『361 -White and Black-』出演の長野凌大、パク・ユチョン、星野奈緒にインタビュー。
囲碁を題材に、人と人の結び直しを描く映画『361 -White and Black-』が、3月6日(金)に日本公開を迎える。映画初主演となる長野凌大、囲碁界の世界チャンピオン役を担うパク・ユチョン、そして日本チャンピオン役の星野奈緒が本作で紡いだのは、勝敗を超えた感情の駆け引きと、言葉にならない再会の温度だ。culaは本作の公開を前に、3人に(同席していた大山晃一郎監督にも少々)撮影の手応え、役づくりのアプローチ、クライマックスで交差した“無言の時間”の意味や、撮影時のエピソードを聞くことができた。(取材・文:ヨダセア)
『361 -White and Black-』長野凌大、パク・ユチョン、星野奈緒 インタビュー
長野さん、映画初主演の感想はいかがですか。
長野凌大(以下、長野):まず僕自身、映画を観るのが本当に好きなので、まさかこんなに早く映画主演ができるとは……本当に感無量で光栄な気持ちです。撮影期間中は主演がどうこうではなく、役に対してまっすぐに向き合って、この作品をどう素敵に彩れるかということを意識していましたが、公開間近になってインタビューを受けていると、「自分が主演なんだな」という実感が湧いてきます。俳優にやっとなってきた気がして、すごく嬉しいです。

長野凌大 © cula
普段はダンスボーカルグループで活動していらっしゃいますが、俳優の仕事はいかがですか。また、今回映画の主演が決まって、グループの仲間からはどんな反応がありましたか。
長野:音楽活動とはまったく違いますね……“表現をする”というところでは通じていますが。僕は「俳優の時は俳優として見られたい」という気持ちがあるので、撮影現場に行くときはグループ活動を引きずらないと決めて、あまりセットでは考えずに活動しています。
長野:メンバーはすごく驚いていましたね。良いニュースとしてすごく喜んでくれましたし、「まさかアメリカに行くなんて」ということも含めて、みんなにすごくいい驚きを与えられたかなと。それが刺激になって、今もみんなが頑張ってくれているので、お互い刺激し合える関係でいられてすごくいいことだなと思います。

長野凌大 © cula
星野さん、最初に脚本を読んだ印象はいかがでしたか。
星野奈緒(以下、星野):囲碁をテーマにした作品だと聞いていたので、ガッツリ囲碁の試合などを描く作品かなと思っていたら,囲碁をテーマにして人間関係を描くヒューマンドラマ的な側面など、いろいろなところを見せてくれる面白い映画だなと思いました。
星野:沙羅という役は本当に自分に似ている部分があって「わかる!」と共感できました。役になるというより、彼女の人生をちゃんと歩んでいきたいなと本当に思いましたね。

星野奈緒 © cula
今回の役を演じるにあたって、何かご準備されたことはありますか。
長野:僕は今まで囲碁に触れてこなかったのですが、今回演じたのは囲碁が上手い役だったので、まず碁石を持って打ち方から練習させていただいたり、囲碁の先生から競技の歴史を聞いたり、自分でアプリで囲碁のゲームをやってみたりしました。
長野:撮影期間もずっと、人と話すときはちょっと失礼ですけど(笑)……碁石を持って打ちながらにしていました。結果的に映画の中では着ぐるみを着て囲碁をするシーンばかりだったのですが、ちゃんと打っているシーンもあるので、(練習は)活かせたかなと思います。
星野:台本を読んだとき、髪型の指定はまったくなかったのですが、私は沙羅の髪が長い気がして、監督に「エクステってつけていいですか?スーパーロングのエクステをつけたいです」と自分から言ってつけさせてもらいました。沙羅という人物に自分が似ているからこそ、星野奈緒ではなく、沙羅という人間に近づくことができたかなと思います。
パク・ユチョン(以下、ユチョン):僕は囲碁の世界チャンピオン役ですが、囲碁については正直言うと今も詳しくはないんです……(笑)一番準備したのはやはり日本語。日本語のセリフの練習をしました。

