『ブラック・ウィドウ』解説|どんな映画?あらすじ・キャスト・魅力・レビュー・ネタバレまとめ

映画『ブラック・ウィドウ』(2021)を紹介&解説。


映画『ブラック・ウィドウ』概要

映画『ブラック・ウィドウ』は、ケイト・ショートランド監督(『ベルリン・シンドローム』)が、アベンジャーズの一員ナターシャ・ロマノフの過去と、暗殺者ブラック・ウィドウを生み出してきた組織レッドルームとの決着を描くMCUのスパイ・アクション。『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』後を主な舞台に、ナターシャが幼少期に家族として暮らしたエレーナ、アレクセイ、メリーナと再会し、自分たちを支配してきた過去へ立ち向かう。主演はスカーレット・ヨハンソン、共演にフローレンス・ピューデヴィッド・ハーバーレイチェル・ワイズら。

作品情報

日本版タイトル 『ブラック・ウィドウ』
原題 Black Widow
製作年 2021年
本国公開日 2021年7月9日
日本公開日 2021年7月8日
ジャンル アクション/ヒーロースリラードラマ
製作国 アメリカ
原作 マーベル・コミック「ブラック・ウィドウ」ほか(コミック)
上映時間 133分
監督 ケイト・ショートランド
脚本 エリック・ピアソン
原案 ジャック・シェイファー/ネッド・ベンソン
製作 ケヴィン・ファイギ
製作総指揮 ルイス・デスポジート/ヴィクトリア・アロンソ/ブラッド・ウィンダーバウム/ナイジェル・ゴステロウ/スカーレット・ヨハンソン
撮影 ガブリエル・ベリスタイン
編集 リー・フォルサム・ボイド/マシュー・シュミット
作曲 ローン・バルフ
出演 スカーレット・ヨハンソンフローレンス・ピューデヴィッド・ハーバーレイチェル・ワイズ/O・T・ファグベンル/オルガ・キュリレンコ/ウィリアム・ハート/レイ・ウィンストンほか
製作 マーベル・スタジオ
配給 ウォルト・ディズニー・スタジオ

あらすじ

『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』でソコヴィア協定に違反し、政府から追われる身となったナターシャ・ロマノフ。ひとりで身を隠していた彼女のもとへ、幼少期に妹として暮らしていたエレーナ・ベロワから謎の薬品が送られてくる。

久々に再会した姉妹は、その薬品が人間の自由意思を奪い、暗殺者「ウィドウ」として支配する洗脳を解除するものだと知る。ナターシャは、自分がかつて破壊したと思っていた暗殺者養成組織レッドルームが現在も活動を続けていることを知り、エレーナとともに組織を追う。

そのために必要となったのは、かつてアメリカで偽装家族として生活していた父親役アレクセイと母親役メリーナとの再会だった。偽りから始まった4人の家族は、レッドルームを率いるドレイコフとの決着へ向かう。

主な登場人物(キャスト)

ナターシャ・ロマノフ/ブラック・ウィドウ(スカーレット・ヨハンソン):元ロシアの暗殺者で、アベンジャーズの一員。『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』で政府に背いたため逃亡生活を送っている。

エレーナ・ベロワ(フローレンス・ピュー):幼少期にナターシャの妹として暮らしていたウィドウ。レッドルームによる洗脳から解放され、他のウィドウたちを救おうとする。

アレクセイ・ショスタコフ/レッド・ガーディアン(デヴィッド・ハーバー):かつてソ連が生み出した超人兵士。アメリカで潜入任務を行っていた時期には、ナターシャとエレーナの父親役を務めた。

メリーナ・ヴォストコフ(レイチェル・ワイズ):熟練のウィドウで、ナターシャとエレーナの母親役を務めていた科学者。レッドルームの洗脳技術にも関わっている。

ドレイコフ(レイ・ウィンストン):レッドルームを支配する人物。世界各地から少女たちを集め、洗脳して暗殺者へ変えている。

アントニア・ドレイコフ/タスクマスター(オルガ・キュリレンコ):レッドルームの強力な戦闘員。観察した相手の戦闘動作を模倣する能力を持ち、ナターシャたちを追跡する。

