映画『アレキサンドリアWHY?』(1979)を紹介&解説。
映画『アレキサンドリアWHY?』概要
映画『アレキサンドリアWHY?』は、エジプト映画界の巨匠ユーセフ・シャヒーン監督(『カイロ中央駅』『大地』)が、自身の青春時代をもとに、第二次世界大戦下のアレキサンドリアで生きる若者たちの夢と現実を描いた青春群像ドラマ。1942年、映画や演劇に熱中する青年ヤヒヤは、ハリウッドへの憧れを募らせながらも、戦争と政治的混乱に揺れる故郷で青春を過ごしていた。異なる立場の人々の恋愛や葛藤を織り交ぜ、戦時下のエジプト社会を多面的に描く。主演はモフセン・モヒーディーン、共演にナグラ・ファトヒ、アフメド・ザキ、マフムード・メリーギ、エザット・エル=アライリら。第29回ベルリン国際映画祭で銀熊賞(審査員特別賞)を受賞した。シャヒーン監督による自伝的4部作「アレキサンドリア・シリーズ」の第1作にあたる。
作品情報
| 日本版タイトル | 『アレキサンドリアWHY?』 |
|---|---|
| 原題 | Iskanderija… lih? |
| 英題 | Alexandria… Why? |
| 製作年 | 1979年 |
| 本国公開日 | 1979年2月11日(公開情報上の原初公開日。エジプト国内の封切日は不明) |
| 日本公開日 | 1986年5月17日(2026年10月26日から第39回東京国際映画祭でも上映) |
| ジャンル | ドラマ/青春 |
| 製作国 | エジプト/アルジェリア |
| 原作 | 無 |
| 上映時間 | 132分(第39回東京国際映画祭上映版) |
| 監督 | ユーセフ・シャヒーン |
|---|---|
| 脚本 | ユーセフ・シャヒーン/モフセン・ザイド |
| 製作 | ユーセフ・シャヒーン/ラウフ・アブデル・ハディ/マフムード・バクル/モハメド・エル・ゴハリ/モハメド・ハッサン |
| 撮影 | モフセン・ナスル |
| 編集 | ラシーダ・アブデル・サラーム |
| 作曲 | ファウド・ザヘリー |
| 出演 | モフセン・モヒーディーン/ナグラ・ファトヒ/アフメド・ザキ/マフムード・メリーギ/エザット・エル=アライリ/ファリード・シャウキ/ジェリー・サンドクイスト |
| 製作会社 | ミスル・インターナショナル・フィルムズ/アルジェリアTV |
| 配給 | シネマトリックス=アイディ(日本公開時) |
あらすじ
1942年、第二次世界大戦の影響が迫るエジプトの港湾都市アレキサンドリア。
名門ヴィクトリア高校に通う18歳のヤヒヤは、ハリウッドのミュージカル映画やシェイクスピアの演劇に夢中になっていた。いつか映画の世界に飛び込みたいと願う彼にとって、アメリカの映画文化は日常を越えた憧れの世界だった。
しかし、エジプトを取り巻く情勢は緊迫していた。北アフリカで戦火が広がる中、街には異なる民族、宗教、政治的立場の人々が暮らし、それぞれの思惑や恋愛が複雑に交錯していた。
戦争と政治的混乱に揺れる街で、夢を追い続けるヤヒヤ。彼とその周囲の人々が経験する出来事を通じて、戦時下のアレキサンドリアの青春と社会の姿が浮かび上がっていく。
主な登場人物(キャスト)
ヤヒヤ(モフセン・モヒーディーン):名門ヴィクトリア高校に通う18歳の青年。ハリウッド映画と演劇を愛し、映画の世界で活躍することを夢見ている。本作の主人公であり、監督ユーセフ・シャヒーン自身の青春時代を反映した人物。
サラ(ナグラ・ファトヒ)、イブラヒム(アフメド・ザキ)、シャーケル(エザット・エル=アライリ)、カドリ(マフムード・メリーギ)、トミー・フリスキン(ジェリー・サンドクイスト):第二次世界大戦下のアレキサンドリアを舞台とする群像劇を構成する人物たち。
作品の魅力解説
ユーセフ・シャヒーン監督の青春時代を描く自伝的映画
本作は、エジプトを代表する映画監督ユーセフ・シャヒーンが、自身の故郷アレキサンドリアと若き日の映画への憧れを題材にした自伝的作品だ。
主人公ヤヒヤは、ハリウッドのミュージカル映画やシェイクスピアの演劇に夢を抱く青年。監督自身も若くして映画製作を志し、アメリカで映画を学んだ経験を持つ。
ひとりの青年が映画に魅了され、世界へ飛び出そうとする物語は、シャヒーン監督の映画人生の原点を見つめ直すものとなっている。
本作から始まった「アレキサンドリア・シリーズ」は、その後も監督自身の人生とエジプトの歴史を重ね合わせながら展開されていく。
第二次世界大戦下のアレキサンドリアを描く群像劇
1942年のアレキサンドリアは、地中海に面した国際都市でありながら、第二次世界大戦の北アフリカ戦線の影響を強く受けていた。
本作は主人公の個人的な青春だけでなく、異なる民族や宗教、社会階級、政治的立場を持つ人々の人生を描いている。
それぞれの人間関係や恋愛、対立を積み重ねることで、戦争を単なる歴史上の出来事としてではなく、そこに暮らす人々の日常を変えてしまう現実として浮かび上がらせる。
個人の夢と国家の歴史を並行して描く、シャヒーン監督の作家性が表れた作品である。
映画と演劇への愛情が生み出す多彩な表現
主人公ヤヒヤが熱中するハリウッド映画や舞台芸術は、本作を特徴づける重要な要素となっている。
シャヒーン監督は、社会的・政治的な題材を扱いながらも、娯楽映画やミュージカルの表現を積極的に取り入れてきた映画作家だ。
本作でも、若者の夢や恋愛、戦争の現実が、映画への愛情と結びついて描かれている。
その作風は国際的にも高く評価され、1979年の第29回ベルリン国際映画祭では銀熊賞(審査員特別賞)を受賞した。
エジプトの近現代史を知る上でも、シャヒーン監督の映画的な世界観に触れる上でも重要な代表作の1本といえる。