パク・ユチョン © cula
それぞれ、自分が演じたキャラクターについてどのように理解し、どのように感じましたか。
長野:眞人はやはり、自分の心に蓋をしてるという部分がキーだと思いますが、でも愛情深い人だと僕は思っています。パク・ハンミョンも沙羅ももう一緒にはいないけど、さっきも言いましたがふたりの情報はたぶんずっと知っているだろうし、囲碁のゲームアプリを入れているのもそう。本当はまだみんなと一緒にいたいけど、ただ不器用なだけで殻にこもってしまっているところが眞人の可愛らしいところでもあります。
長野:でもそんな眞人が松岡(広大)さん演じる小坂との出会いで変わっていき、成長した自分でまたみんなの元へ戻っていくところがこの作品で描かれます。眞人はやはり、周りの人によって強くなれる人間だと、すごく思います。
星野:沙羅はまっすぐな強い心を持った女性で、自分の中で決めたものに対してブレないでまっすぐ生きているところがかっこいいです。やはり自分は違うことをしたくても、期待されているならそれをやろう、ブレずに生き続けなければならないし、そう生きたいと思っています。たぶんすごく葛藤もしていますが、でも「決めたなら進もう」みたいな……本当に芯の強い女性だなと思います。

星野奈緒 © cula
ユチョン: 囲碁はまったく経験がなかったんですけど(笑)……パク・ハンミョンが日本に住んでいたのは3年くらい。そんなに長くはなく、短い期間なのに、その3年間の思い出がずっと人生の大事なものとして残っているのはすごく伝わりました。だからやはり、(ハンミョンが)日本に戻る場面で個人的に感じたのは、「本当の家に戻った」という感覚でした。それがすごく理解できたんです。
ご自身が演じた役と、ご自身が似ていると思うところと、似ていないと思うところはどこでしょうか。
長野:周りの人に助けられて、自分の弱さを強さに変えていく、みたいな眞人の生き方や精神面に関しては、僕も芸能活動を始めてから、周りのスタッフの方々やファンの方々のおかげで変われてきた部分がすごくあるので、似ている部分はあると思います。
長野:似ていないところは、僕は(眞人より)もう少し思ったことを言えるかな……「そんなに言わないことはないでしょ」って思います。 ずっと勝浦に住み続けてるというのも、すごく未練があるんだろうなと思う。僕は眞人より少しだけ器用だとは思います。

長野凌大 © cula
星野:似てる部分はさっきも言ったところに重なりますが、はっきり物を言ったりとか、芯が強い部分は少し似ていると思います。私もうじうじしている人には「ちょっと、はっきりしてよ!」みたいになってしまうので、うじうじしている眞人に対しての気持ちなどは似ているのかなと思います。
星野:似ていない部分は、そうですね……沙羅は囲碁の日本チャンピオンというトップに立っている人間ですが、私はまだトップには立てていないので……そこは似ていないし、私もトップに立ちたいなと!!沙羅のその部分はリスペクトしています。

星野奈緒 © cula
ユチョン:似ていないところ……いや、個人的には似ていない部分をあまり感じていないんですよ。パク・ハンミョンを理解できるパーセンテージが本当に高くて、それで自由に演じることができたんじゃないかなと思います。これまでの役よりもとても理解できる役だと感じていたので、僕自身に似ているように見えるかもしれないです。

パク・ユチョン © cula
おひとりずつ、他のおふたりの人柄や演技について、印象を伺ってもよろしいですか。
長野:星野さんは、すごくまっすぐな方だと思いました。ピュアでまっすぐだからこそ、沙羅を演じている時もやはりどこか星野さんのまっすぐで天真爛漫な部分が沙羅に重なって、すごく眞人として演じやすかったです。
長野:ユチョンさんは、ディナーショーにも僕は行かせていただいたんですけど、「かっこいい人だな、歌も上手だし、僕に勝てるところあるかな……」という感じです。すごくジェントルマンだけど年上感もあまり出さない、気さくな方なんですよ。だからすごく話しやすかったですし、僕もこういう大人になっていきたいなって思いました。もっと仲良くしたいなって思えるような優しい方です。
ユチョン:いやあ……(笑)
長野:本当ですよ!一緒にご飯とか行きたいです。

長野凌大 © cula
星野:長野くんは、良い意味で変わらないなと……なんか、“このまんま”なんです。
長野:え、どういうこと?どういうこと?
星野:良い意味で!(笑) どこにいてもずっと、テンションも変わらず落ち着いていて、22歳には見えないくらい大人っぽい印象です。
星野:ユチョンさんは私も(同世代で小学生時代からユチョンファンだった筆者と同じく)本当に大好きだったので、最初お会いできることになってすごく嬉しかったですし、年上ですけど全然そんな感じもなく、すごく気さくに「気にする必要ないよ」とたくさん話しかけてくれました。
星野:嬉しかったのは、初めて私が演技をしたときに、ユチョンさんが「すごい素敵な演技をしますね」って言ってくれたことです。それが嬉しくて……この言葉を家宝にしようかなと思います!
ユチョン:覚えていたんだ……!
星野:あと、おふたりがすごく素敵な方だから、ファンの方もすごく温かい人が多いんです。 ユチョンさんのファンも、長野くん、“げんじぶ”(原因は自分にある。)のファンもそうですけど、本当にみんな温かくて、私のインスタもフォローしてくれて、コメントもくれて……やっぱりふたりの人柄が、ファンにも表れているんだろうなと本当に感じました。

