『ドクター・ストレンジ/マルチバース・オブ・マッドネス』解説|どんな映画?あらすじ・キャスト・魅力・レビュー・ネタバレまとめ

映画『ドクター・ストレンジ/マルチバース・オブ・マッドネス』(2022)を紹介&解説。


映画『ドクター・ストレンジ/マルチバース・オブ・マッドネス』概要

映画『ドクター・ストレンジ/マルチバース・オブ・マッドネス』は、サム・ライミ監督(『スパイダーマン』三部作、『死霊のはらわた』)が、無数の並行世界「マルチバース」を巡るドクター・ストレンジの戦いを描くMCUのダークファンタジー・アクション。別宇宙へ移動できる少女アメリカ・チャベスと出会ったストレンジは、彼女の能力を狙う強大な存在との戦いに巻き込まれる。主演はベネディクト・カンバーバッチ、共演にエリザベス・オルセンベネディクト・ウォンソーチー・ゴメスレイチェル・マクアダムスら。

作品情報

日本版タイトル 『ドクター・ストレンジ/マルチバース・オブ・マッドネス』
原題 Doctor Strange in the Multiverse of Madness
製作年 2022年
本国公開日 2022年5月6日
日本公開日 2022年5月4日
ジャンル アクション/ヒーローファンタジーホラー
製作国 アメリカ
原作 マーベル・コミック「ドクター・ストレンジ」ほか(コミック)
上映時間 126分
監督 サム・ライミ
脚本 マイケル・ウォルドロン
製作 ケヴィン・ファイギ
製作総指揮 ルイス・デスポジート/ヴィクトリア・アロンソ/エリック・ハウザーマン・キャロル/スコット・デリクソン/ジェイミー・クリストファー
撮影 ジョン・マシソン
編集 ボブ・ムラウスキー/ティア・ノーラン
作曲 ダニー・エルフマン
出演 ベネディクト・カンバーバッチエリザベス・オルセンキウェテル・イジョフォー/ベネディクト・ウォン/ソーチー・ゴメス/レイチェル・マクアダムス/マイケル・スタールバーグほか
製作 マーベル・スタジオ
配給 ウォルト・ディズニー・スタジオ

あらすじ

元天才外科医にして魔術師となったスティーヴン・ストレンジ。かつて愛したクリスティーン・パーマーの結婚式へ出席した彼は、ニューヨークで巨大な怪物に追われる少女アメリカ・チャベスを救出する。

アメリカには、自分で制御することはできないものの、マルチバース間を移動する唯一無二の能力があった。何者かがその力を奪おうとしていることを知ったストレンジは、ワンダ・マキシモフへ助けを求めるが、『ワンダヴィジョン』で愛する家族を失ったワンダは、禁断の魔術書ダークホールドの力へ深く取り込まれていた。

アメリカの能力をめぐる戦いによってマルチバースへ投げ出されたストレンジは、さまざまな可能性から生まれた別世界と「別の自分」を目撃していく。

主な登場人物(キャスト)

スティーヴン・ストレンジ/ドクター・ストレンジ(ベネディクト・カンバーバッチ):元天才外科医の魔術師。サノスとの戦いなどを経て世界を救ってきたが、私生活ではクリスティーンとの別れを引きずっている。

ワンダ・マキシモフ/スカーレット・ウィッチ(エリザベス・オルセン):強力な魔術を操る元アベンジャーズ。『ワンダヴィジョン』で失った息子ビリーとトミーを取り戻そうとする。

ウォン(ベネディクト・ウォン):カマー・タージを率いるソーサラー・スプリーム。ストレンジとは長年の友人で、アメリカを守る戦いへ加わる。

アメリカ・チャベス(ソーチー・ゴメス):マルチバース間に星型のポータルを開ける能力を持つ少女。唯一無二の力を狙われ、ストレンジに助けを求める。

クリスティーン・パーマー(レイチェル・マクアダムス):ストレンジがかつて愛した医師。別の男性と結婚する一方、別宇宙ではマルチバース研究者としてストレンジと出会う。