リック・メイソン(O・T・ファグベンル):逃亡中のナターシャへ身分や移動手段、装備などを提供する協力者。

サディアス・ロス(ウィリアム・ハート):ソコヴィア協定に違反したナターシャを追跡する米国務長官。

作品の魅力解説・レビュー

超能力ではなく身体と技術で戦ってきたナターシャの単独映画

アイアンマンのアーマーも、ソーの神の力も、キャプテン・アメリカの超人血清も持たない。ブラック・ウィドウは、長くアベンジャーズの中心で戦いながら、基本的には訓練された一人の人間である。そのため本作では、MCUの中でも比較的地に足のついた格闘戦、銃撃、追跡、潜入といったスパイ映画的アクションが前面に出る。

狭い空間での近接戦や、ナターシャとエレーナが互いの技を知り尽くした者同士として戦う場面など、キャラクターの経歴をそのままアクションへ落とし込んでいる。

「偽りの家族」は本当に偽物だったのか

物語の中心にあるのは、ナターシャ、エレーナ、アレクセイ、メリーナの4人だ。

彼らがアメリカで暮らしていた家族生活は潜入任務のために用意された偽物だったが、幼かったナターシャとエレーナにとって、その時間は実際に経験した“幼少期そのもの”であり、特にエレーナは「私には本物だった」と訴える。

家族は血縁や制度によってのみ成立するのか、それとも一緒に過ごし、互いを家族だと思った時間によって成立するのか。偽装任務から始まった関係を再び結び直していくことで、本作はナターシャがアベンジャーズを「家族」と呼んできた理由にもつながっていく。

支配されてきた女性たちが自らの意思を取り戻す物語

レッドルームが行っていることは、単なる暗殺者の訓練ではない。少女たちを連れ去り、身体と精神を管理し、自分の意思で行動する権利そのものを奪う。本作ではそれを、化学的な洗脳というSF的な設定を用いながら、他者による女性の身体と人生の支配というテーマへ結びつけている。

ナターシャとエレーナの目的も、単にドレイコフを倒すことではない。世界各地で操られているウィドウたちを「自分で選択できる人間」へ戻すことにある。ヒーローが敵を倒して救うのではなく、抑圧された者自身が自由を取り戻していく構図が重要だ。

フローレンス・ピュー演じるエレーナの鮮烈な登場

単独映画でナターシャを掘り下げると同時に、本作からMCUへ加わったエレーナ・ベロワも大きな魅力となっている。

フローレンス・ピューは、卓越した戦闘能力を持ちながら、姉への複雑な愛情や幼少期への未練を抱えた人物としてエレーナを演じる。ナターシャの戦闘時のポーズをからかう場面など、二人が実の姉妹のように遠慮なく言葉をぶつけ合う掛け合いが重い物語へ軽やかさを加え、同時に、ナターシャが失った時間をエレーナという人物を通じて可視化する役割も果たしている。

『エンドゲーム』を知っているからこそ意味を持つナターシャの選択

時系列上、本作は『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』と『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』の間に位置する。しかし観客の多くは、すでに『アベンジャーズ/エンドゲーム』でナターシャが迎えた運命を知っている。

そのため、彼女が再び家族を得て「私は一人ではない」と確認していく本作の過程には、未来を知るからこその切なさが生まれる。過去の罪から逃げるのではなく、家族の問題へ戻り、他のウィドウたちを救い、その後再びアベンジャーズの仲間を助けるために歩き出す。その選択を見ることで、『エンドゲーム』で彼女がなぜ仲間のために自分の命まで差し出せたのかという人物像にも、より明確な一本の線が引かれる。

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