寂を引き裂く暴力の影と、それに抗う魂の叫びを映像に刻み込んでいる。
単なる歴史の再現にとどまらず、本作は世代を超えた家族の絆と個人の闘いが、いかに歴史の中で響き合うのかを描いた壮大な叙事詩となっている。現代のブラジルを代表する名優たちの演技と、サレス監督の研ぎ澄まされた演出が織りなす圧倒的な映像体験は、観る者の心を深く揺さぶることだろう。
作品情報
<STORY>
1970年代、軍事政権下のブラジル。元国会議員のルーベンスとその妻エウニセは、人の子どもたちと共にリオデジャネイロで穏やかな日々を過ごしていた。だが、スイス大使誘拐事件を契機に、国の空気は一変する。抑圧の波が広がる中、ある日、ルーベンスは軍に逮捕され、そのまま連行された。愛する夫を突然奪われたエウニセは、必死にその行方を追う。しかし、その過程で彼女自身もまた軍に拘束され、数日間にわたる過酷な尋問を受けることとなる。極限の状況の中でなお、彼女は沈黙を貫き、夫の行方を捜し続けた。自由を奪われ、愛する人の消息も知らされぬまま、それでもエウニセは諦めなかった。夫の名を呼び続けたその声は、やがて静かに、しかし確かに、歴史を動かす力へと変わっていく──。
タイトル:『アイム・スティル・ヒア』
原題:I’m still here
監督:ウォルター・サレス
脚本:ムリロ・ハウザー、エイトール・ロレガ
出演:フェルナンダ・トーレス、セルトン・メロ、フェルナンダ・モンテネグロ
音楽:ウォーレン・エリス
撮影:アドリアン・テイジド
日本公開:2025年8月ロードショー
2024年|ブラジル、フランス|137分
©2024 VideoFilmes/RT Features/Globoplay/Conspiração/MACT Productions/ARTE France Cinéma
公式サイト:https://klockworx.com/movies/imstillhere/




