映画『ヴァレリアン 千の惑星の救世主』(2017)を紹介&解説。
映画『ヴァレリアン 千の惑星の救世主』概要
映画『ヴァレリアン 千の惑星の救世主』は、ピエール・クリスタンとジャン=クロード・メジエールによるフランスのバンド・デシネを、リュック・ベッソン監督(『フィフス・エレメント』『LUCY/ルーシー』)が実写化したSFアドベンチャー。銀河を守るエージェントのヴァレリアンとローレリーヌが、“千の惑星都市”アルファの存亡を揺るがす陰謀に立ち向かう。
主演はデイン・デハーンとカーラ・デルヴィーニュ。共演にクライヴ・オーウェン、リアーナ、イーサン・ホーク、ハービー・ハンコックら。
作品情報
| 日本版タイトル | 『ヴァレリアン 千の惑星の救世主』 |
|---|---|
| 原題 | Valerian and the City of a Thousand Planets |
| 製作年 | 2017年 |
| 本国公開日 | 2017年7月26日 |
| 日本公開日 | 2018年3月30日 |
| ジャンル | SF/アクション/アドベンチャー |
| 製作国 | フランス |
| 原作 | ピエール・クリスタン(作)/ジャン=クロード・メジエール(画)『ヴァレリアン』(バンド・デシネ) |
| 上映時間 | 137分 |
| 監督・脚本 | リュック・ベッソン |
|---|---|
| 製作 | ヴィルジニー・ベッソン=シラ |
| 製作総指揮 | マーク・ガオ/グレゴリー・オアノン/J・C・チェン |
| 撮影 | ティエリー・アルボガスト |
| 編集 | ジュリアン・レイ |
| 作曲 | アレクサンドル・デスプラ |
| 出演 | デイン・デハーン/カーラ・デルヴィーニュ/クライヴ・オーウェン/リアーナ/イーサン・ホーク/ハービー・ハンコック/クリス・ウー/ジョン・グッドマン/ルトガー・ハウアー |
| 製作 | ヨーロッパコープ/ヴァレリアンS.A.S./TF1フィルムズ・プロダクション |
| 配給 | STXフィルムズ(米国)/キノフィルムズ、木下グループ(日本) |
あらすじ
西暦2740年。数多くの異星人が共存し、それぞれの知識と文化を共有する巨大宇宙ステーション“千の惑星都市”アルファ。宇宙連邦捜査官のヴァレリアンとローレリーヌは、宇宙の秩序を守るため、さまざまな惑星で任務にあたっていた。
ある日、ふたりはフィリット司令官から、アルファの内部で拡大している放射能汚染区域を調査する極秘任務を命じられる。汚染区域は急速に広がっており、このままではアルファに暮らす全種族が死滅しかねないという。
調査を進めるふたりの前に現れたのは、30年前に消滅したと考えられていた惑星ミュールの住人たちだった。ヴァレリアンとローレリーヌは、惑星の過去に隠された秘密と宇宙連邦内部の陰謀へ近づいていく。
主な登場人物(キャスト)
ヴァレリアン(デイン・デハーン):銀河をパトロールする宇宙連邦捜査官。優秀なエージェントとして数々の勲章を受けている一方、私生活ではプレイボーイ。相棒のローレリーヌへ繰り返しアプローチしている。
ローレリーヌ(カーラ・デルヴィーニュ):ヴァレリアンの相棒として任務にあたる宇宙連邦捜査官。冷静な判断力と高い戦闘能力を備え、無鉄砲になりがちなヴァレリアンを支える。彼からの求婚は簡単には受け入れようとしない。
フィリット司令官(クライヴ・オーウェン):ヴァレリアンとローレリーヌの上官。二人にアルファ宇宙ステーションを救う極秘任務を命じる。惑星ミュールで起きた事件とも深い関係を持つ。
バブル(リアーナ):歓楽街“天国横丁”のクラブで働く踊り子エイリアン。自在に姿を変える能力を持ち、ヴァレリアンの任務に力を貸す。
客引きジョリー(イーサン・ホーク):アルファ宇宙ステーションの歓楽街で活動する客引き。バブルが出演しているクラブへヴァレリアンを案内する。
作品の魅力解説・レビュー
現代の宇宙映画と比べられてしまう不運
原作は1967年に連載が始まったフランスのバンド・デシネであり、『スター・ウォーズ』をはじめとする後世のSF作品に少なからぬ影響を与えたとされる、いわば源流のひとつである。ところが2017年の実写映画として対峙すると、『スター・ウォーズ』や『スター・トレック』といった巨大シリーズを想起させる場面が随所に現れ、どうしても既視感がつきまとう。
本来は元祖であるはずの作品が、後発の映像シリーズになぞらえて受け取られてしまうのは不憫と言うほかない。とはいえ、観客の側に生じるこうした先入観までを作品が拭い去るのは難しく、本作が備えていたはずの新鮮さが十分に届いてこない惜しさは残る。