星野奈緒 © cula
ユチョン:僕、昔からずっと、芸能活動をするようになってからも、友達をつくるのが苦手なタイプなんですよ。でも長野くんは、今回の映画でも、その後ほかの仕事でも一緒になりましたが、「近づきたい」「ご飯に行きたい」って言ってくれて……嬉しかったです。逆に行っていいのかな?って。
長野:なんでダメなんですか!(笑)
星野:行きたい行きたい!とんこつラーメン食べましょ!(笑)
ユチョン:ふたりとは本当に仲良くなりたいです。長野くんとは映画の撮影でかぶるシーンはあまりなかったんですけど、初めて会った時からすごく真面目というイメージがあります。たしかに22歳に見えなくて、大人っぽいなと思います。

パク・ユチョン © cula
ユチョン:星野さんは……さっき言ってくれましたけど、星野さんが演じているのを見て「いい演技をするな」と本当に思って、監督さんに「星野さんって上手な演技をするんですね」って話していたんです。覚えていてくれて本当に嬉しいです。
星野:嬉しいです……家宝です!

パク・ユチョン © cula
今回、ほぼ同年齢の役を演じてみたお三方の感覚はいかがですか。
長野:僕から見たら、本当に全然年上に感じなかったです。ふたりとも良い意味で気さくな方々で、ノリも近いし、(年齢を)遠く感じないんです。
ユチョン:距離感はあんまりなかった感じがする。
長野:ユチョンさんが自分の撮影がない日にパンを買ってきてくれたんですけど、ちょうど疲れていた時だったので、入口からユチョンさんが入ってきたとき、神様かと思って……(笑)パンはめちゃくちゃ食べましたよ。本当にありがたかったです。共演している撮影期間自体は本当にとても短かったし、最後のシーンは初日くらいに撮ったんですけど、それでもふたりがまとっているオーラは、僕が想像していた役のとおりで、ふたりと喋っているときに、眞人としてすごく安心して「帰って来られた」という感じがしました。何も滞ることなく、すごく演じやすかったです。

星野:幼少期の4人を見たり、実際にこのみんなで関わったりしたときの想像ですけど、きっと沙羅はお姉ちゃん気質で、眞人は弟気質で、ハンミョンは少しお兄ちゃん気質で、やはりハルトは一番お兄ちゃんだと思います。最後のシーンは幼少期のハルトを含めた4人でいますが、(子役のままの)ハルトが年齢的には一番若いのに、やはり一番お兄ちゃんみたいな雰囲気を感じて「これはすごいな」と感じました。実年齢の違いにかかわらず、あの瞬間は「きっとこういうふうに幼少期から過ごしていたんだろうな」という感覚を強く感じました。
ユチョン:たしかに……。(星野さんの言うことに)本当に納得できる。想像してみて、絶対にそういう感じだったんじゃないかと思います。

撮影中、面白かったエピソードや楽しかったことといえば……?
長野:監督自体が面白かったですね!「芸人さんと喋っているのかな」と思うくらい笑わせてくれて、現場が明るくなるんですよ。それくらい面白い監督なんですけど、でもシーンによっては誰よりも感動して、カットがかかって監督の方を見たら泣いていたりもします。監督であり、芸人であり、誰よりも熱い視聴者であるというか……本当に面白すぎて、僕はずっと監督で笑ってましたね。
大山晃一郎監督:「芸人であり、」はいらないだろ!(笑)

長野凌大 © cula
星野:面白かったエピソードはふたつあります。ひとつ目は最後の方の、着物を着た私(沙羅)に眞人が語りかけて、私が泣いてしまうシーンです。最初は「強い女性だから泣かないで」と言われましたが、監督に「いや、もう何も考えずに、今の沙羅でやれ」と言われたら、私号泣しちゃって……。そうしたら鼻水まで……びっくりするくらいブハッと爆発してしまったんです。
星野:さすがに拭きたいなと思っていたら、監督がカットをかけてくれたんですけど、そこから5秒くらいですよ。ヘアメイクさんが呼ばれて、シャッと鼻水が拭き取られて、そのまま「用意スタート!」って。「え!?始まるんだ、このままやるんだ!」みたいな勢いで撮影がスタートして、すごくスピーディーなザ・大山チームのチームワークを感じました。
長野:あれは早かったですよね〜。

