映画『愛しい人』(2026)を紹介&解説。
映画『愛しい人』概要
映画『愛しい人』は、『理想郷』(2022)で高い評価を受けたロドリゴ・ソロゴイェン監督が、長年疎遠だった映画監督の父親と女優の娘の再会を描くスペイン・フランス合作の人間ドラマ。過去に暴力的な振る舞いや放埒な生活で知られた著名な映画監督が、自身の新作に娘を起用したことから、ふたりの間に積み重なってきた傷や葛藤が再び浮かび上がる。主演はハビエル・バルデム、共演にビクトリア・ルエンゴ、マリナ・フォイス、ラウル・アレバロら。2026年の第79回カンヌ国際映画祭コンペティション部門に出品され、第39回東京国際映画祭でも上映される。
作品情報
| 日本版タイトル | 『愛しい人』 |
|---|---|
| 原題 | El ser querido |
| 英題 | The Beloved |
| 製作年 | 2026年 |
| 本国公開日 | 2026年8月26日(スペイン)/2026年5月16日(カンヌ国際映画祭で初上映) |
| 日本公開日 | 一般公開未定(2026年10月31日、東京国際映画祭で日本初上映) |
| ジャンル | ドラマ |
| 製作国 | スペイン/フランス |
| 原作 | 無 |
| 上映時間 | 135分 |
| 監督 | ロドリゴ・ソロゴイェン |
|---|---|
| 脚本 | ロドリゴ・ソロゴイェン/イサベル・ペーニャ |
| 製作 | ナチョ・ラビージャ/エドゥアルド・ビジャヌエバ |
| 製作総指揮 | ナチョ・ラビージャ/エドゥアルド・ビジャヌエバ/クララ・ラゴ/ハビエル・バルデム |
| 撮影 | アレックス・デ・パブロ |
| 編集 | アルベルト・デル・カンポ |
| 作曲 | オリヴィエ・アルソン |
| 出演 | ハビエル・バルデム/ビクトリア・ルエンゴ/マリナ・フォイス/ラウル・アレバロ/メリナ・マシューズ/ムラド・ウアニ/ラウル・プリエト |
| 製作 | Movistar Plus+/Caballo Films/El Ser Querido AIE/Le Pacte |
| 配給 | A Contracorriente Films(スペイン)/Le Pacte(フランス)/日本未定(26年10月時点) |
あらすじ
スペイン。エステバン・マルティネスは、数々の名作を世に送り出してきた著名な映画監督。しかし、その名声の裏には暴力や行き過ぎた振る舞いに彩られた過去があった。
ある日、エステバンは長年疎遠になっていた娘エミリアに、自身の新作映画への出演を持ちかける。エミリアは女優として活動しているものの、思うような成功を収められずにいた。
父親と娘は13年ぶりに再会し、映画の撮影現場で時間を共にすることになる。仕事を通してふたりの距離は少しずつ縮まっていくが、それは同時に、互いが長く避け続けてきた過去の傷を呼び起こすことでもあった。
親子としての関係と監督・俳優としての関係が複雑に絡み合うなか、ふたりは決して消えることのない記憶や感情に向き合っていく。
主な登場人物(キャスト)
エステバン・マルティネス(ハビエル・バルデム):映画界で高い名声を築いた著名な監督。暴力的な言動や奔放な過去を持つ。長年疎遠だった娘エミリアを自身の新作映画に起用し、親子の関係を再び築こうとする。
エミリア(ビクトリア・ルエンゴ):エステバンの娘で、女優として活動する女性。思うような成功を収められずにいるなか、父親から新作への出演を提案される。撮影を通して、幼少期から抱え続けてきた複雑な感情と向き合うことになる。
マリナ(マリナ・フォイス):エステバンやエミリアを取り巻く人物のひとり。映画の撮影と親子関係が交錯する物語に登場する。
セサル(ラウル・アレバロ):エステバンの新作映画をめぐる物語に登場する人物。
作品の魅力解説
映画製作を舞台に描く、複雑な父娘の関係
『愛しい人』の中心にあるのは、長年疎遠だった父親と娘の再会という普遍的な題材だ。しかし本作は、その再会の舞台を映画の撮影現場に設定することで、家族の問題と創作活動における権力関係を結びつけている。
映画監督として成功した父親と、俳優としての成功を望む娘。エステバンがエミリアに出演を持ちかける行為には、父親としての愛情だけでなく、監督としての影響力も存在する。
親子として近づくことと、仕事上の関係を築くことは必ずしも同じではない。そうした複雑さを通して、愛情と支配、承認への欲求が入り交じる人間関係を描き出す。
ハビエル・バルデムとビクトリア・ルエンゴの演技対決
本作の大きな見どころとなるのが、エステバンを演じるハビエル・バルデムと、エミリアを演じるビクトリア・ルエンゴの共演だ。
バルデムが演じるのは、圧倒的な名声と才能を持ちながら、私生活では深い問題を抱える映画監督。一方、ルエンゴ演じるエミリアは、父親からの承認を望む気持ちと、過去への怒りやわだかまりを抱え続けている。
ふたりが交わす会話や撮影現場での衝突は、親子の感情的な対立にとどまらず、芸術家としての自尊心や葛藤を浮かび上がらせる。
『理想郷』のロドリゴ・ソロゴイェンが再び描く心理的緊張
監督のロドリゴ・ソロゴイェンは、スペインの農村を舞台に人間同士の対立が激化する様子を描いた『理想郷』で、第35回東京国際映画祭の東京グランプリ、最優秀監督賞、最優秀男優賞を受賞した。
本作では、共同脚本のイサベル・ペーニャをはじめ、撮影のアレックス・デ・パブロ、編集のアルベルト・デル・カンポ、音楽のオリヴィエ・アルソンら、過去作でも協働してきたスタッフが再集結。
家族という親密な関係の内部に潜む緊張や、創作の現場における権力の問題を扱いながら、人間同士が理解し合うことの難しさを掘り下げている。