ベッソン監督らしいカラフルな映像美
一方で、色彩豊かな映像と奇怪な異星人、巨大な宇宙ステーションを画面いっぱいに詰め込んだビジュアルには、紛れもなくリュック・ベッソン監督らしさが刻まれている。
異なる次元に併存する巨大市場や、無数の生命体が入り混じって暮らす宇宙都市アルファなど、設定そのものには心躍るアイデアが惜しみなく盛り込まれている。
カーラ・デルヴィーニュの衣装も、リアーナ演じるバブルの変身パフォーマンスも実に華やか。物語上の必然を超えてでも、次から次へと異なる景色を観客に見せようとする、その旺盛なサービス精神は確かに伝わってくる。
面白くなりそうで爆発しきらない物語
壮大な世界観、豪華キャスト、そして個性豊かな宇宙生物と、傑作となるための材料はこれ以上ないほど揃っている。ところが、新しい舞台やキャラクターが次々と繰り出される一方で、物語の核となるべき危機や感情はいっこうに深まらず、見せ場と見せ場が散漫なまま並べられている印象が拭えない。
ヴァレリアンとローレリーヌの関係にも相応の尺が割かれるものの、二人の恋愛と宇宙全体を揺るがす大事件とが、最後まで強固に結びついてこないのだ。
カラフルな映像を眺める楽しさは終始あるにもかかわらず、いままさに面白くなりそうな予感だけを抱かせたまま幕を閉じてしまう——惜しさの残るSF大作である。
簡易ストーリー解説(ネタバレ)
起:滅びた惑星から届く謎のメッセージ
28世紀、人類と数多くの異星種族が共存する巨大宇宙ステーション“アルファ”が築かれていた。一方、平和な種族パール人が暮らす惑星ミュールでは、人類と敵対勢力の宇宙戦争が勃発。戦闘に巻き込まれたミュールは壊滅し、王女リホ=ミーナも命を落とす。彼女は死の直前に、自らの精神を遠く離れたヴァレリアンへ送り込む。
宇宙連邦捜査官のヴァレリアンは、相棒のローレリーヌへ求婚するが、女好きの彼を信用できないローレリーヌは受け入れない。ふたりは異次元市場で、物質を複製できる希少生物“コンバーター”を回収。その途中で、ヴァレリアンは夢に現れたパール人と接触し、謎のエネルギー真珠も手に入れる。
承①:フィリット司令官の誘拐
アルファへ戻ったふたりは、内部で拡大する危険区域の調査を命じられる。ところが、パール人たちがフィリット司令官を誘拐。ヴァレリアンは彼らを追跡する途中で消息を絶ってしまう。
ヴァレリアンを捜すローレリーヌも凶暴な異星種族に捕らえられ、食べられそうになる。ヴァレリアンは変身能力を持つ踊り子バブルの協力を得て、敵の宮殿へ潜入。ローレリーヌを救出する。
承②:バブルの死と生き残ったパール人
三人は敵から逃げ出すが、その途中でバブルが致命傷を負う。彼女はヴァレリアンへローレリーヌを大切にするよう言い残し、息を引き取る。
ヴァレリアンとローレリーヌは危険区域へ進み、そこが放射能に汚染されていないことを知る。内部には、惑星ミュールの滅亡を生き延びたパール人たちが隠れており、誘拐されたフィリット司令官も拘束されていた。
転:惑星を滅ぼしたフィリットの罪
30年前、当時軍を指揮していたフィリットは敵艦を倒すため、惑星ごと破壊しかねない兵器の使用を命令。その結果、ミュールは壊滅した。フィリットは人類の立場を守るため、パール人の犠牲と自身の責任を隠蔽していたのだった。
フィリットは戦争終結のために必要な犠牲だったと正当化するが、ヴァレリアンとローレリーヌは、責任から逃げているだけだと非難する。パール人は故郷を再建するため、二人が持つ真珠とコンバーターを必要としていた。
軍の規則を守ろうとするヴァレリアンに対し、ローレリーヌは正しい行動を選ぶよう説得する。ヴァレリアンは彼女を信じ、真珠とコンバーターをパール人へ渡す。
結:パール人の旅立ちと二人の関係
追い詰められたフィリットは、戦闘ロボットにパール人を皆殺しにさせようとする。しかし、ヴァレリアンたちはロボット軍を撃破。パール人は完成させた宇宙船に乗り、新たな故郷を探す旅へ出発する。フィリットは虐殺と隠蔽の罪で逮捕される。
事件後、救助を待つヴァレリアンは、改めてローレリーヌへ愛を伝える。ローレリーヌは求婚に「たぶん」と答え、以前より彼を信頼するようになったことを示す。ふたりがキスを交わし、救助を待つところで物語は幕を閉じる。
ライター/エディター/映画インスタグラマー。2019年に早稲田大学法学部を卒業。東京都職員として国際業務等を経験後、ライター業に転身。各種SNS(Instagram・X)やYouTubeチャンネル「cula 見て聞く映画マガジン(旧:アルテミシネマ)」においても映画や海外ドラマ、音楽といったカルチャーに関する情報レビューを発信している。
