映画『冷たい月を抱く女』(1993)を紹介&解説。
映画『冷たい月を抱く女』概要
映画『冷たい月を抱く女』は、ハロルド・ベッカー監督(『シー・オブ・ラブ』)が手がけたサスペンス・スリラー。
大学で働くアンディと妻トレイシーのもとへ、アンディの旧友で優秀な外科医ジェッドが現れる。夫妻は自宅の一室をジェッドに貸すが、大学周辺で起きている事件とトレイシーの緊急手術をきっかけに、三人の関係は予想外の方向へ変化していく。
脚本はアーロン・ソーキンとスコット・フランク。主演はアレック・ボールドウィン、ニコール・キッドマン、ビル・プルマン。
医療ミス、夫婦関係、犯罪捜査を絡めながら人物の立場を次々と反転させていく、1990年代らしいツイスト重視のサスペンスとなっている。日本では1994年6月25日に初公開され、2025年1月3日にはリバイバル公開も行われた。
作品情報
| 日本版タイトル | 『冷たい月を抱く女』 |
|---|---|
| 原題 | Malice |
| 製作年 | 1993年 |
| 本国公開日 | 1993年10月1日 |
| 日本公開日 | 1994年6月25日 |
| ジャンル | サスペンス/ミステリー/スリラー/ドラマ |
| 製作国 | アメリカ |
| 原作 | 無 |
| 上映時間 | 107分 |
| 監督 | ハロルド・ベッカー |
|---|---|
| 脚本 | アーロン・ソーキン/スコット・フランク |
| 製作 | レイチェル・フェファー/チャールズ・B・マルベヒル/ハロルド・ベッカー |
| 製作総指揮 | マイケル・ハーシュ/パトリック・ルーバート/ピーター・ブラウン(共同製作総指揮) |
| 撮影 | ゴードン・ウィリス |
| 編集 | デヴィッド・ブレザートン |
| 作曲 | ジェリー・ゴールドスミス |
| 出演 | アレック・ボールドウィン/ニコール・キッドマン/ビル・プルマン/ベベ・ニューワース/ジョージ・C・スコット/アン・バンクロフト/ピーター・ギャラガー/グウィネス・パルトロウほか |
| 製作 | キャッスル・ロック・エンターテインメント/ニュー・ライン・シネマ |
| 配給 | コロンビア・ピクチャーズ(米国)/ヒューマックス=ギャガ(日本初公開時) |
あらすじ
ボストン郊外。大学で学長補佐を務めるアンディ・サフィアンは、妻トレイシーと古い家を改装しながら暮らしていた。
そんなアンディの前に、高校時代の同級生だった外科医ジェッド・ヒルが現れる。優秀な医師として成功しているジェッドを夫妻は自宅の一室へ迎え入れるが、傲慢なほどの自信を持つ彼の存在は、次第に夫婦の生活へ入り込んでいく。
一方、アンディの勤務する大学周辺では女性を狙った事件が相次いでおり、警察による捜査が進められていた。
やがてトレイシーが突然倒れ、ジェッドによる緊急手術を受けることになる。その手術をめぐって重大な問題が発生し、アンディ、トレイシー、ジェッドの関係は一変。医療上の判断をめぐる争いから、誰が何を隠しているのか分からない疑惑へと発展していく。
主な登場人物(キャスト)
ジェッド・ヒル(アレック・ボールドウィン):高い技術と強烈な自信を持つ外科医。アンディとは高校時代の同級生で、夫妻の家に下宿することになる。
トレイシー(ニコール・キッドマン):アンディの妻。ジェッドによる緊急手術を受けたことから、夫妻の人生を大きく揺るがす事態に巻き込まれる。
アンディ・サフィアン(ビル・プルマン):大学の学長補佐。妻トレイシーと暮らしている。旧友ジェッドとの再会や大学周辺で発生する事件をきっかけに、身近な人々への疑念を深めていく。
ダナ・ハリス(ベベ・ニューワース):大学周辺で続く事件を捜査する刑事。捜査を進める中でアンディとも関わることになる。
作品の魅力解説
観客の前提を次々と崩していくツイスト型サスペンス
『冷たい月を抱く女』は、ひとつの謎をじっくり解いていくミステリーというより、観客が状況を理解したと思ったところで新しい情報を提示し、物語の見え方を変えていくタイプのサスペンス。
大学周辺の犯罪事件、夫婦の問題、外科手術、医療訴訟と、一見別々に見える要素を次々と接続していく。
後に『ソーシャル・ネットワーク』や『スティーブ・ジョブズ』などを手がけるアーロン・ソーキンと、『マイノリティ・リポート』『LOGAN/ローガン』などのスコット・フランクが脚本を担当している点も興味深い。
アレック・ボールドウィンの傲慢な外科医が強烈
物語の序盤で強い印象を残すのが、アレック・ボールドウィン演じるジェッド。
自分の医療技術に絶対的な自信を持ち、周囲へその優越感を隠そうともしない人物として描かれる。医師としての自信がほとんど全能感へ変わっていることを示す長広舌は、本作を象徴する場面のひとつ。
一方でニコール・キッドマンとビル・プルマンを含め、物語が進むほど各人物の印象そのものが変化していくため、「最初に見えていた人物像をどこまで信用できるか」がサスペンスにつながっている。
『ゴッドファーザー』などで知られる名撮影監督ゴードン・ウィリスと、ジェリー・ゴールドスミスによる音楽というベテランスタッフの参加も作品に重厚さを与えている。
二転三転する一方、かなり強引な展開も
本作はとにかく観客を驚かせることを優先したスリラーであり、展開の密度は高い。しかしその反面、偶然や仕掛けが重なりすぎている部分もあり、人物の行動や計画の現実味については疑問が残る。
犯罪捜査、医療サスペンス、夫婦ドラマ、陰謀劇を107分へ詰め込んでいるため、リアリティを重視すると強引さが目立ちやすい。
一方、その過剰さも含めて、危険な男女、秘密、裏切り、急展開を次々と投入して観客を引っ張る1990年代サスペンスらしい作品でもある。緻密な本格ミステリーというより、二転三転する展開そのものを楽しむタイプの一本といえる。
