映画『ザ・ランナー』(2026)を紹介&解説。
映画『ザ・ランナー』(2026)概要
映画『ザ・ランナー』(2026)は、ケヴィン・マクドナルド監督(『ラストキング・オブ・スコットランド』)が、誘拐された息子を救うためロンドンを走り続ける女性弁護士を描いた心理アクション・スリラー。
日課のランニング中に謎の人物から電話を受けた弁護士マイア・マーテンが、「走り続けろ」「命令に従え」「誰にも話すな」という指示のもと、息子の命を懸けた任務へ追い込まれていく。主演はガル・ガドット。共演にダミアン・ルイス、ローリー・ウィルモット、アルフレッド・イーノックら。
作品情報
| 日本版タイトル | 『ザ・ランナー』 |
|---|---|
| 原題 | The Runner |
| 製作年 | 2026年 |
| 本国公開日 | 2026年9月2日(Prime Video配信) |
| 日本公開日 | 2026年9月2日(Prime Video配信) |
| ジャンル | アクション/スリラー |
| 製作国 | イギリス |
| 原作 | 無 |
| 上映時間 | 85分 |
| 監督 | ケヴィン・マクドナルド |
|---|---|
| 脚本 | マーク・ギブソン |
| 製作 | デヴィッド・コス |
| 製作総指揮 | ジェーン・ロバートソン/エイミー・パケット/エリオット・クラインバーグ/クレア・ウィラッツ |
| 撮影 | アンソニー・ドッド・マントル |
| 編集 | サム・ライス=エドワーズ |
| 作曲 | トム・ホッジ |
| 出演 | ガル・ガドット/ダミアン・ルイス/ローリー・ウィルモット/アルフレッド・イーノック |
| 製作 | ロックウッド・ピクチャーズ/Amazon MGMスタジオ |
| 配給 | Prime Video |
あらすじ
ロンドンの法曹界で活躍する敏腕弁護士マイア。息子ノアを学校へ送り届けた彼女は、いつものように街を走り始める。
その途中、見知らぬ人物から電話がかかってくる。電話の主はノアを誘拐したと告げ、息子を生きて返してほしければ、走り続けながらすべての命令に従うよう要求する。立ち止まることも、警察や周囲の人間へ助けを求めることも許されない。
息子の命を握られたマイアは、ロンドンの公園、道路、地下鉄を駆け抜けながら、電話の主が与える危険な任務を遂行していく。刻一刻と制限時間が迫る中、彼女は息子を救い、自らも生き残る方法を探し始める。
主な登場人物(キャスト)
マイア・マーテン(ガル・ガドット):ロンドンで活躍する聡明な弁護士。ランニング中に息子を誘拐したという電話を受け、謎の人物から与えられる命令に従いながら街を走り続ける。
コーラー(ダミアン・ルイス):マイアへ電話をかけ、息子を人質に取ったと告げる謎の人物。マイアの行動を監視しながら、次々と危険な命令を与える。
ノア・マーテン(ローリー・ウィルモット):マイアの息子。持病のためインスリンを必要としており、その生命維持装置を犯人側に掌握される。
テッド(アルフレッド・イーノック):マイアと同じ法律関係の仕事に携わる同僚。マイアの身近にいる人物のひとりだが、彼女が異常な事態へ巻き込まれていることを知らない。
作品の魅力解説・レビュー
ガル・ガドットをひたすら走らせる映画
本作から何より明確に伝わってくるのは、「ワンダーウーマンことガル・ガドットを走らせたい」という、きわめて単純な願望めいたコンセプトだ。
主人公マイアは、ロンドンの公園から幹線道路、駅の構内、地下鉄のホームへと、ほとんど足を止めることなく走り続ける。長身の彼女が全身を使って疾走する姿には紛れもない華があり、アクションスターとしての身体性を前面に押し出した映像は、理屈抜きに見応えがある。
ガル・ガドットによく似合う“強い母”
電話の向こうから指示を飛ばす犯人に翻弄されながらも、マイアは息子を救い出すという一点で思考を止めない。疲労と恐怖に苛まれながら走り、断片的に与えられる情報を頭の中で組み立て、反撃の糸口を探り続ける。
堂々たる存在感を備えたガル・ガドットには、追い詰められてなお折れない母親という役どころがよく似合う。物語や台詞がキャラクターを十分に掘り下げているとは言い難いが、それでも画面が崩れないのは、ひとえに主演俳優のスター性ゆえだろう。
見覚えのある誘拐タイムリミット・スリラー
息子を人質に取られた主人公が、電話越しに響く声の命令に従い、制限時間内で危険な任務をこなしていく——物語の骨格はこの上なく王道であり、同種の誘拐スリラーやタイムリミット・サスペンスに親しんだ観客には、既視感の強いものと映るかもしれない。
ロンドンを延々と走り続けるという一点こそが映像に運動量をもたらしてはいるものの、設定そのものに目新しさは乏しい。85分という切り詰めた上映時間を一息に駆け抜けるためそこまで退屈する暇はないが、その一方で、強く記憶に刻まれるほどの独自性もまた見当たらない。
警察の対応などでツッコミ脳になってしまう
マイアが街なかで不審な挙動を繰り返しても、追跡も包囲も十分に機能しないなど、警察や周囲の人々の反応にはどうにも詰めの甘さが残る。おかげで緊迫した状況に没入するより先に、「なぜここで取り押さえられないのか」「この行動が見過ごされてよいのか」と、つい粗探しに意識が向いてしまう。
もっとも、こうした疑問の一部には、終盤できちんと理由や明かされるものもある。勢い任せに押し切るのではなく、前半に積まれた行動を後半で回収する周到さは備わっているのだが、それでも作品全体に漂う既視感を覆すには至っていないように思う。
キャストとロンドンの街並みで成立する小品
電話越しにマイアを追い詰めるダミアン・ルイスの声には確かな威圧感が宿り、その姿をほとんど画面に晒さないまま、敵役としての存在感を最後まで手放さない。アンソニー・ドッド・マントルの撮影もまた、ロンドンの雑踏や地下鉄を、出口の見えない迷路めいた追跡の舞台へと変貌させている。
物語そのものはありきたりで、人物描写にも厚みは望めない。それでもなお、走り続けるガル・ガドット、電話口から命令を下すダミアン・ルイス、そして実在するロンドンの街並み——これらの素材が持つ力によって、本作は手軽に観終えられる配信向けスリラーとして、どうにか画面を成立させている。
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ライター/エディター/映画インスタグラマー。2019年に早稲田大学法学部を卒業。東京都職員として国際業務等を経験後、ライター業に転身。各種SNS(Instagram・X)やYouTubeチャンネル「cula 見て聞く映画マガジン(旧:アルテミシネマ)」においても映画や海外ドラマ、音楽といったカルチャーに関する情報レビューを発信している。
