映画『バイオハザードⅢ』(2007)を紹介&解説。
映画『バイオハザードⅢ』概要
映画『バイオハザードⅢ』は、ラッセル・マルケイ監督がカプコンのゲームシリーズ『バイオハザード』を原案に、T-ウイルスによって文明が崩壊し、砂漠化した世界を舞台に生存者たちの戦いを描くSFアクションホラー。実写映画『バイオハザード』シリーズ第3作にあたり、第1作を監督したポール・W・S・アンダーソンが本作では脚本・製作を担当する。主演はミラ・ジョヴォヴィッチ、共演にオデッド・フェール、アリ・ラーター、イアン・グレン、マイク・エップス、アシャンティ、スペンサー・ロックら。
作品情報
| 日本版タイトル | 『バイオハザードⅢ』 |
|---|---|
| 原題 | Resident Evil: Extinction |
| 製作年 | 2007年 |
| 本国公開日 | 2007年9月21日 |
| 日本公開日 | 2007年11月3日 |
| ジャンル | アクション/ホラー/SF |
| 製作国 | アメリカ/カナダ/ドイツ/フランス/イギリス |
| 原作 | カプコン『バイオハザード』シリーズ(ゲーム) |
| 上映時間 | 94分 |
| 監督 | ラッセル・マルケイ |
|---|---|
| 脚本 | ポール・W・S・アンダーソン |
| 製作 | ジェレミー・ボルト/ポール・W・S・アンダーソン/ロバート・クルツァー/ベルント・アイヒンガー/サミュエル・ハディダ |
| 製作総指揮 | ヴィクター・ハディダ/マーティン・モスコウィック/ケリー・ヴァン・ホーン |
| 撮影 | デヴィッド・ジョンソン |
| 編集 | ニーヴン・ハウィー |
| 作曲 | チャーリー・クロウザー |
| 出演 | ミラ・ジョヴォヴィッチ/オデッド・フェール/アリ・ラーター/イアン・グレン/マイク・エップス/アシャンティ/スペンサー・ロック/ジェイソン・オマラ/マシュー・マースデン |
| 製作 | スクリーン・ジェムズ/コンスタンティン・フィルム/デイヴィス・フィルムズ/インパクト・ピクチャーズ |
| 配給 | スクリーン・ジェムズ(米国)/ソニー・ピクチャーズ(日本) |
あらすじ
ラクーンシティでの惨劇から数年。T-ウイルスは世界中へ広がり、人類の大部分がアンデッドと化しただけでなく、地上は乾燥して砂漠のような荒廃世界へ変貌していた。
アンブレラ社の追跡から仲間を守るため、1人で旅を続けていたアリス。一方、カルロスとL.J.はクレア・レッドフィールドが率いる生存者集団に加わり、安全な場所と物資を探しながら移動を続けていた。
感染したカラスの大群に襲われた一行をアリスが救ったことで、かつての仲間たちは再会する。アリスが手に入れた情報から、感染を免れた可能性のあるアラスカを目指すことになるが、そのためには燃料や食料を確保しなければならない。一行は砂に埋もれたラスベガスへ向かう。
しかしその頃、アンブレラ社の地下施設ではアイザックス博士がアリスのクローンを大量に作り出し、本物のアリスが持つ特殊能力を再現する「アリス計画」を続けていた。
主な登場人物(キャスト)
アリス(ミラ・ジョヴォヴィッチ):T-ウイルスと特殊な形で適合し、超人的な身体能力に加えて強力な念動力まで身につけた女性。アンブレラ社の追跡から仲間を守るため単独で荒野を旅していたが、カルロスやクレアたちと合流する。
クレア・レッドフィールド(アリ・ラーター):荒廃した世界で生存者たちの車列を率いる女性リーダー。子どもを含む仲間たちの安全を最優先に考え、アリスと合流した後は安全地帯とされるアラスカを目指す。
カルロス・オリヴェイラ(オデッド・フェール):元アンブレラ社特殊部隊U.B.C.S.の傭兵で、前作でアリスとともにラクーンシティを生き延びた戦友。現在はクレアの生存者集団に加わり、豊富な戦闘経験を生かして仲間を守っている。
L.J.(マイク・エップス):前作のラクーンシティを生き延びた一般市民で、カルロスとともにクレアの一行へ参加している。軽口を絶やさないムードメーカーで、ベティとは互いに好意を寄せ合っている。
