【映画レビュー『ミッシング・チャイルド・ビデオテープ』】ビデオテープ映像の観察と、抑制の効いたテンポが“本物”の手触りで没入させる陰湿な神隠しホラー

© 2025 「ミッシング・チャイルド・ビデオテープ」製作委員会 REVIEWS
© 2025 「ミッシング・チャイルド・ビデオテープ」製作委員会

映画『ミッシング・チャイルド・ビデオテープ』が2025年1月24日(金)より日本公開。「イシナガキクエを探しています」の演出などで話題をさらう近藤亮太監督がメガホンを撮った、じっとり染みるようなホラー作品だ。

『ミッシング・チャイルド・ビデオテープ』予告編

『ミッシング・チャイルド・ビデオテープ』あらすじ

一緒にかくれんぼをして遊んでいた弟が失踪してしまったという過去を持つ兒玉敬太。その後も弟の日向は見つからないままで、現在の敬太は行方不明者を捜すボランティア活動に従事している。そんな彼のもとに、母親から古いビデオテープが送られてくる。そこには、日向がいなくなる瞬間が映されていた。霊感のある同居人・天野司はそのビデオテープに禍々しさを感じ、敬太に深入りしないよう忠告するが、敬太は忌まわしい過去の真相を暴くために動きだす。敬太を取材する記者の久住美琴も加わり、3人は日向が失踪した山に足を踏み入れるが…。

© 2025 「ミッシング・チャイルド・ビデオテープ」製作委員会

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“ビデオテープ”ならではの物理的な存在感

幼い弟の失踪という過去を持つ主人公・敬太という、いかにも王道ホラー映画的な設定から始まる『ミッシング・チャイルド・ビデオテープ』。だが本作の真骨頂は、あえてビデオテープという旧式メディアを「過去の遺物」を物語の核としてタイトル・物語のトリガーに据えたことにある。母から送られてきたテープの映像を、敬太とともに凝視することを強いられる観客。その過程で、テープに記録された映像と敬太の記憶は、観客自身の体験として深く刻み込まれていく。そして自然と、事件の不可解さへの恐怖と、真相究明への切迫した欲求を共有させられるのだ。

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DVDやBDも存在感を潜め、いまやオンライン上で動画を見るのが主流の現代、アナログメディアの粗い画質と物理的な存在感が、独特の不気味さを醸成する。そこには過去の出来事や感情が文字通り「封印」されており、もはや存在しないはずのものが確かにそこにある。この「アナログ的な残存」が生む違和感は、ホラー表現として絶妙な効果を発揮している。

存在の曖昧さ - 不条理な空気が呼び込む恐怖

加えて今作は、遺骨という「存在の痕跡」をモチーフに深みを加える。生命の消失と物質的な残存という矛盾が、独特の不安を呼び起こすのだ。ビデオテープと遺骨、そしてこびりついた記憶と強迫観念―これらは全て、「もはやないもの」が「確かにそこにある」という不条理な状態を表現している。

この「存在の曖昧さ」を軸にした恐怖の描き方は、日本を含む秀逸なアジアホラー作品の伝統を継承しているといえる。近藤監督が『リング』シリーズの脚本家・高橋洋氏に師事していたというのにも頷ける。

現実味のあるじっとりとしたテンポ感

さらに本作の演出面での特筆すべき点は、簡単には物語を先に進めない、その抑制の効いた展開方法だ。大仰な効果音や衝撃的なシーンに頼ることなく、日常を過ごしながらふと得ることのできる手がかりや、少しずつ感じ取る違和感を丁寧に積み重ねていく。特急列車のような展開ではなく、むしろ鈍行列車のようなテンポで進む物語は、謎解きの過程をより現実味のあるものにしている。この「じっとりとした」演出による没入感は、観客を自然と主人公の不安と想像の渦に引き込んでいく。

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モキュメンタリー作品「イシナガキクエを探しています」の演出でも名をさらに広めた近藤監督ならではの、現実味たっぷりの表現力に、ぜひ没入してみていただきたい。

『ミッシング・チャイルド・ビデオテープ 』は1月24日(金)より日本公開。

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作品概要

© 2025 「ミッシング・チャイルド・ビデオテープ」製作委員会

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タイトル:『ミッシング・チャイルド・ビデオテープ 』
主演:杉田雷麟
総合プロデューサー:清水崇
監督:近藤亮太
脚本:金子鈴幸
© 2025 「ミッシング・チャイルド・ビデオテープ」製作委員会
企画:KADOKAWA
製作:『ミッシング・チャイルド・ビデオテープ 』製作委員会
配給:KADOKAWA

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