カール・モルド(キウェテル・イジョフォー):ストレンジのかつての仲間。別の宇宙では秘密結社イルミナティのメンバーとして登場する。

作品の魅力解説・レビュー

サム・ライミだから成立した「MCU×ホラー」

本作最大の特徴は、『死霊のはらわた』などでホラー映画史に名を残したサム・ライミの演出がMCUへ明確に持ち込まれていることだ。

突然現れる人物、暗闇から迫る影、歪んだ身体、死体、鏡や反射面を利用した恐怖演出、特徴的なカメラワーク、強烈な効果音。MCU作品としては異例のホラー表現が次々と登場する。

しかし完全なホラー映画へ転換したわけではない。あくまでファンタジーヒーロー映画の中へ、ホラー映画の演出技法を大量に持ち込んでいるからこそ、シリーズの娯楽性を保ちながらサム・ライミ監督作としての個性が成立している。

ダニー・エルフマンの音楽が作るダークファンタジー

サム・ライミと組んだ経験を持ち、ティム・バートン作品などでも知られるダニー・エルフマンが音楽を担当。恐怖一辺倒のホラースコアではなく、不穏さ、幻想性、大仰なヒーロー感を併せ持った音楽によって、本作を「ホラー」ではなくダークファンタジーの領域へ置いている。

特にふたりのストレンジが音符そのものを魔術として飛ばし合う戦闘は、音楽をBGMではなくアクションの構成要素へ変える大胆な場面となった。

複雑そうなマルチバースを意外なほどシンプルに描く

タイトルそのものに「マルチバース」を掲げ、多数の別宇宙が登場するため、極めて複雑な作品に見えるが、物語の基本構造は比較的分かりやすい。

別宇宙へ移動できるアメリカを守るストレンジと、その能力を求めるワンダ。この一本の追跡劇を軸にすることで、多数の世界や別バージョンの人物を登場させても、物語そのものを見失いにくい。

マルチバースという巨大な概念を、ひとりの少女を守る逃走劇へ落とし込んだことが作品の理解しやすさにつながっている。

シリーズで最も「ひとりの人間としてのストレンジ」に踏み込む

ストレンジはこれまで時間や宇宙の命運を背負って戦ってきたが、本作で問われるのはもっと個人的な問題だ。世界を救うためなら他人の犠牲まで計算に入れ、自分こそ正しい判断ができると信じてきた人物が、自分自身の幸福については理解できていない。

さまざまな宇宙のストレンジを見ることは、異なる選択をした可能性の自分自身を見ることでもある。壮大なマルチバースを利用しながら、最終的には一人の男の傲慢さ、孤独、後悔へ踏み込んでいく構成が本作のドラマを支えている。

ベネディクト・カンバーバッチの細かな演じ分け

本作では複数のドクター・ストレンジが登場し、それぞれがまったく別人というほど誇張された人物ではないからこそ、ベネディクト・カンバーバッチの演技には繊細な差異が求められる。

視線、声のトーン、姿勢、相手への接し方。わずかな違いによって「同じストレンジだが、違う人生を歩んだ人物」であることを感じさせる。

マルチバースという設定が単なる特殊効果の見せ場ではなく、俳優の演技を楽しむ要素にもなっている。

ワンダを理解するには『ワンダヴィジョン』が重要

ワンダは本作で非常に大きな役割を担う。彼女がなぜ家族を求め、ビリーとトミーへの執着をここまで強めたのかは、ドラマ「ワンダヴィジョン」で詳細に描かれている。

本作だけでも基本的な事情は説明されるものの、ワンダの喪失と悲しみを理解するうえでは「ワンダヴィジョン」が実質的な前日譚となる。

ヒーローとヴィランという単純な線引きではなく、深い喪失を経験した人物が「別の世界なら幸せになれる」というマルチバースの誘惑へ取り込まれていく物語として見ることで、ワンダの行動にも別の重みが生まれる。

