映画『ゴジラの逆襲』(1955)を紹介&解説。
映画『ゴジラの逆襲』概要
映画『ゴジラの逆襲』は、小田基義監督(『透明人間』)が、再び現れたゴジラと新怪獣アンギラスの襲来を描く日本のSF/特撮映画。
1954年公開の『ゴジラ』に続くシリーズ第2作。前作で東京を襲った個体とは異なるゴジラが登場し、シリーズで初めて怪獣同士の対決が描かれる。大阪を舞台にしたゴジラとアンギラスの激突に、漁業会社で働く人々の物語を組み合わせている。主演は小泉博、共演に千秋実、若山セツ子、木匠マユリ、志村喬ら。
作品情報
| 日本版タイトル | 『ゴジラの逆襲』 |
|---|---|
| 英題 | Godzilla Raids Again |
| 製作年 | 1955年 |
| 日本公開日 | 1955年4月24日 |
| ジャンル | SF/アクション |
| 製作国 | 日本 |
| 原作 | 香山滋(原作) |
| 上映時間 | 82分 |
| 監督 | 小田基義 |
|---|---|
| 脚本 | 村田武雄/日高繁明 |
| 製作 | 田中友幸 |
| 撮影 | 遠藤精一 |
| 編集 | 平一二 |
| 作曲 | 佐藤勝 |
| 特技監督 | 円谷英二 |
| 出演 | 小泉博/千秋実/若山セツ子/木匠マユリ/笠間雪雄/志村喬/清水将夫/沢村宗之助/土屋嘉男/中島春雄/手塚勝巳 |
| 製作・配給 | 東宝 |
あらすじ
大阪の海洋漁業会社で魚群探査機のパイロットを務める月岡正一は、機体の故障によって岩戸島へ不時着した同僚・小林弘治を救助するため、島へ向かう。
月岡と小林はそこで、ゴジラと巨大な四足怪獣が激しく争う光景を目撃する。山根博士の調査により、もう一体の怪獣は太古の肉食怪獣アンギラスであり、目撃されたゴジラも前作で倒された個体とは異なることが判明する。
やがて二体は海中へ姿を消し、関西方面へ接近。防衛隊は照明弾を使ってゴジラを沖へ誘導しようとするが、予期せぬ事件によって作戦は崩れ、ゴジラとアンギラスは大阪の市街地へ上陸する。
主な登場人物(キャスト)
月岡正一(小泉博):海洋漁業会社で魚群探査機を操縦するパイロット。岩戸島へ不時着した小林を救助した際、ゴジラとアンギラスの戦いを目撃する。冷静な判断力と優れた操縦技術を持ち、ゴジラの捜索や迎撃作戦にも協力する。
小林弘治(千秋実):月岡の同僚で、同じく魚群探査機のパイロット。陽気で親しみやすく、月岡とは性格が異なりながらも強い友情で結ばれている。ゴジラの行方を追うなかで重要な役割を果たす。
山路秀美(若山セツ子):海洋漁業会社の無線係で、社長・山路耕平の娘。月岡の恋人でもあり、危険な任務へ向かう彼を心配しながら通信業務を通じて支える。
井上やす子(木匠マユリ):海洋漁業会社に勤める秀美の友人。小林と親しく交流し、怪獣災害に翻弄される会社員たちの日常を形作る人物のひとり。
山路耕平(笠間雪雄):海洋漁業会社の社長で、秀美の父。ゴジラとアンギラスによって大きな被害を受けた会社を立て直すため、社員たちとともに再出発を図る。
山根恭平(志村喬):前作にも登場した古生物学者。月岡たちの証言と撮影した映像を調査し、ゴジラとアンギラスについて政府関係者へ説明する。
ゴジラ(中島春雄):前作で倒された個体とは異なる、2体目のゴジラ。アンギラスと争いながら大阪へ接近し、市街地を壊滅的な状況へ追い込む。
アンギラス(手塚勝巳):ゴジラと同時代に生息していたとされる四足歩行の巨大怪獣。背中を覆う硬い甲羅と無数の棘を持ち、獰猛な性質でゴジラに襲いかかる。
作品の魅力解説・レビュー
怪獣同士の対決という新たな見せ場
