映画『ハエ』(2026)を紹介&解説。
映画『ハエ』概要
映画『ハエ』は、フェルナンド・エムケ監督(『ダック・シーズン』『レイク・タホ』)が、孤独な中年女性と9歳の少年の思いがけない交流を描く、メキシコ発のヒューマンドラマ。メキシコシティの巨大な集合住宅で他人との関わりを避けて暮らすオルガは、経済的な理由から自宅の一室を貸し出すことになる。そこに父親とともに現れた少年クリスティアンが、彼女の閉ざされた日常を少しずつ変えていく。
主演はテレシタ・サンチェス。共演にバスティアン・エスコバル、ウーゴ・ラミレス、エンリケ・アレオラら。第76回ベルリン国際映画祭コンペティション部門で上映され、エキュメニカル審査員賞などを受賞した。
作品情報
| 日本版タイトル | 『ハエ』 |
|---|---|
| 原題 | Moscas |
| 英題 | Flies |
| 製作年 | 2026年 |
| 本国公開日 | メキシコでの一般劇場公開日は未確認(2026年2月18日にベルリン国際映画祭で世界初上映) |
| 日本公開日 | 一般公開未定(2026年10月27日、11月1日に東京国際映画祭で上映) |
| ジャンル | ドラマ/コメディ |
| 製作国 | メキシコ/スペイン |
| 原作 | 無 |
| 上映時間 | 102分(東京国際映画祭上映版) |
| 監督・脚本 | フェルナンド・エムケ/バネサ・ガルニカ |
|---|---|
| 製作 | フェルナンド・エムケ/エレンディラ・ヌニェス・ラリオス/ミシェル・フランコ |
| 撮影 | マリア・セッコ |
| 編集 | サルバドール・レジェス・スニガ/フェルナンド・エムケ |
| 作曲 | カミロ・ララ |
| 出演 | テレシタ・サンチェス/バスティアン・エスコバル/ウーゴ・ラミレス/エンリケ・アレオラ |
| 製作 | Kinotitlán/Teorema/Nephilim Producciones |
| 配給 | Piffl Medien(ドイツ)/A Contracorriente Films(スペイン)/日本未定 |
あらすじ
メキシコシティの巨大な集合住宅で暮らす55歳のオルガは、過去に大切なものを失って以来、他人との関わりを避け、規則正しい孤独な生活を送っていた。しかし、手術費用を工面する必要に迫られ、自宅の一室を貸し出すことを決める。借り手となったのは、妻が近くの病院に入院している男性トゥリオ。ところが、彼は9歳の息子クリスティアンを密かに部屋へ連れ込んでいた。少年の存在を知ったオルガは戸惑い、距離を置こうとするものの、次第に彼の孤独や不安に触れ、思いがけない絆を育んでいく。閉ざされていた彼女の日常は、少しずつ変わり始める。
主な登場人物(キャスト)
オルガ(テレシタ・サンチェス):メキシコシティの集合住宅でひとり暮らしを送る55歳の女性。過去の喪失体験から他人との関わりを避けている。手術費用を工面するため自宅の一室を貸し出し、予期せぬ形で少年クリスティアンと出会う。
クリスティアン(バスティアン・エスコバル):9歳の少年。母親が入院しており、父親のトゥリオとともにオルガの部屋へやってくる。慣れない環境で不安や寂しさを抱えながらも、オルガと次第に心を通わせていく。
トゥリオ(ウーゴ・ラミレス):クリスティアンの父親。入院中の妻に近い場所で暮らすため、オルガの部屋を借りる。息子を密かに連れ込んでいたことが、オルガの日常を変えるきっかけとなる。
イサーク(エンリケ・アレオラ)
作品の魅力解説
孤独な女性と少年が育む、思いがけない絆
本作の中心にあるのは、他人との関わりを避けていた女性と、母親の入院によって孤独を抱える少年との交流だ。オルガにとってクリスティアンは、当初、自分の生活を乱す厄介な存在でしかない。しかし、少年の弱さや不安に触れる中で、彼女が築いてきた心の壁に少しずつ変化が生まれていく。喪失や孤独という重い主題を、日常のささやかな出来事から描く人間ドラマとなっている。
モノクロ映像と静かなユーモアが生み出す独特の世界
監督のフェルナンド・エムケは、長編デビュー作『ダック・シーズン』でもモノクロ映像を用いて、限られた空間での人間関係を描いてきた。本作でもモノクロの映像表現が採用され、巨大な集合住宅で営まれる日常が静かに映し出される。深刻な状況の中にユーモアを見出す演出や、レトロなビデオゲームを取り入れた表現も、本作ならではの特徴となっている。
ベルリン国際映画祭で2つの賞を受賞
本作は、2026年の第76回ベルリン国際映画祭コンペティション部門で世界初上映され、エキュメニカル審査員賞とベルリナー・モルゲンポスト紙読者審査員賞を受賞した。国際映画祭で評価されたことに加え、『ニュー・オーダー』などで知られるメキシコの映画監督ミシェル・フランコが製作に参加している点も注目される。監督自身の過去作にも通じる繊細な人間観察が、喪失と再生の物語に結びついている。
