映画『#彼女が死んだ』が1月10日(金)日本公開となる。
覗き見る者と見られる者の奇妙な邂逅
他人の生活を覗き見ることに異常な執着を持つ不動産仲介士。SNSで煌びやかな日常を発信し続けるインフルエンサー。この二つの「視線」が交差するとき、そこに浮かび上がるのは、現代社会に潜む狂気の本質である。
1月10日(金)に日本公開となる韓国映画『#彼女が死んだ』は、不動産公認仲介士のク・ジョンテ(ピョン・ヨハン)を主人公に据えた異色のサスペンス作品である。彼には奇妙な趣味があった。顧客から預かった鍵を使って、その家に無断で侵入し、他人の生活を盗み見るのである。そんな彼の目に留まったのは、ソーセージを食べながらビーガンサラダの写真を投稿するという矛盾に満ちた行動を取るSNSインフルエンサー、ハン・ソラ(シン・ヘソン)だった。

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観察の対象として彼女を選んだジョンテだが、ある日、彼女の家に侵入した際、ソファーで息絶えている彼女の遺体を発見する。さらに追い打ちをかけるように、彼の家宅侵入の事実を知る何者かからの脅迫が始まり、事件を担当する強力班のオ・ヨンジュ刑事(イエル)の捜査の手が徐々に迫ってくる。自らの潔白を証明するため、ジョンテはハン・ソラのSNSを手掛かりに、彼女を取り巻く人々を調査していくことになる。
デジタル時代の「フォロウィング」
本作を見て真っ先に思い出させられるのは、クリストファー・ノーラン監督のデビュー作『フォロウィング』である。実際、本作の英題も“Following”であり、意図的にオマージュしていることは間違いないだろう。しかし、本作が描く「覗き見」の世界は、より現代的な様相を呈している。それは、SNSという新たな「観察」と「展示」の場を得た現代人の姿である。

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ハン・ソラに代表されるSNSインフルエンサーたちは、実態とは異なる虚飾の人生を煌びやかに発信し続ける。一方で、悲劇のヒロインを演じ、同情を誘うような投稿を繰り返すこともある。そこには、承認欲求という名の底なし沼に溺れる現代人の姿が浮かび上がる。SNSの評判一つで人生が大きく変わりうる時代において、影響力の大きな著名人たちは、常に綱渡りを強いられているのだ。
本作の特筆すべき点は、「見る/見られる」という関係性が生み出す狂気を、現代的な文脈で描き切っていることにある。従来のストーカー映画とは一線を画し、SNS時代特有の歪んだ関係性を鮮やかに描写している。
予測不能な展開が描き出す現代の不信感

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物語の展開は、比較的オーソドックスなサスペンスの体裁を取りながらも、予測を裏切り続ける。登場人物たちの異常性と、なぜか“ザル”すぎる隙だらけな警察の対応が、物語に予測不能性をもたらしている。観客は常に「何かがおかしい」と感じながらも、その正体を容易には掴めない。この絶妙な緊張感の維持こそが、本作最大の魅力と言えるだろう。
現代社会において、私たちは常に誰かを見つめ、また誰かに見つめられている。その視線の交錯が生み出す歪みと狂気を描く本作は、デジタル時代を生きる私たちへの警鐘でもある。すべてを信じ、すべてを信じさせるか、はたまたすべてを疑い、すべてを疑われるか─そんな現代ならではの浮世離れした感覚が、今作の随所から滲み出していた。
『#彼女が死んだ』は1月10日(金)日本公開。

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