前作がゴジラという未曾有の怪獣に人間がどう立ち向かうかを描いたのに対し、本作では新怪獣アンギラスを登場させ、怪獣同士を直接戦わせている。シリーズで初めて採用されたこの対決形式は、後のゴジラ映画を象徴する要素へ発展していった。
人類対ゴジラという前作の構図を単純に繰り返さず、ゴジラとアンギラスの生存本能むき出しの争いを中心的な見せ場にしたことで、続編として新しい刺激を生み出している。
互いに噛みつき、押し倒し、建物を巻き込みながら争う姿には、洗練された格闘というより野生動物同士の喧嘩に近い荒々しさがある。二体の動きが速いため、巨大怪獣らしい重量感は薄れるものの、何をするか分からない獰猛さはよく伝わってくる。
獰猛なのにどこか愛嬌のあるアンギラス
四足歩行でゴジラの周囲を動き回るアンギラスは、巨大で危険な怪獣でありながら、どこか動物らしい愛嬌を感じさせる。短い脚でちょこまかと動き、果敢にゴジラへ飛びかかる姿は、巨大怪獣というより元気な子犬のようにも見えて可愛らしい。
背中の棘や低い姿勢によってゴジラとは明確に異なるシルエットを持ち、並んだ際にも判別しやすい。シリーズ初の対戦怪獣として、一度きりの障害物では終わらない強い個性を残している。
大阪を舞台にした怪獣災害
前作の東京から舞台を大阪へ移し、大阪湾、繁華街、大阪城などの風景を怪獣災害の現場へ変えている点も本作ならではの特徴。照明を消してゴジラを沖へ誘導しようとする灯火管制作戦には、怪獣の習性を利用して被害を防ごうとする工夫が感じられる。
しかし、人間側の不測の行動によって作戦が崩れ、暗闇の大阪が二大怪獣の戦場へ変わっていく。ゴジラとアンギラスが大阪城を巻き込みながら戦う場面は、本作を代表する特撮シーンである。
怪獣対決後に失速してしまう物語
一方で、ゴジラとアンギラスの戦いが終わった後は、物語から大きな刺激が失われる。後半にもゴジラ捜索と迎撃作戦は用意されているが、異なる能力や動きを持つ二体がぶつかり合う大阪での攻防と比べると、展開が単調に感じられる。
人間ドラマの中心となる月岡たちにも、ゴジラによって都市が壊滅した直後とは思えないほど落ち着いた雰囲気がある。大阪で甚大な被害を受けた会社が北海道へ拠点を移し、再出発しようとする流れ自体は理解できるものの、酒宴やソーラン節を楽しむ場面へ移行するまでの感情的な整理が早い。
大災害を経験した人々の喪失感、恐怖、生活再建の苦しさをもう少し掘り下げていれば、怪獣が画面にいない時間にも緊張感を維持できたはずだ。前作が被災者や犠牲者の姿を重く描いていただけに、本作の日常への戻り方には軽さが目立つ。
シリーズの方向性を広げた意欲的な続編
核や科学者の倫理を重く扱った前作と比べると、本作は怪獣同士の戦いを前面に出した娯楽作品へ方向を変えている。そのため、前作ほど強いテーマ性や社会的な重みはないが、同じ構図の二番煎じにせず、ゴジラ映画の新しい可能性を提示した功績は大きい。
怪獣対決の終了後に失速する構成や、災害後の人々の危機感が弱い点には物足りなさが残る。それでも、ゴジラとアンギラスが建物を破壊しながら争う荒々しい映像は楽しく、後のシリーズを支える“怪獣対怪獣”という形式を生み出した作品として重要な一本である。
ライター/エディター/映画インスタグラマー。2019年に早稲田大学法学部を卒業。東京都職員として国際業務等を経験後、ライター業に転身。各種SNS(Instagram・X)やYouTubeチャンネル「cula 見て聞く映画マガジン(旧:アルテミシネマ)」においても映画や海外ドラマ、音楽といったカルチャーに関する情報レビューを発信している。
