映画『Elephants in the Fog(原題)』(2026)を紹介&解説。
映画『Elephants in the Fog(原題)』概要
映画『Elephants in the Fog(原題)』は、ネパール出身のアビナシュ・ビクラム・シャー監督が長編デビュー作として手がけたドラマ/スリラー。野生の象が生息する森に囲まれたネパールの村を舞台に、キンナルの共同体を率いる家長ピラティが、愛する男性との逃避行への思いと、失踪した娘を探す責任の間で揺れる姿を描く。2026年カンヌ国際映画祭「ある視点」部門に出品され、同部門の審査員賞を受賞した注目作である。
作品情報
日本版タイトル:未定(2026年5月時点)
原題:Elephants in the Fog
別題:Tinihāru/तिनीहरू
製作年:2026年
海外公開日:2026年5月20日(第79回カンヌ国際映画祭でワールドプレミア)
日本公開日:未定(2026年5月時点)
ジャンル:ドラマ/スリラー
製作国:ネパール/フランス/ドイツ/ブラジル/ノルウェー
原作:無
上映時間:103分
監督:アビナシュ・ビクラム・シャー
脚本:アビナシュ・ビクラム・シャー/サンディープ・バダル
製作:アヌープ・ポウデル/ジャスティン・ペクベルティ/ミヒャエル・ヘンリヒス/ダミアン・メゲルビ
撮影:ノエ・バック
編集:アンドリュー・バード/パリ・J・ルートヴィヒ
作曲:フレデリック・アルヴァレス
美術:マウサム・アグラワル
出演:プシュパ・ティン・ラマ/ディーピカ・ヤダヴ/ジャスミン・ビシュウォカルマ/アリズ・ギミレ/ドゥラ・サンジャイ・クマール・グプタ/ドル・バハドゥール・シャルマ/アーシャント・シャルマ/サンジャイ・グプタ
製作:アンダーグラウンド・トーキーズ・ネパール/レ・ヴァルスール/ディー・ゲゼルシャフト DGS/エンクアドラメント・プロドゥソンイス/バブルス・プロジェクト/ジシュラーマン・フィルムプロダクション/ストーム・フィルムズ/ジャヤンティ・クリエーションズ
配給:レ・ヴァルスール・ディストリビューション/アリゾナ・ディストリビューション(フランス)
あらすじ
野生の象が生息する森に囲まれたネパールの小さな村。キンナルの共同体を率いるピラティは、愛する男性と村を離れ、別の人生を歩むことを密かに望んでいた。しかし、共同体の娘のひとりであるアプサラが姿を消し、村には象の襲撃への恐怖と、人間社会の偏見や暴力の気配が広がっていく。ピラティは失踪の真相を追う中で、自らの自由を求める思いと、共同体を守る責任の間で決断を迫られる。
主な登場人物(キャスト)
ピラティ(プシュパ・ティン・ラマ):ネパールの村でキンナル共同体を率いる家長。共同体の母のような存在でありながら、愛する男性と自由な人生を歩みたいという願いを抱えている。
アプサラ(アリズ・ギミレ):ピラティが守る共同体の若い娘のひとり。彼女の失踪が物語の大きな発端となり、ピラティは愛と責任の間で揺れながら真相を追うことになる。
チャメリ(ジャスミン・ビシュウォカルマ):キンナル共同体の一員。
ジューン(サハブ・ディン・ミヤ):キンナル共同体の一員。
マスター(アーシャント・シャルマ):ピラティが愛する男性。
作品の魅力解説
本作の大きな魅力は、ネパールのキンナル共同体を中心に据えながら、社会派ドラマとスリラーの要素を結びつけている点にある。失踪事件をめぐる緊張感を軸にしつつ、共同体の内部にある愛情、責任、孤独、そして外部社会から向けられる視線を描き出すことで、単なる事件劇にとどまらない広がりを持たせている。
また、野生の象が生息する森という舞台設定も重要である。象の存在は、村にとって現実的な脅威であると同時に、人間社会の内側に潜む暴力や不安を浮かび上がらせる象徴として機能する。夜の森、たいまつ、共同体の祈りや儀式といった視覚的要素が、物語に神話的な奥行きを与えている。
さらに、ピラティという人物の葛藤が作品の核になっている。彼女は共同体を守る立場でありながら、自分自身の人生を求めるひとりの人間でもある。自由への願いと、母としての責任。その両方を抱えた主人公の姿を通して、本作はマイノリティの物語を“説明”ではなく、感情とサスペンスの中で描こうとしている。
アビナシュ・ビクラム・シャー監督にとって本作は長編デビュー作でありながら、2026年カンヌ国際映画祭「ある視点」部門で審査員賞を受賞した。ネパール映画として国際的な注目を集めた一本であり、今後の日本公開や配信展開にも期待がかかる作品である。