星野奈緒 © cula
星野:もうひとつ、お寿司屋さんでお寿司を食べるシーンなんですけど、金田(明夫)さんが何回も何回もお寿司を食べて「お、うま!」って言って……でカットがかかると「もう1回」ってまた握ってもらってまた食べて……「金田さん映ってないから食べないで!」みたいなことがありました(笑)
長野:金田さんと共演するシーンはなかったんですけど、僕はそのお寿司のお店の撮影前日に金田さんにお会いしていて、その時ずっと「寿司が楽しみ」ということを話していたんですよ。無事食べられたことが確認できてよかったです(笑)
星野:誰よりも食べてました(笑)

長野凌大 © cula
ユチョン:ひとりのシーンが多かったのでふたりと比べると面白いエピソードは少ないかな……。
星野:私、ユチョンさんとのシーンでひとつエピソードがあります。パク・ハンミョンの「とんこつラーメン!」というセリフは元々なかったんですよ。日本食で何が好きか、みたいな話をしていた時にユチョンさんが「とんこつラーメン」と言って、「数あるラーメンの中でとんこつラーメンなんだ!」と思ったのが映画で採用されたんです。
ユチョン:和食はどれも好きです!

パク・ユチョン © cula
クライマックスの囲碁の試合のシーンでは、試合中なので多くは喋りませんよね。言葉がない状態でお互いに伝わるものはありましたか。
長野:眞人はずっと(沙羅やパクの)情報を追ってはいたんでしょうけど、やはりあそこが久しぶりに3人が一堂に会する本当の再会の場。たぶん眞人は(パクが)来ているのも少しわかっているんだろうな、つながっているんだろうな、ということを意識して僕は芝居をしました。
星野:沙羅自身は本当は(眞人を)許してあげたいし、本当は寄り添いたい……やはり本音はそうだけど、自分は普段から常に人に見られていて、常に人のトップであらなければならない。絶対に本音と建前があったので、「許してあげたいんだけど、でも……」という気持ちをうまく崩さないように意識しました。そして、「始めるよ」のセリフで自分自身の何かが解かれたな、という感覚が見えるように演じました。

星野奈緒 © cula
ユチョン:僕はちょっと遠いところから応援している役でしたが、あのシーンでは眞人の“本当の囲碁”が始まった瞬間だと感じて、パク・ハンミョンとしては、眞人が本当に成長したんだなと思いながら、ふたりを心から応援していました。

パク・ユチョン © cula
大山監督もせっかく来ていらっしゃるので、お三方について一言お願いします!
大山監督:言っちゃいます?
ユチョン:あ、じゃあ僕はいいです(笑)
長野:あ、僕も大丈夫です(笑)
星野:(爆笑)
大山監督:やはり本作は最初にできた脚本を途中から(変更して)みなさんそれぞれに役をオーダーメイドしていったところがあるので、本当にみなさんで良かったなと思いますよ。それと、本当にもう映画ができるかできないかという瀬戸際だったときに、今いるみなさんを中心に「出ます」と言ってくれて、それでまた企画が走り出したので、この映画にみなさんが出てくれて本当によかったです。感謝しかねえ!!
星野:感謝しかねえ!!ありがとうございます!!
長野&ユチョン:ありがとうございます!!
(インタビュー以上/取材・文:ヨダセア)

フォトギャラリー
俳優としての新しい手触りを語る長野、役と“人生を歩む”感覚を大切にした星野、そして日本語という準備を通じて人物に近づいたユチョン。3人の言葉を追うほどに、『361 -White and Black-』が囲碁の勝負そのものだけではなく、過去を抱えた若者たちがもう一度つながり直す物語であることが輪郭を帯びてくる。盤上で交わされる静かな呼吸、視線の往復、そして「始めるよ」の一言がほどくもの――それらをスクリーンで確かめたい。映画『361 -White and Black-』は、3月6日(金)日本公開。
ライター/エディター/映画インスタグラマー。2019年に早稲田大学法学部を卒業。東京都職員として国際業務等を経験後、ライター業に転身。各種SNS(Instagram・X)やYouTubeチャンネル「cula 見て聞く映画マガジン(旧:アルテミシネマ)」においても映画や海外ドラマ、音楽といったカルチャーに関する情報レビューを発信している。



































