映画『ソー:ラブ&サンダー』(2022)を紹介&解説。
映画『ソー:ラブ&サンダー』概要
映画『ソー:ラブ&サンダー』は、タイカ・ワイティティ監督(『マイティ・ソー バトルロイヤル』『ジョジョ・ラビット』)が、雷神ソーの新たな戦いと“愛”を描くMCUのアクション・アドベンチャー。『アベンジャーズ/エンドゲーム』後、自分自身の生き方を探していたソーの前に、神々の抹殺を狙う“神殺し”ゴアが出現。さらに元恋人ジェーン・フォスターがムジョルニアを手に“マイティ・ソー”として姿を現す。主演はクリス・ヘムズワース、共演にナタリー・ポートマン、クリスチャン・ベイル、テッサ・トンプソン、ラッセル・クロウら。
作品情報
| 日本版タイトル | 『ソー:ラブ&サンダー』 |
|---|---|
| 原題 | Thor: Love and Thunder |
| 製作年 | 2022年 |
| 本国公開日 | 2022年7月8日 |
| 日本公開日 | 2022年7月8日 |
| ジャンル | アクション/ヒーロー/ファンタジー/アドベンチャー/コメディ/恋愛 |
| 製作国 | アメリカ |
| 原作 | マーベル・コミックス(コミック) |
| 上映時間 | 119分 |
| 監督 | タイカ・ワイティティ |
|---|---|
| 脚本 | タイカ・ワイティティ/ジェニファー・ケイティン・ロビンソン |
| 製作 | ケヴィン・ファイギ/ブラッド・ヴィンダーバウム |
| 製作総指揮 | ルイス・デスポジート/ヴィクトリア・アロンソ/ブライアン・チャペック/トッド・ハロウェル/クリス・ヘムズワース |
| 撮影 | バリー・イドワーヌ |
| 編集 | マシュー・シュミット/ティム・ロシュ/ジェニファー・ヴェッキアレッロ/ピーター・S・エリオット |
| 作曲 | マイケル・ジアッキーノ/ナミ・メルマド |
| 出演 | クリス・ヘムズワース/ナタリー・ポートマン/クリスチャン・ベイル/テッサ・トンプソン/タイカ・ワイティティ/ラッセル・クロウ/ジェイミー・アレクサンダー/クリス・プラット/デイヴ・バウティスタ/カレン・ギラン/ポム・クレメンティエフ |
| 製作 | マーベル・スタジオ |
| 配給 | ウォルト・ディズニー・スタジオ |
あらすじ
サノスとの戦いを終え、多くの大切な人々を失った雷神ソー。ガーディアンズ・オブ・ギャラクシーと宇宙を旅しながら戦い続けていた彼は、やがてヒーローとして戦うことから距離を置き、自分自身が本当に求めているものを探し始める。
そんな中、宇宙各地で神々が殺害される事件が発生。犯人は“神殺し”の異名を持ち、すべての神を滅ぼそうとするゴアだった。ニュー・アスガルドも標的となり、ソーは王ヴァルキリーやコーグとともに戦いへ戻る。
さらにソーの前に現れたのは、かつての恋人ジェーン・フォスター。しかも彼女は砕けたはずのムジョルニアに選ばれ、“マイティ・ソー”として雷神の力を手にしていた。再会した2人はゴアを止めるため、神々の世界を巡る宇宙規模の冒険へ旅立つ。
主な登場人物(キャスト)
ソー(クリス・ヘムズワース):雷神として数々の戦いを経験してきたアスガルド人。サノスとの戦いを経てガーディアンズと宇宙を旅しながら、自分がこれから何のために生きるのかを探している。
ジェーン・フォスター/マイティ・ソー(ナタリー・ポートマン):ソーの元恋人で優秀な天体物理学者。かつて破壊されたムジョルニアに選ばれ、新たな雷神“マイティ・ソー”としてソーの前に姿を現す。
ゴア(クリスチャン・ベイル):神々を憎み、すべての神を抹殺しようとする“神殺し”。強大な力を持つネクロソードを操り、宇宙各地の神を標的にしている。
ヴァルキリー(テッサ・トンプソン):ニュー・アスガルドを統治する王。戦士としての圧倒的な能力を持ち、再び現れた脅威に対してソーたちと共闘する。
コーグ(タイカ・ワイティティ):ソーの親友であるクロナン人。独特のゆるい語り口とマイペースな性格を持ち、今回もソーの冒険に同行する。
ゼウス(ラッセル・クロウ):多くの神々が集うオムニポテンス・シティに君臨する強大な神。ゴアとの戦いに協力を求めて訪れたソーたちと対面する。
作品の魅力解説・レビュー
笑って、戦って、愛を叫ぶ。驚くほどまっすぐなヒーロー映画
