映画『Fatherland(原題)』(2026)を紹介&解説。
映画『Fatherland(原題)』概要
映画『Fatherland(原題)』は、『イーダ』『COLD WAR あの歌、2つの心』のパヴェウ・パヴリコフスキ監督が、1949年のドイツを舞台に、作家トーマス・マンと娘エーリカ・マンの帰郷の旅を描く歴史ドラマ。冷戦下で東西に分断されつつある祖国を、16年ぶりに訪れる父娘の視点から、家族、記憶、罪、アイデンティティの揺らぎを見つめる。主演はハンス・ツィッシュラーとザンドラ・ヒュラー、共演にアウグスト・ディール、デーヴィト・シュトリーゾフ、アンナ・マデリーら。
作品情報
日本版タイトル:『Fatherland(原題)』
原題:Fatherland
製作年:2026年
本国公開日:2026年6月19日(ポーランド)
日本公開日:未定
ジャンル:ドラマ/伝記/歴史
製作国:ポーランド/ドイツ/イタリア/フランス
原作:コルム・トビーン『The Magician』を原案とする企画として報道
上映時間:82分
監督:パヴェウ・パヴリコフスキ
脚本:パヴェウ・パヴリコフスキ/ヘンク・ハンドレーグテン
製作:マリオ・ジャナーニ/ロレンツォ・ミエーリ/エヴァ・プシュチンスカ/ジャンヌ・トレムサル/エドワード・ベルガー/ディミトリ・ラッサム/ロレンツォ・ガンガロッサ
撮影:ウカシュ・ジャル
編集:パヴェウ・パヴリコフスキ/ピョートル・ヴイチク
作曲:マルチン・マセツキ
出演:ハンス・ツィッシュラー/ザンドラ・ヒュラー/アウグスト・ディール/デーヴィト・シュトリーゾフ/アンナ・マデリー ほか
製作:MUBI/Our Films/Extreme Emotions/Nine Hours/Chapter 2/Circle One
配給:キノ・シフィアト(ポーランド)/MUBI(一部地域)
あらすじ
1949年、冷戦の緊張が高まるドイツ。ナチス台頭後に米国へ亡命していたノーベル文学賞作家トーマス・マンは、ゲーテ賞を受けるため、16年ぶりに祖国へ戻る。娘エーリカとともに黒いビュイックでフランクフルトからワイマールへ向かう旅は、廃墟となった戦後ドイツを横断する道程であると同時に、分断された国と、亀裂を抱えた家族の内側へ踏み込む時間にもなっていく。
主な登場人物(キャスト)
トーマス・マン(ハンス・ツィッシュラー):ノーベル文学賞を受賞したドイツ人作家。ナチス政権下で亡命し、1949年にゲーテ賞を受けるため祖国へ戻る。東西に分断されつつあるドイツと、自身の家族の亀裂に向き合うことになる。
エーリカ・マン(ザンドラ・ヒュラー):トーマス・マンの娘で、俳優、作家、ラリードライバーとしても活動した人物。父の旅に同行し、戦後ドイツの現実や家族の傷を鋭く見つめる存在として描かれる。
クラウス・マン(アウグスト・ディール):トーマス・マンの息子で作家。
ヨハネス・R・ベッヒャー(デーヴィト・シュトリーゾフ):東ドイツ側の文化人、政治家。
ベティ・ノックス(アンナ・マデリー)
作品の魅力解説
本作の大きな魅力は、歴史上の文豪トーマス・マンを単なる偉人として描くのではなく、祖国を失った作家であり、感情を抑え込んだ父でもある人物として見つめている点にある。フランクフルトからワイマールへ向かう道程は、米国側とソ連側に分断されつつあるドイツの現実を映し出しながら、父娘が抱える沈黙や喪失感を浮かび上がらせる。
また、パヴェウ・パヴリコフスキ監督らしいモノクロームの映像表現も見どころである。『イーダ』『COLD WAR あの歌、2つの心』に続く凝縮された画面構成の中で、廃墟、車内、式典、ホテルの空間が、戦後ヨーロッパの傷と登場人物の内面を静かに際立たせる。説明に頼りすぎず、余白と視線で感情を伝える演出が、本作の緊張感を支えている。
キャスト面では、ザンドラ・ヒュラーがエーリカ・マンの知性、怒り、喪失感を体現し、ハンス・ツィッシュラーが国民的作家としての威厳と、父としての距離感を併せ持つトーマス・マンを演じる。家族劇、歴史劇、ロードムービーが重なり、祖国とは何か、芸術家は時代とどう向き合うのかを静かに問いかける一本である。
