映画『BLUE GIANT』(2023)を紹介&解説。
映画『BLUE GIANT』概要
映画『BLUE GIANT』は、石塚真一による同名ジャズ漫画を、立川譲監督(『名探偵コナン ゼロの執行人』)がアニメーション映画化した青春音楽ドラマ。世界一のジャズプレーヤーを目指して上京したテナーサックス奏者・宮本大が、ピアニストの沢辺雪祈、ドラム初心者の玉田俊二とトリオ「JASS」を結成し、夢に向かって音を鳴らし続ける姿を描く。主人公・宮本大を山田裕貴、沢辺雪祈を間宮祥太朗、玉田俊二を岡山天音が演じ、音楽は世界的ジャズピアニストの上原ひろみが担当する。
作品情報
| 日本版タイトル | 『BLUE GIANT』 |
|---|---|
| 原題 | BLUE GIANT |
| 製作年 | 2023年 |
| 日本公開日 | 2023年2月17日 |
| ジャンル | 音楽/アニメーション/青春 |
| 製作国 | 日本 |
| 原作 | 石塚真一『BLUE GIANT』(漫画) |
| 上映時間 | 120分 |
| 監督 | 立川譲 |
|---|---|
| 脚本 | NUMBER 8 |
| 製作 | 武井克弘/磯部慧利/備前島幹人 |
| 製作総指揮 | 山中一孝 |
| 撮影 | 東郷香澄 |
| 編集 | 廣瀬清志 |
| 作曲 | 上原ひろみ |
| 出演 | 山田裕貴/間宮祥太朗/岡山天音 |
| 製作 | 映画「BLUE GIANT」製作委員会/NUT(アニメーション制作) |
| 配給 | 東宝映像事業部(日本) |
あらすじ
ジャズに魅了され、世界一のジャズプレーヤーになることを夢見る宮本大。高校卒業後、仙台から東京へ上京した大は、高校時代の同級生・玉田俊二の部屋に居候しながら演奏を続ける。そんな中、同世代ながら卓越した技術を持つピアニスト・沢辺雪祈と出会った大は、彼をバンドへ誘う。さらに大の演奏に心を動かされた玉田もドラムを始め、3人はジャズトリオ「JASS」を結成。それぞれ異なる経験と才能を持つ3人は、日本最高峰のジャズクラブのステージを目指して演奏を重ねていく。
主な登場人物(キャスト)
宮本大(山田裕貴):世界一のジャズプレーヤーになることを夢見るテナーサックス奏者。仙台から上京し、毎日ひたすらサックスを吹き続ける。楽譜を読むことさえできないところから始めながら、強烈な情熱と音で周囲の人間を動かしていく。
沢辺雪祈(間宮祥太朗):幼少期からジャズピアノに打ち込み、高い演奏技術を持つ同世代のピアニスト。自分の実力に強い自信を持つ一方、音楽家としてさらに上へ進むための葛藤も抱える。大と出会い、「JASS」を結成する。
玉田俊二(岡山天音):大の高校時代の同級生。東京で大を自宅に居候させる中、彼の演奏に刺激を受けてドラムを始める。大や雪祈とは異なり楽器経験のない初心者からスタートし、必死に練習を重ねながらバンドの一員として成長していく。
作品の魅力解説・レビュー
“音が聞こえる漫画”を、本当に音が鳴る映画へ
原作『BLUE GIANT』は、音を発することのできない漫画でありながら、激しい筆致や人物の表情によって「音が聞こえてくる」と評されてきた作品。その映像化にあたって製作陣が選んだのは、劇場の大音量と音質を最大限に生かすアニメーション映画という形だった。
その決断を支えるのが上原ひろみによる音楽。劇中のオリジナル楽曲を含む音楽全体を上原が手がけ、沢辺雪祈のピアノ演奏も本人が担当。宮本大のサックスは馬場智章、玉田俊二のドラムは石若駿が演奏しており、キャラクターの感情そのものがプロミュージシャンの音として観客へ飛び込んでくる。
演奏シーンは“音楽を聴く”より“魂を浴びる”感覚
本作のライブシーンでは、単に楽器を正確に演奏するアニメーションを作るだけではなく、実際のミュージシャンの演奏を参考にし、モーションキャプチャーや3DCGなど複数の技法を組み合わせて制作された。
時に現実的な演奏描写から飛び出すような大胆な映像表現も使いながら、目には見えない音の熱量や演奏者の感情を視覚化していく。音色にも映像にも乗った“青く燃える魂”が、真正面から観客へぶつかってくるような映画体験だ。
才能だけでも、努力だけでも決まらない3人の物語
宮本大、沢辺雪祈、玉田俊二は、同じバンドに所属しながらスタート地点がまったく違う。圧倒的な情熱で突き進む大、幼い頃から技術を磨いてきた雪祈、ほぼ未経験からドラムを始める玉田。それぞれの姿を並べることで、本作は単純な「努力すれば夢は叶う」という物語にはしていない。
努力量だけでは埋められない差もあれば、才能だけでは越えられない壁もある。運や環境も人生を左右する。それでも、どの方向へ努力するのか、自分の現在地をどう受け止めるのか、壁にぶつかった時に姿勢をどう修正するのかという“人の在り方”は自分自身で選ぶことができる。音楽映画でありながら、何かに挑戦するすべての人に重なる普遍的な物語になっている。
音楽経験者だからこそ刺さる、バンド内の言葉と音の会話
3人の関係を描くうえで重要なのは、会話だけではない。誰かの演奏に刺激を受けて別のメンバーの音が変わり、その変化にまた別の人物が応える。バンドだからこそ成立する“音によるコミュニケーション”が、物語そのものとして描かれている。
音楽経験がある観客なら、練習の苦しさ、他人との実力差、演奏が突然噛み合う瞬間の高揚感など、より具体的な実感を伴って受け止められるはず。一方で専門知識を前提とはしておらず、音楽をやったことがない人にも3人の感情が伝わるように作られている。
壁にぶつかった時、もう一度観たくなる映画
『BLUE GIANT』が残すのは、単なるライブの興奮だけではない。夢を持つこと、努力すること、自分より優れた人間に出会うこと、思い通りにならない現実と向き合うこと。それらを真正面から描きながらも、最後には「それでも前へ進みたい」と思わせるエネルギーがある。
何かを頑張り始めたい時はもちろん、すでに頑張っているのに壁へぶつかった時にも観返したくなる一本。そして何より、ただ圧倒的な音楽を浴びたい時にも戻ってきたくなる青春映画と音楽映画の幸福な融合だ。
ライター/エディター/映画インスタグラマー。2019年に早稲田大学法学部を卒業。東京都職員として国際業務等を経験後、ライター業に転身。各種SNS(Instagram・X)やYouTubeチャンネル「cula 見て聞く映画マガジン(旧:アルテミシネマ)」においても映画や海外ドラマ、音楽といったカルチャーに関する情報レビューを発信している。
