映画『メンフィス・ベル』(1990)を紹介&解説。
映画『メンフィス・ベル』概要
映画『メンフィス・ベル』は、第二次世界大戦中に欧州で爆撃任務に従事したアメリカ陸軍航空軍のB-17F爆撃機“メンフィス・ベル”と乗員たちの実話を基に描く戦争ドラマ。24回の任務を乗り越えた10人の若者が、故郷への帰還を懸けた最後の出撃に挑む姿を描く。マイケル・ケイトン=ジョーンズが監督を務め、マシュー・モディーン、エリック・ストルツ、テイト・ドノヴァン、ビリー・ゼイン、ショーン・アスティンらが出演。実在のメンフィス・ベルを記録したウィリアム・ワイラー監督の1944年のドキュメンタリーを下敷きに、その娘キャサリン・ワイラーが製作に参加した。
作品情報
| 日本版タイトル | 『メンフィス・ベル』 |
|---|---|
| 原題 | Memphis Belle |
| 製作年 | 1990年 |
| 本国公開日 | 1990年9月7日(イギリス)/1990年10月12日(アメリカ) |
| 日本公開日 | 1991年2月8日 |
| ジャンル | 戦争/ドラマ/航空アクション |
| 製作国 | イギリス/アメリカ |
| 原作 | 無(実在のB-17F“メンフィス・ベル”とその乗員の実話、およびウィリアム・ワイラー監督のドキュメンタリー『メンフィス・ベル』(1944)を基に映画化) |
| 上映時間 | 107分 |
| 監督 | マイケル・ケイトン=ジョーンズ |
|---|---|
| 脚本 | モンテ・メリック |
| 製作 | デヴィッド・パットナム/キャサリン・ワイラー |
| 撮影 | デヴィッド・ワトキン |
| 編集 | ジム・クラーク |
| 作曲 | ジョージ・フェントン |
| 出演 | マシュー・モディーン/エリック・ストルツ/テイト・ドノヴァン/ディー・ビー・スウィーニー/ビリー・ゼイン/ショーン・アスティン/ハリー・コニック・ジュニア/リード・ダイアモンド/コートニー・ゲインズ/ニール・ジュントーリ/デヴィッド・ストラザーン/ジョン・リスゴー |
| 製作 | エニグマ・フィルムズ/ワーナー・ブラザース/ブリティッシュ・サテライト・ブロードキャスティング/フジサンケイ・コミュニケーションズ・グループ/カウンティ・ナットウェスト・ヴェンチャーズ |
| 配給 | ワーナー・ブラザース |
あらすじ
1943年、第二次世界大戦下のイギリス。アメリカ陸軍航空軍のB-17爆撃機“メンフィス・ベル”と10人の若き乗員は、24回の危険な爆撃任務から生還していた。あと1回を乗り切れば任務を終え、英雄として故郷へ帰ることができる。彼らはさまざまな思いを胸に、ドイツ・ブレーメンを目指す最後の出撃へと飛び立つ。
主な登場人物(キャスト)
デニス・ディアボーン(マシュー・モディーン):メンフィス・ベルの機長を務める若きパイロット。生真面目で責任感が強く、10人の乗員の命を背負って最後の任務に臨む。
ダニー・デイリー(エリック・ストルツ):メンフィス・ベルの無線通信士。知的で繊細な青年で、詩を愛するロマンチストとして乗員たちの中でも異なる個性を見せる。
ルーク・シンクレア(テイト・ドノヴァン):副操縦士。自信家で野心的な性格の持ち主で、自らが機長として飛ぶことを望みながらデニスを支える。
フィル・ローゼンタール(ディー・ビー・スウィーニー):航空士。最後の任務を前に死への恐怖と不吉な予感に取りつかれ、精神的に追い詰められていく。
ヴァル・コズロウスキー(ビリー・ゼイン):爆撃手。自信に満ちた振る舞いを見せる青年で、目標上空では爆弾投下の成否を左右する重要な役割を担う。
リチャード“ラスカル”ムーア(ショーン・アスティン):球形銃塔を担当する機銃手。小柄で陽気な青年で、女性にモテると自称するなど乗員たちのムードメーカー的存在。
クレイ・バズビー(ハリー・コニック・ジュニア):尾部銃手。音楽を愛する陽気な青年で、仲間たちの緊張を和らげる存在となっている。
ブルース・デリンジャー(ジョン・リスゴー):陸軍の広報担当大佐。25回の任務達成を目前にしたメンフィス・ベルの乗員を英雄として宣伝し、戦時国債の販売促進に利用しようと計画する。
