リーアム・ニーソン主演映画『MEMORY メモリー』(2022)を紹介&解説。
『MEMORY メモリー』概要
映画『MEMORY メモリー』は、『007/カジノ・ロワイヤル』のマーティン・キャンベル監督が放つ、老いと暴力の影を背負う殺し屋を描くアクションスリラー。ベルギー小説『De Zaak Alzheimer』を基に、記憶障害が進む中で少女暗殺を拒んだ男が犯罪組織と捜査当局の双方にさらに容赦なく追い詰められる。主演はリーアム・ニーソン、共演にガイ・ピアース、モニカ・ベルッチ。
作品情報
日本版タイトル:『MEMORY メモリー』
原題:Memory
製作年:2022年
日本公開日:2023年5月12日
ジャンル:アクション/スリラー
製作国:アメリカ
原作:ジェフ・ヒーラールツによるベルギーの小説『De Zaak Alzheimer』
上映時間:114分
監督:マーティン・キャンベル
脚本:ダリオ・スカルダパン
撮影:デヴィッド・タタサール
編集:ジョー・フランシス
作曲:ルパート・パークス
出演:リーアム・ニーソン、ガイ・ピアース、モニカ・ベルッチ
関連企業(製作・配給など):Black Bear Picturesほか製作/ショウゲート(日本配給)
『MEMORY メモリー』あらすじ
引退を考える殺し屋アレックスは、記憶障害(アルツハイマー)に悩まされながら最後の仕事に向かう。だが標的が少女だと知り、実行を拒否したことで裏社会の大物の怒りを買う。同時に捜査当局が人身売買事件を追い、彼も追跡対象に。追い詰められたアレックスは、命懸けで真相へ迫っていく。
主な登場人物(キャスト)

リーアム・ニーソン、『MEMORY メモリー』より ©2021, BBP Memory, LLC. All rights reserved.
アレックス・ルイス(リーアム・ニーソン):ベテランの契約殺し屋。アルツハイマー型認知症の兆候に悩みつつ、裏社会で慎重かつ正確な仕事ぶりで名を馳せてきた人物。記憶が失われ始める中、「子どもは殺さない」という信念を唯一の道しるべとして、自らの倫理観と引退を巡る最終任務に挑む。

ガイ・ピアース(手前)、『MEMORY メモリー』より ©2021, BBP Memory, LLC. All rights reserved.
ヴィンセント・セラ(ガイ・ピアース):FBIの人身売買対策タスクフォース捜査官。犯罪ネットワークの陰に潜む悪質な組織を追い、その捜査がアレックスの軌跡と交錯していく。法と秩序の立場から事件の核心に迫る存在だが、同時に自身の良心と制約にも向き合っていく。

モニカ・ベルッチ、『MEMORY メモリー』より ©2021, BBP Memory, LLC. All rights reserved.
ダヴァナ・シールマン(モニカ・ベルッチ):裕福な不動産界の大物にして、アレックスらを使役する権力者。表向きは成功した実業家だが、被害者や捜査線上の人物たちの運命を左右する重要人物。
ウーゴ・マルケス(ハロルド・トレス):メキシコ連邦警察の刑事。FBI捜査官のヴィンセント・セラらと共に、国境をまたぐ“人身売買組織”の捜査に関わる法執行側の一員。
リーアム・ニーソン主演『MEMORY メモリー』簡易レビュー・解説
本当に面白いのは終盤から
『007』シリーズのマーティン・キャンベル監督が風格あるニーソンと組んだだけあり、画面から漂う高級感は破格のものがある。だからこそ、ニーソンがひとりみすぼらしい空間で苦難を強いられるシーンでは、その惨めさが一層際立つ。
ただ、終盤までは基本的に“いつものリーアム・ニーソン主演アクションスリラー”の域を出ず、アルツハイマーという設定が十分に活かされる場面も少ないため、本作ならではの面白さが花開くのは終盤に入ってからだ。『96時間』シリーズや『トレイン・ミッション』『フライト・ゲーム』といったヒット作でニーソン主演のアクションスリラーに見慣れている観客にとっては、中盤までやや退屈に感じる可能性がある。
豪華キャストが映画を持たせる
とはいえ、リーアム・ニーソン、ガイ・ピアース、モニカ・ベルッチという豪華キャストの存在感と演技を堪能できるため、道中の魅力が皆無というわけでは決してない。
ニーソンは本作でもその演技力を遺憾なく発揮している。悠然とした風格を漂わせる一方で、衰弱したシーンではあの屈強な体躯をしても痛々しさが際立ち、観客の同情を引き寄せる——この緩急の使い分けは、まさにニーソンの十八番だ。
ピアースは良心的なFBI捜査官を好演。運命に翻弄される場面での切迫した息遣いと、自身の行動方針が定まってからの堂々たる面構えとのギャップが鮮やかで、ピアースという俳優の演技力の真髄を垣間見ることができる。
ベルッチは不動産業界の大物として君臨。登場シーンこそ多くないものの、有無を言わさぬ覇者のオーラが作品全体に影を落とし、その存在感は極めて大きい。
(以下ネタバレ注意)
消えても残る“MEMORY”
最後にニーソン演じるアレックスは、失われゆく記憶の中でできる限りのことを果たし、物語から退場する。しかしその影響は、残されたキャラクターたちの行動として確かに刻まれている。つまり、わずかに残った記憶(MEMORY)すら失いゆく哀愁を抱えた男の存在は、本人が消えてもなおこの世界に残り続けたのだ。なんとも粋で、クールな幕引きだ。
そして結局、公権力が法によって悪を御すことはできない。綺麗事では終わらず、闇の形で正義が執行される——このシリアスな結末が、ビターな余韻を残す。
ライター/エディター/映画インスタグラマー。2019年に早稲田大学法学部を卒業。東京都職員として国際業務等を経験後、ライター業に転身。各種SNS(Instagram・X)やYouTubeチャンネル「cula 見て聞く映画マガジン(旧:アルテミシネマ)」においても映画や海外ドラマ、音楽といったカルチャーに関する情報レビューを発信している。
