映画『ザ・ゴールドディガーズ』(1983)を紹介&解説。
映画『ザ・ゴールドディガーズ』概要
映画『ザ・ゴールドディガーズ』は、後に『オルランド』『タンゴ・レッスン』などを手がけるイギリスのサリー・ポッターによる長編監督デビュー作。
銀行でデータ入力係として働きながら「金」と権力の関係を探究する黒人女性セレステと、自らがスターとして消費される存在であることを見つめ直し、失われた記憶を追う女優ルビー。二人の女性の探索を通して、資本主義、女性の身体、映画スターという商品、男性中心社会の権力構造を実験的な映像表現で考察するフェミニズム映画。
主演はジュリー・クリスティとコレット・ラフォン。撮影はシャンタル・アケルマン監督『ジャンヌ・ディエルマン ブリュッセル1080、コメルス河畔通り23番地』でも知られるバベット・マンゴルトが担当した。
作品情報
| 日本版タイトル | 『ザ・ゴールドディガーズ』 |
|---|---|
| 原題 | The Gold Diggers |
| 製作年 | 1983年 |
| 本国公開日 | 1983年11月28日(ロンドン映画祭初上映) |
| 日本公開日 | 2026年8月22日 |
| ジャンル | ドラマ/音楽 |
| 製作国 | イギリス |
| 原作 | 無 |
| 上映時間 | 89分 |
| 監督・編集 | サリー・ポッター |
|---|---|
| 脚本 | リンジー・クーパー/ローズ・イングリッシュ/サリー・ポッター |
| 製作 | ニタ・エイミー/ドナ・グレイ |
| 撮影 | バベット・マンゴルト |
| 作曲 | リンジー・クーパー |
| 出演 | ジュリー・クリスティ/コレット・ラフォン/ヒラリー・ウェストレイク/デヴィッド・ゲイル/トム・オズボーン/ジャッキー・ランズリー/ロル・コックスヒル ほか |
| 製作 | BFI Production Board/Channel Four |
| 配給 | BFI(イギリス)/プンクテ(日本) |
あらすじ
ロンドンの金融街シティにある銀行でデータ入力係として働くフランス人女性セレステは、ただ数字を移動させるだけの日々の仕事に疑問を抱き始める。やがて彼女は、世界で流通する「金」と、その背後に存在する権力の仕組みに興味を持つ。
一方、スター女優ルビーは、自分自身の幼少期や過去の記憶を探しながら、スクリーン上で美しい偶像として消費される「スター」という存在そのものを見つめ直していた。
異なるものを追い求めていた二人の探索は次第に重なり、男性による経済的な権力争いと、社会が作り上げてきた理想的な女性像の間にある関係へと近づいていく。
主な登場人物(キャスト)
ルビー(ジュリー・クリスティ):著名なスター女優。失われた幼少期の記憶と自らの歴史を追いながら、映画や社会の中で「美しい女性スター」として偶像化される自分自身について考えていく。
セレステ(コレット・ラフォン):ロンドンの銀行でコンピューターへのデータ入力業務に従事するフランス人女性。単調な労働への疑問から、金と権力、経済の仕組みを調べ始める。
ルビーの母(ヒラリー・ウェストレイク):ルビーの過去と記憶をめぐる探索の中に現れる母親。
専門家(デヴィッド・ゲイル):作中で「Expert」として登場する人物。セレステたちが探ろうとする経済や制度の世界を構成する男性の一人。
作品の魅力解説
「金」と「女性スター」を同じ“交換されるもの”として見る大胆な構造
セレステが調べるのは、資本主義社会を動かす「金」。一方でルビーが向き合うのは、映画産業の中で商品化される「スター女優」という自分自身だ。
一見まったく異なる二つのテーマを並行させることで、本作は金銭だけでなく、女性の美しさやイメージもまた社会の中で価値を与えられ、交換され、消費されるものではないかと問いかける。
フェミニズム映画と実験映画が交差したサリー・ポッターの出発点
本作は一般的なドラマのように人物の感情や物語を一直線に追う作品ではない。台詞、ダンス、音楽、象徴的な場面、映画史への引用などを組み合わせながら、観客自身に映像の意味を考えさせる「カウンター・シネマ」の性格を持っている。
そのため意図的に抽象的で距離を感じさせる場面も多いが、後に独創的な映画を生み出していくサリー・ポッターの原点を確認できる一本でもある。
バベット・マンゴルトによるモノクロ映像
撮影を担当したのは、シャンタル・アケルマン作品などでも知られるバベット・マンゴルト。
高いコントラストを持つモノクロ映像や、アイスランドで撮影された雪と氷の風景は、物語を現実から少し切り離した寓話的な世界へ変えている。D・W・グリフィス作品や1930年代のハリウッド・ミュージカルなど、映画史そのものへの参照も随所に組み込まれている。
作品のテーマを製作現場でも実践した映画
『ザ・ゴールドディガーズ』は女性による映画製作のあり方そのものを実践しようとした作品でもあり、女性スタッフによるクルーで製作されたことで知られる。
さらにスタッフとキャストの報酬を同額にするなど、作中で扱う経済的・社会的な不平等への問題意識を、映画を作る現場にも持ち込んだ点は本作を語るうえで重要となる。