作品の魅力解説
第二次世界大戦の爆撃機乗員が置かれた極限状態を、“最後の1回”という明快な設定に凝縮することで、本作のサスペンスはいっそう研ぎ澄まされている。戦場である以上、任務が命がけであることに変わりはない。だが、「ここまで生き延びてきたのに、最後の任務で死にたくない」という切実な思いは、生への執着と死への恐怖をより濃密なものへと押し上げていく。
10人それぞれの恐怖と葛藤を丁寧にすくい取ることで、本作は名機にまつわる伝説の再現にとどまらず、その機内で戦った若者たちの人間ドラマとして確かに成立している。
航空戦の映像もまた、本作の大きな見どころだ。撮影には実際に飛行可能な複数のB-17が投入され、実機による編隊飛行と空中撮影に、模型や特殊効果を組み合わせることで戦闘が再現されたという。
狭い機内での窮屈な立ち回りとメンバー同士の議論、迫力ある対空砲火、ドイツ軍戦闘機の襲撃、そして刻々と損傷を重ねていく機体——それらの積み重ねを通じて、不敗を誇るとはいえ決して安全ではなかったB-17乗員の戦いを、観る者に肌で体感させる。
さらに興味深いのが史実との距離だ。メンフィス・ベルは実在し、その乗員たちも25回の戦闘任務を達成したが、映画の10人は実在の乗員をそのまま再現した人物ではなく、物語の多くもドラマとして再構成されている。
一方、1944年にはウィリアム・ワイラーが実際の爆撃任務に同行してドキュメンタリーを制作しており、本作ではその娘キャサリン・ワイラーが製作を担当。戦時中に記録された伝説を、約半世紀後に劇映画として語り直した作品でもある。
簡易ストーリー解説(ネタバレ)
起:生還まで、あと一度
第二次世界大戦中の1943年、イギリスの米軍基地。B-17爆撃機「メンフィス・ベル」の10人は、あと一度任務を成功させれば、規定の25回を達成して故郷へ帰れるところまで来ていた。しかし、帰還した別の爆撃機が着陸直後に炎上し、乗組員全員が死亡。死を恐れる航法士フィルが「死にたくない」と取り乱すなど、最後の任務を前に乗組員たちの不安は高まっていく。
承:仲間の死を越えてブレーメンへ
メンフィス・ベルに命じられたのは、ドイツ・ブレーメンにある航空機工場の爆撃だった。生真面目な機長デニスと、自分も主導権を握りたい副操縦士ルークの間には反発もあったが、10人は故郷へ帰った後の夢を語りながら出撃する。やがてドイツ軍戦闘機の猛攻が始まり、目の前で僚機が次々と撃墜される。先導機まで失われた結果、メンフィス・ベルが編隊を率いて目標へ向かうことになる。
転:爆撃成功と絶望的な帰路
目標の工場は煙幕に覆われ、周囲には民家や学校、病院もあった。爆撃手ヴァルは無差別な投下を拒み、デニスは激しい対空砲火の中で二度目の進入を決断。工場を確認したうえで爆撃を成功させる。しかし帰路でも敵の攻撃を受け、無線士ダニーが重傷を負い、機体のエンジンも炎上する。医学部にわずか2週間しか通っていなかったヴァルは、それでも仲間に支えられながらダニーを懸命に処置。デニスも機体を急降下させて火を消し、対立していたルークを含む全員が一つになって生還を目指す。
結:満身創痍でつかんだ帰還
メンフィス・ベルは3基のエンジンと電気系統を失いながら、どうにかイギリスへ到達する。着陸装置も作動しなかったが、乗組員たちは手作業で車輪を下ろし、危うく滑走路への着陸に成功。10人は25回目の任務を生き延び、基地は歓喜に包まれる。それでも彼らは英雄としての祝杯より、担架で運ばれるダニーに付き添うことを選ぶ。反発や恐怖を抱えていた若者たちは、互いの命を預け合う本当の仲間となり、ついに故郷への帰還を勝ち取る。
ライター/エディター/映画インスタグラマー。2019年に早稲田大学法学部を卒業。東京都職員として国際業務等を経験後、ライター業に転身。各種SNS(Instagram・X)やYouTubeチャンネル「cula 見て聞く映画マガジン(旧:アルテミシネマ)」においても映画や海外ドラマ、音楽といったカルチャーに関する情報レビューを発信している。