ベティ(アシャンティ):クレア率いる生存者集団で医療を担当する看護師。負傷者の手当てや子どもたちの世話を担う一方、危険な状況では自ら武器を取って戦う。
Kマート(スペンサー・ロック):クレアたちの生存者集団で暮らす10代の少女。長期間1人で生き延びた後、Kmartの店舗跡で発見されたことから“Kマート”と呼ばれている。クレアを姉のように慕い、アリスにも強い憧れを抱く。
アイザックス博士(イアン・グレン):アンブレラ社の北米地下施設で「アリス計画」を主導する科学者。T-ウイルスと適合したアリスの血液を研究し、大量のクローンを使ってその能力を再現しようとする。本作における中心的な敵役。
アルバート・ウェスカー(ジェイソン・オマラ):アンブレラ社の会長。東京から世界各地の地下施設を統括し、アイザックス博士の研究を監督する。自ら前線で戦うのではなく、アンブレラという組織の頂点に立つ人物として登場する。
登場するクリーチャー
アンデッド(Undead):いわゆるオーソドックスな“ゾンビ”にあたる感染者。人間だけでなく、犬のアンデッドも登場する。
スーパー・アンデッド(Super Undead):アイザックス博士が、アリスのクローン由来の血清をアンデッドに投与して生み出した強化個体。通常のアンデッドより俊敏で攻撃性が高く、ラスベガスでクレアたち生存者集団を襲撃する。本作を代表する新たな脅威のひとつ。
クロウ(Crow):T-ウイルスに感染したカラス。生存者たちのコンボイを大群で襲撃し、ベティをはじめ複数の犠牲者を出す。空から一斉に襲いかかるため通常のアンデッドとは異なる脅威となり、アリスが念動力を使って炎で群れを焼き払う場面は本作を代表するアクションシーンのひとつ。「クロウ」はゲームシリーズで使われる呼称で、映画本編では基本的に感染したカラスとして描かれている。
タイラント(Tyrant):スーパー・アンデッドに噛まれたアイザックス博士が、大量の抗ウイルス剤を投与したことで突然変異したクリーチャー。高い身体能力と驚異的な再生能力を持ち、地下施設でアリスと最終決戦を繰り広げる。最後はレーザー通路へ誘い込まれ、身体を切断されて死亡する。
作品の魅力解説・レビュー
荒廃した砂漠世界がシリーズの景色を一変させる
『バイオハザードⅢ』最大の個性は、これまでの2作とはまったく異なる荒廃した砂漠世界だろう。T-ウイルスによる被害はラクーンシティという局所的な災害では収まらず、地球規模の文明崩壊へ発展。砂に埋もれた道路や建物、荒涼としたラスベガスなど、ポストアポカリプス映画としてのビジュアルが前面に押し出される。
閉鎖空間や都市を中心に展開した前2作から大胆に景色を変えたことで、シリーズ3作目として明確な差別化にも成功している。本作ならではの強い魅力をひとつ挙げるなら、この乾き切った世界観と画作りだ。
超人化するアリス、さらに強まる映画独自路線
一方、ゲーム『バイオハザード』シリーズとの距離はさらに広がった印象が強い。
第1作を監督したポール・W・S・アンダーソンは本作では脚本・製作に回り、監督をラッセル・マルケイに交代。映画シリーズの主人公アリスは超人的な身体能力だけでなくテレキネシスまで本格的に使用するようになり、もはや通常のサバイバルホラーの主人公とは別次元の存在になっている。
この思い切った超人化は映画独自の方向性として面白い反面、シリーズの作風そのものがかなり変わってきたため、好みが大きく分かれる部分でもある。
それでも、アリスが無言で武器を構える瞬間や、圧倒的な戦闘能力を見せつけるカットなど、アクションヒロインとしてのミラ・ジョヴォヴィッチをクールに見せる演出には見応えがある。
カラス襲撃など、ゾンビ映画としての勢いは健在
アクションとホラーの見せ場には相変わらず勢いがある。
中でも感染したカラスの大群が生存者たちへ襲いかかるシークエンスは強烈。通常のアンデッドだけではなく、T-ウイルスによって生態系そのものが脅威へ変わったことを視覚的に示し、大量のカラス、炎、アリスの能力を組み合わせた大掛かりな見せ場へ発展する。