『ソー:ラブ&サンダー』を端的に表現するなら、最高に笑えて、感動できて、ヒーローの活躍に興奮できる、非常にまっすぐな一本だ。
フェーズ4のMCUでは、『エターナルズ』が群像劇と神話的SFへ踏み込み、『ムーンナイト』が心理スリラー的な構造を採用し、『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』や『ドクター・ストレンジ/マルチバース・オブ・マッドネス』もサプライズやマルチバース、ホラー演出といった特殊な刺激を前面に押し出していた。
それぞれ異なる魅力を持つ一方、「アメコミヒーロー映画ならではの王道の高揚感」をストレートに求めていた人にとって、本作の単純明快さはむしろ大きな武器になる。ヒーローが現れ、強大な敵と戦い、音楽が鳴り、仲間を守り、愛する者のために立ち上がる。奇をてらうことよりも、それを全力でやり切る映画だ。
タイトル通り“愛”を正面から描くソーの物語
タイトルに「LOVE」と掲げている通り、本作は照れずに愛そのものを物語の中心へ置いている。
長いMCUの歴史の中でソーは、母、父、弟、故郷、仲間など多くのものを失ってきた。圧倒的な力を持つヒーローでありながら、一人の男としては喪失を重ね続けてきた人物でもある。
『ラブ&サンダー』では、そんなソーが「誰かを失うのが怖いから愛さない」という方向へ逃げるのではなく、傷つく可能性も含めて再び誰かを愛せるのかが問われていく。
ジェーンとの関係も単なる恋愛要素では終わらない。マイティ・ソーとなったジェーン自身にも戦う理由があり、ふたりがそれぞれヒーローとして何を選択するかが物語を動かす。
北欧神話由来の雷神を主人公にしているからこそ成立する、科学的な理屈から自由な神々や武具の世界も楽しく、「ヒーロー」と「神話」と「恋愛」を真正面から混ぜ合わせた独自の味わいがある。
クリスチャン・ベイルのゴアが、映画の空気を一変させる
明るくカラフルでコメディ色の強い本作に、突然別ジャンルの映画から紛れ込んできたような恐怖を持ち込むのがクリスチャン・ベイル演じるゴア。
白い肌、痩せた身体、静かな話し方、不自然な笑顔。軽快なソーたちの場面とは正反対の温度を持ち、登場するだけで画面の空気が変わる。
ベイル自身はゴアを演じるにあたり、F・W・ムルナウ監督のサイレントホラー『吸血鬼ノスフェラトゥ』(1922)や、Aphex Twin「Come to Daddy」のミュージックビデオを具体的な参考として挙げている。その影響を知ると、コミック映画のヴィランでありながらホラー映画の怪物のようにも見える異質な身体表現にも納得がいく。
底が見えない不気味さを漂わせながら、ゴア自身にも神々を憎むに至った理由がある。コミカルな場面が多い映画だからこそ、ベイルの演技が生み出す闇が強烈なコントラストになっている。
クリスチャン・ベイルの演技を見るためだけでも再見したくなるほど、強く印象を残すヴィランだ。
ジェーン、ヴァルキリー、コーグ、ゼウスまでキャラクターの見せ場が豊富
ゴア以外にもキャラクターの魅力は多い。
ナタリー・ポートマンは肉体を鍛え上げ、ジェーン・フォスターをこれまでとはまったく異なる“マイティ・ソー”として成立させた。ムジョルニアを操る戦闘だけでなく、ジェーン自身が抱える事情と、それでもヒーローとして戦う姿が本作の感情的な核になる。
ニュー・アスガルドを任されたヴァルキリー、安定したゆるさで作品の空気を支えるコーグ、大御所ラッセル・クロウが豪快に演じるゼウスなど、脇を固めるキャラクターにも強烈な個性がある。
冒頭ではガーディアンズ・オブ・ギャラクシーとの共演も描かれ、作品世界が宇宙規模へ広がっていく。そこへガンズ・アンド・ローゼズをはじめとするロックナンバーが重なり、本作特有の派手で馬鹿馬鹿しく、それでいて熱いテンションを作り出している。
コメディのくどさと単純さは弱点。それでも王道の興奮は消えない
一方で、手放しにすべてを褒められる作品でもない。
タイカ・ワイティティらしいユーモアは声を出して笑える場面も多いが、シリアスな感情へ集中したい場面でも冗談が入り、コメディが少しくどく感じられる瞬間もある。
キャラクターや設定の中には、もう少し説明や見せ場が欲しい部分も存在する。物語自体も複雑な構成ではなく、理屈を一つひとつ検証するよりも「この映画はこのテンションで突っ走る」と早い段階で受け入れた方が圧倒的に楽しみやすい。
