『スマイル』(2022)とはどんな映画?あらすじ・キャスト・魅力まとめ

映画『スマイル』(2022)を紹介&解説。


映画『スマイル』概要

映画『スマイル』(SMILE)は、患者の衝撃的な死を目撃した精神科医が、不気味な笑顔を伴う怪異に追い詰められていくサイコホラー。パーカー・フィン監督が自身の短編映画『ローラは眠れない』を長編化した監督デビュー作で、トラウマや罪悪感といった心理的な題材を、超自然的な恐怖と連続するジャンプスケアによって描く。主演はソシー・ベーコン。共演にカイル・ガルナー、ジェシー・T・アッシャー、ケイトリン・ステイシーら。

作品情報

日本版タイトル 『スマイル』(ソフト版表記:『SMILE/スマイル』)
原題 Smile
製作年 2022年
本国公開日 2022年9月30日
日本公開日 2023年4月7日(デジタル配信/劇場未公開)
ジャンル ホラー/スリラー/ミステリー
製作国 アメリカ
原作 パーカー・フィン監督『ローラは眠れない』(2020・短編映画)
上映時間 115分
監督・脚本 パーカー・フィン
製作 マーティ・ボーウェン/ウィク・ゴッドフリー/アイザック・クラウスナー/ロバート・サレルノ
製作総指揮 アダム・フィッシュバック
撮影 チャーリー・サロフ
編集 エリオット・グリーンバーグ
作曲 クリストバル・タピア・デ・ヴィーア
出演 ソシー・ベーコン/カイル・ガルナー/ジェシー・T・アッシャー/ロビン・ワイガート/ケイトリン・ステイシー/カル・ペン/ロブ・モーガン
製作会社 パラマウント・プレイヤーズ/テンプル・ヒル・エンターテインメント
配給 パラマウント・ピクチャーズ

あらすじ

精神科医のローズ・コッターは、ひどく怯えた様子の患者ローラから、笑顔を浮かべる何者かに追われているという不可解な訴えを聞く。直後、ローラは異様な笑みを見せながら、ローズの目の前で命を絶ってしまう。

その日を境に、ローズの周囲では説明のつかない出来事が続発する。現実と幻覚の境界が崩れ、家族や婚約者からも精神状態を疑われる中、ローズは過去の類似事件を調べ始める。やがて彼女は、不気味な笑顔と死によって受け継がれてきた恐怖の連鎖へと行き着く。

主な登場人物(キャスト)

ローズ・コッター(ソシー・ベーコン):精神科病棟で働く精神科医。患者ローラの凄惨な死を目撃して以来、笑顔を浮かべる人々の幻影や説明不能な現象に悩まされる。自身の過去にも深い傷を抱えている。

ジョエル(カイル・ガルナー):ローズの元恋人である刑事。周囲がローズの訴えを疑う中、警察の記録を調べ、過去に発生した不可解な死との共通点を探す。

トレヴァー(ジェシー・T・アッシャー):ローズの婚約者。ローズを心配しているものの、彼女が語る超自然的な現象を受け入れられず、次第にふたりの関係にも亀裂が生じる。

マデリン・ノースコット(ロビン・ワイガート):ローズが以前から相談しているセラピスト。ローズを苦しめる出来事を、彼女が抱えてきたトラウマとの関係から理解しようとする。

ローラ・ウィーバー(ケイトリン・ステイシー):教授の自殺を目撃した後、笑顔を浮かべる存在に付きまとわれていると訴える大学院生。ローズの目の前で起こした行動が、恐怖の物語の発端となる。

モーガン・デサイ(カル・ペン):ローズが勤務する精神科病棟の上司。異常な言動が目立つようになったローズを心配し、休暇を取るよう命じる。

ロバート・タリー(ロブ・モーガン):ローズが調査の過程で存在を知る収監中の男性。過去に同様の怪異を経験しながら生き残ったとされ、恐怖の連鎖を解く重要な手がかりを握る。

作品の魅力解説

“笑顔”を恐怖へ反転させる強烈な発想

本作の最大の武器は、本来ならば安心や友好を伝えるはずの笑顔を、逃げ場のない恐怖の象徴へと反転させた設定にある。何気ない日常の中で誰かが不自然な笑みを浮かべているだけで、その人物が本物なのか、ローズにしか見えていない存在なのか分からなくなる。人間の顔という身近なものを利用しているため、鑑賞後にも他人の笑顔が妙に気になってしまうほど印象が残る。

とりわけ、冒頭でローラを演じるケイトリン・ステイシーの笑顔は強烈だ。ポスターや予告編にも使用されたその表情は、口元こそ笑っているものの、目には温度がなく、これから何かが起こることを直感させる。本編の恐怖を一枚の表情だけで伝える、本作を象徴するビジュアルとなっている。

謎への不安から主人公の決断を見守るサスペンスへ

物語が本格的に動き始めてからは、展開そのものに極端な意外性があるわけではない。呪いのような現象に巻き込まれた主人公が過去の事件を調べ、その規則性と逃れる方法を探すという構成は比較的オーソドックスである。

一方で、何が現実で何が幻覚なのか分からない序盤のミステリアスな感覚から、事象の仕組みが見え始めた後の「ローズはどのような判断を下すのか」というサスペンスへ、恐怖の性質が段階的に変化していく。設定が単純明快だからこそ状況を把握しやすく、ローズの選択に意識を集中させながら最後まで追いかけられる作品となっている。

ソシー・ベーコンが体現する孤立と心理的消耗

ソシー・ベーコンは、専門家として冷静に患者へ接していたローズが、徐々に自分の知覚を信じられなくなっていく過程を体現する。睡眠不足や恐怖によって憔悴していく表情だけでなく、医師である自分が周囲から精神状態を疑われる皮肉や、誰にも理解してもらえない孤立感まで演技に反映させている。

怪異はローズの過去に刻まれたトラウマや罪悪感へ入り込み、他人には見えない苦痛を抱える人間が、周囲からどのように扱われるのかという問題も浮かび上がらせる。ただし、心理的なテーマを前面に出しすぎるのではなく、ジャンプスケアや怪異の謎を追う娯楽性も保たれている。比較的ライトに楽しめるホラーでありながら、鑑賞後の印象はヘヴィーに残る良作である。

映画の外にまで“不気味な笑顔”を広げた宣伝

アメリカでは本編だけでなく、公開直前の宣伝方法も話題となった。パラマウントはMLBのヤンキース戦やメッツ戦など、テレビ中継で映りやすい客席に宣伝用のパフォーマーを配置。パフォーマーたちは試合を見ず、不自然な笑顔を保ったままカメラの方向を見つめ続け、その姿がSNSで拡散された。

球場に現れたのはケイトリン・ステイシー本人ではないが、ローラの強烈な笑顔を現実世界へ持ち出したような演出によって、映画を知らないスポーツファンにも異様な印象を残した。本編の核となるアイデアを説明せず、ただ“笑顔を見せる”だけで作品を宣伝する、題材と見事に結びついたバイラルキャンペーンだった。

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