アメリカ・チャベスとウォンが広げる今後のMCU

ソーチー・ゴメス演じるアメリカ・チャベスは、他者にはないマルチバース移動能力を持つ新世代ヒーロー。物語の中で自らの力を恐れる少女から、その能力を信じて使う人物へ成長していく。

一方、ウォンも本作ではソーサラー・スプリームとして大きな存在感を見せる。ストレンジの補佐役という位置を超え、魔術師たちを率いる指導者として戦う姿によって、シリーズ内での人物像がさらに厚みを増した。

簡易ストーリー解説(ネタバレ)

起|アメリカ・チャベスとワンダの正体

ドクター・ストレンジは、元恋人クリスティーンの結婚式に出席し、彼女をまだ忘れきれていない自分と向き合う。そんな中、怪物に追われる少女アメリカ・チャベスと出会う。アメリカは恐怖を感じると、無意識に別宇宙への扉を開く能力を持っていた。

ストレンジは彼女を守るためワンダ・マキシモフに協力を求めるが、アメリカを狙っていた黒幕こそワンダだったことが判明する。

ワンダは、失った息子ビリーとトミーに再会し、別宇宙で母親として暮らすためにアメリカの能力を奪おうとしていた。力を奪えばアメリカが死ぬ可能性が高いと知りながらも、子どもたちへの執着を止めることができない。

承①|カマー・タージ襲撃とマルチバースへの逃亡

ワンダはアメリカを奪うためカマー・タージを襲撃し、多くの魔術師を殺害する。追い詰められたストレンジとアメリカはマルチバースを移動し、別世界へ逃げ込む。

そこでストレンジは、その世界のクリスティーンと出会う。また、この宇宙では自分自身がすでに死亡しており、世界を守る組織「イルミナティ」が存在することを知る。

ストレンジはイルミナティに拘束されるが、別宇宙のワンダの身体を乗っ取ったスカーレット・ウィッチが侵入。プロフェッサーX、リード・リチャーズ、キャプテン・カーターら、イルミナティの主要メンバーを次々と殺害していく。

承②|別世界のストレンジと禁断の魔術

ストレンジとクリスティーンはさらに別宇宙へ逃げ込むが、そこは別のストレンジが禁断の魔術に手を出したことで崩壊しかけている世界だった。

主人公ストレンジはもう一人の自分と戦って勝利するものの、その間にアメリカはワンダに捕まり、能力を奪われようとしていた。

ストレンジは彼女を救うため、自分の世界ですでに死亡している別の自分の死体を魔術で操るという危険な手段を選択。禁断の力を使いながら、ワンダのもとへ向かう。

転|ワンダが「怪物になった自分」と向き合う

アメリカのもとへ到達したストレンジは、自分一人でワンダを倒そうとはせず、アメリカ自身の力を信じることを選ぶ。

その言葉によって能力を制御できるようになったアメリカは、ワンダを倒すのではなく、彼女が望んでいた「ビリーとトミーが存在する世界」へ送り込む。

しかし息子たちは、血まみれのスカーレット・ウィッチを見て恐怖に怯え、実の母親である別世界のワンダに助けを求める。

子どもたちを愛するあまり暴走してきたワンダは、ここで初めて、自分自身こそ子どもたちを恐怖に陥れる怪物になっていたことを思い知る。

結|ワンダの決断とストレンジの新たな危機

正気を取り戻したワンダは、同じ悲劇を二度と繰り返さないため、禁断の魔術書ダークホールドをすべての宇宙から消滅させることを決意する。

ワンダゴア山を自ら崩壊させ、ワンダ自身も瓦礫の中へ消えていく。死亡したように描かれ、アメリカをめぐる戦いは終結する。

その後、アメリカはカマー・タージで魔術を学び始める。ストレンジもまた、クリスティーンへの思いと向き合い、「失うことを恐れて人を遠ざけていた」自分を認め、少しだけ前へ進む。

しかし、禁断の魔術を使った代償としてストレンジの額には第三の目が開く。さらに別次元から現れたクレアから「インカージョンを引き起こした」と告げられ、ストレンジは新たな危機へ向かっていく。

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