ラスベガスでの大量のアンデッドとの戦闘も含め、細かい物語より「次にどんな危険が襲ってくるのか」を楽しむゾンビ・アクションとしての瞬発力は十分にある。
物語は浅く、“承”が長く続くような単調さも
反面、物語そのものには物足りなさが残る。
世界がここまで変貌した大作感のある設定に対して、その世界やアンブレラ社の状況、アイザックス博士をはじめとする敵側の人物像が深く掘り下げられるわけではない。多くの設定を提示しながら、ドラマとして十分に膨らませないまま次のアクションへ進んでしまう印象がある。
構成にも強い起伏が少なく、生存者たちが移動し、危機に遭遇し、再び次の場所へ向かう展開が長く続く。体感としては起承転結の「承」をずっと見せられているような感覚もあり、派手な出来事は多いのに物語が前へ進んでいる手応えが弱い。
砂漠化した世界のビジュアルやアクションには本作だけの魅力がある一方、それを支えるドラマや設定の掘り下げが追いついていない。映画独自路線へ大きく舵を切ったシリーズ第3作として、その大胆さと粗さの両方がはっきり表れた1作だ。
ライター/エディター/映画インスタグラマー。2019年に早稲田大学法学部を卒業。東京都職員として国際業務等を経験後、ライター業に転身。各種SNS(Instagram・X)やYouTubeチャンネル「cula 見て聞く映画マガジン(旧:アルテミシネマ)」においても映画や海外ドラマ、音楽といったカルチャーに関する情報レビューを発信している。
簡易ストーリー解説(ネタバレ)
起:荒廃した世界と孤独なアリス
T-ウイルスは世界中へ広がり、地球はほぼ砂漠化。アンブレラ社はアリスの能力を再現するため大量のクローンを作り、実験を続けていた。
本物のアリスは、アンブレラに追われることで仲間を危険にさらさないよう単独で荒野を旅している。一方、カルロスとL.J.は、クレア・レッドフィールド率いる生存者集団に加わっていた。
承①:仲間との再会とアラスカへの希望
生存者たちは感染したカラスの大群に襲われ、ベティら仲間を失う。窮地に現れたアリスは念動力でカラスを一掃し、カルロスたちと再会する。
アリスはアラスカに感染を免れた地域があるという情報を持ち込み、一行はそこを目指すことを決める。
しかし、その頃L.J.はすでにゾンビに噛まれており、感染していることを仲間に隠していた。
承②:ラスベガスで壊滅、カルロスも感染
燃料や物資を求めてラスベガスへ向かった一行は、アンブレラが改良した俊敏なゾンビの大群に襲撃される。
マイキーはゾンビに殺され、チェイスも追い詰められた末にゾンビたちとともに高所から落下して死亡。さらにL.J.が完全にゾンビ化し、助けに入ったカルロスを噛んでしまう。
カルロスはL.J.を射殺するが、自身も感染したことを悟る。
一方、アリスを追っていたアイザックス博士もゾンビに噛まれる。大量の抗ウイルス薬を投与した結果、異常変異を起こし、怪物へと変貌してしまう。
転:カルロスの自己犠牲とアンブレラ施設への突入
アンブレラ地下施設へ向かうアリスたちの前には、膨大な数のゾンビが立ちはだかる。
すでに助からないと悟ったカルロスは、爆薬を積んだタンクローリーでゾンビの群れに突入し、自爆。自らを犠牲にして仲間たちの進路を切り開く。
アリスはアンブレラのヘリコプターを確保し、クレアやKマートら生存者をアラスカへ向かわせるが、自分だけは施設に残る。
地下でアリスは、自分の血液がT-ウイルス感染を治療する鍵になる可能性を知り、さらに大量に作られた自分のクローンを発見する。
結:アイザックスとの決着と“アリス軍団”
怪物化したアイザックスとアリスは地下施設で激突。戦いは、シリーズ1作目を思わせるレーザー通路へともつれ込む。
アリスはアイザックスをレーザーの罠へ誘導し、アイザックスはレーザーで切断され死亡。アリス自身も危機に陥るが、目覚めたクローンの1人に救われる。
その後、アリスは東京のアンブレラ幹部アルバート・ウェスカーへ通信し、自分と“仲間たち”が向かうと宣戦布告する。
地下では大量のアリス・クローンが次々と目覚め始めており、孤独に戦ってきたアリスが、今度は“アリス軍団”を率いてアンブレラへ反撃しようとするところで物語は終わる。