『ムーンナイト』のような一癖ある作品や、MCUならではの複雑な仕掛けを期待すると、その単純さが物足りなく見える可能性もあるが、MCUのすべての作品が複雑である必要もない。
頭を空っぽにして笑い、ヒーローの活躍に興奮し、ロックに乗り、最後には愛の物語で感情を動かされる。そんな王道のアメコミヒーロー映画がたまに存在すること自体が、このシリーズの幅でもある。
細かなツッコミどころを抱えながらも、それを押し流すほどの勢いと楽しさを持つ。『ソー:ラブ&サンダー』は、良い意味でも悪い意味でも、とことん単純で、とことんまっすぐなヒーロー映画だ。
簡易ストーリー解説(ネタバレ)
起|神殺しゴアと、ジェーンとの再会
愛する娘を失い、神々に見捨てられた男ゴアは、神殺しの剣ネクロソードを手にし、「すべての神を殺す」と誓う。
一方、サノスとの戦いを経てガーディアンズ・オブ・ギャラクシーと宇宙を旅していたソーは、生きる目的を見失いつつあった。そんな中、故郷ニュー・アスガルドがゴアに襲われたと知り帰還。そこで、かつての恋人ジェーン・フォスターと再会する。
ジェーンはステージ4のがんを患っており、治療が効かないなか、壊れたムジョルニアに呼び寄せられて“マイティ・ソー”へと変身していた。しかしムジョルニアの力は病気を治すものではなく、むしろジェーンの身体が回復する力を奪い、命を縮めていた。
承①|誘拐された子どもたちを救う旅
ゴアはニュー・アスガルドを襲撃し、子どもたちを誘拐。ソー、ジェーン、ヴァルキリー、コーグは彼らを救うため、神々が集まるオムニポテンス・シティへ向かう。
ソーは神々の王ゼウスに協力を求めるが、ゼウスはゴアとの戦いを恐れて助けようとしない。失望したソーたちはゼウスと対立し、彼の武器サンダーボルトを奪って脱出する。
旅を続ける中、かつて別れてしまったソーとジェーンは再び互いへの気持ちを確かめていく。
承②|ジェーンの余命とゴアの本当の目的
ゴアの目的は、宇宙の中心に存在する「永遠(エタニティ)」へ到達し、“すべての神を消してほしい”という願いを叶えることだった。そのための鍵として、ソーの武器ストームブレイカーを狙っていた。
ソーたちはゴアと戦うものの、ヴァルキリーは重傷を負い、ストームブレイカーも奪われてしまう。
さらにソーは、ジェーンのがんが末期状態にあり、再びムジョルニアを使えば命を落としかねないと知る。ソーはジェーンに戦うことをやめてほしいと頼み、「残された時間を一緒に過ごしたい」と伝える。そして一人でゴアとの最終決戦へ向かう。
転|命を懸けて戦うジェーン
ゴアのもとで捕らわれていた子どもたちも戦いに巻き込まれる。ソーは一時的に自らの力を子どもたちへ分け与え、彼らとともにゴアの怪物たちへ立ち向かう。
しかしソーが追い詰められたそのとき、ジェーンが病院を抜け出して参戦。自分の命が尽きることを覚悟しながらムジョルニアを振るい、ゴアのネクロソードを破壊することに成功する。
それでもゴアはついにエタニティへ到達。神々を消し去る願いを叶えられる状況になる。
結|復讐ではなく愛を選ぶ
ソーはゴアを力ずくで止めるのではなく、死にゆくジェーンのもとへ戻る。そしてゴアに、本当に望んでいるのは神々への復讐ではなく、亡くなった娘を取り戻すことではないのかと問いかける。
ゴアは最後に復讐ではなく愛を選び、願いによって娘ラブを蘇らせる。一方、力を使い果たしたジェーンはソーに愛を伝え、彼の腕の中で静かに死亡する。
ゴア自身もネクロソードの影響で死を迎え、ソーに娘を託す。
その後、ソーはラブを自分の娘として育てながら、二人で宇宙の人々を救うヒーローとして活動するようになる。“ラブ”と“サンダー”という新たな家族が誕生する。
そして死後のジェーンはヴァルハラへ迎えられ、亡きヘイムダルと再会する。
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ライター/エディター/映画インスタグラマー。2019年に早稲田大学法学部を卒業。東京都職員として国際業務等を経験後、ライター業に転身。各種SNS(Instagram・X)やYouTubeチャンネル「cula 見て聞く映画マガジン(旧:アルテミシネマ)」においても映画や海外ドラマ、音楽といったカルチャーに関する情報レビューを発信している。
