映画『ナイトメアー・ビフォア・クリスマス』(1993)を紹介&解説。
映画『ナイトメアー・ビフォア・クリスマス』概要
映画『ナイトメアー・ビフォア・クリスマス』は、ティム・バートンが原案・キャラクター設定を手がけ、ヘンリー・セリック監督(『ジャイアント・ピーチ』『コララインとボタンの魔女 3D』)がストップモーション・アニメーションで映像化したダークファンタジー・ミュージカル。毎年同じハロウィンを繰り返すことに退屈していたハロウィンタウンの“カボチャ大王”ジャック・スケリントンが、偶然クリスマスタウンを発見し、自分たちの手でクリスマスを開催しようとする。声の出演はクリス・サランドン、ダニー・エルフマン、キャサリン・オハラ、ケン・ペイジ、ウィリアム・ヒッキーら。
作品情報
| 日本版タイトル | 『ナイトメアー・ビフォア・クリスマス』 |
|---|---|
| 原題 | The Nightmare Before Christmas |
| 製作年 | 1993年 |
| 本国公開日 | 1993年10月13日 |
| 日本公開日 | 1994年10月22日 |
| ジャンル | アニメーション/ファンタジー/ミュージカル/ホラー |
| 製作国 | アメリカ |
| 原作 | 無 |
| 上映時間 | 76分 |
| 監督 | ヘンリー・セリック |
|---|---|
| 脚本 | キャロライン・トンプソン/マイケル・マクダウェル(脚色) |
| 製作 | ティム・バートン/デニーズ・ディ・ノービ |
| 編集 | スタン・ウェブ |
| 撮影 | ピート・コザチク |
| 作曲 | ダニー・エルフマン |
| 出演 | クリス・サランドン/ダニー・エルフマン/キャサリン・オハラ/ウィリアム・ヒッキー/グレン・シャディックス/ポール・ルーベンス/ケン・ペイジ/エド・アイヴォリーほか |
| 製作 | タッチストーン・ピクチャーズ/スケリントン・プロダクションズ |
| 配給 | ブエナ・ビスタ |
あらすじ
毎年、人間界へ恐怖に満ちたハロウィンを送り出しているハロウィンタウン。その中心にいる“恐怖の大王”ジャック・スケリントンは町の住人たちから絶大な尊敬を集めていたが、同じことを繰り返す毎日に虚しさを感じ始めていた。
刺激を求めて町を離れたジャックは、森の奥で不思議な扉を発見。扉の向こうに広がっていたのは、雪や光、プレゼントに彩られた明るいクリスマスタウンだった。
初めて見るクリスマスに夢中になったジャックは、ハロウィンタウンへ戻ると住人たちにクリスマスの魅力を伝え、自分たちの手で今年のクリスマスを作り上げようと計画する。しかし、彼らが理解した“クリスマス”は、本来のものとは大きく異なる恐ろしいものへと変貌していく。
主な登場人物(キャスト)
ジャック・スケリントン(クリス・サランドン/歌:ダニー・エルフマン):ハロウィンタウンの“恐怖の大王”。住人たちから恐怖のリーダーとして尊敬されている一方、毎年同じハロウィンを繰り返す生活に退屈している。偶然クリスマスタウンを発見したことで、その未知の文化に夢中になる。
サリー(キャサリン・オハラ):フィンケルスタイン博士によって作られた、つぎはぎの人形。ジャックに想いを寄せており、彼のクリスマス計画に不吉な予感を抱きながら行く末を見守る。
ウギー・ブギー(ケン・ペイジ):ハロウィンタウンでも嫌われている危険な存在。大きな袋のような身体の中には無数の虫が詰まっており、ギャンブルや人を恐怖に陥れることを好む。
フィンケルスタイン博士(ウィリアム・ヒッキー):サリーを作り出したハロウィンタウンのマッドサイエンティスト。サリーを自分のもとに置いておこうとする。
メイヤー(グレン・シャディックス):ハロウィンタウンの町長。感情によって表裏の顔が入れ替わる特徴的な人物で、町のイベントをジャックに頼り切っている。
ロック(ポール・ルーベンス)/ショック(キャサリン・オハラ)/バレル(ダニー・エルフマン):ウギー・ブギーの子分であるいたずら好きの3人組。ジャックからサンタクロースを連れてくるよう命じられる。
サンタクロース(エド・アイヴォリー):クリスマスタウンでクリスマスを担っている存在。ジャックたちの計画によってハロウィンタウンへ連れ去られてしまう。
作品の魅力解説・レビュー
ハロウィンの住人がクリスマスを始める、唯一無二の発想
本作最大の魅力は、「ハロウィンしか知らない怪物たちがクリスマスを理解しようとしたらどうなるのか」という極めてシンプルで強力なアイデアにある。
毎年、人々を怖がらせることに全力を注いできたハロウィンタウンの住人たちに、悪意はない。彼らは純粋にクリスマスを成功させようとしているだけだ。しかし、彼らにとって魅力的な玩具とは首や牙の付いた不気味な品物であり、楽しい飾り付けにも当然のように恐怖の感覚が入り込む。
クリスマスの幸福感とハロウィンの怪奇趣味という正反対のイメージを衝突させることで、双方の特徴がむしろ鮮明になる構造が秀逸。クリスマスタウンの雪や光のきらめきと、ハロウィンタウンの歪んだ建物や墓地、骸骨や怪物たちの姿が強烈なコントラストを生み出している。
ダークなのに愛らしい、忘れられないキャラクターと世界
ティム・バートンによる原案とキャラクター設定を核に、ヘンリー・セリック監督と制作陣がストップモーションによって作り上げた世界は、公開から長い年月を経ても簡単には代替できない個性を持つ。
細長い骸骨のジャック、身体を縫い合わせたサリー、鼻を光らせて空を飛ぶ幽霊犬ゼロ、表裏で表情の変わる町長、袋の中を虫が這い回るウギー・ブギー。主要人物だけでなく、本編で名前さえ語られない怪物たちまで、それぞれにシルエットだけで見分けられるほど強い個性が与えられている。
グロテスクさを薄めて単純に可愛らしくするのではなく、不気味さをきちんと残したまま愛嬌のあるデザインへ昇華していることも重要だろう。ダークさと可愛らしさが同時に成立する独特のバランスこそ、本作が世代を超えてキャラクター作品として愛され続ける理由のひとつだ。
ストップモーションだからこそ生まれる異世界の質感
本作を唯一無二のものにしているもうひとつの要素が、ストップモーション・アニメーションである。
人形やセットを実際に制作し、それらを少しずつ動かして撮影していく手法によって、ジャックたちにはCGアニメーションとは異なる物質的な存在感が生まれている。歪んだ建物、荒れた墓地、雪に覆われたクリスマスタウン、奇妙なプレゼントの数々まで、画面のあらゆる場所に手作業ならではの質感が残る。
なめらかさだけを追求するのではなく、どこか人形らしい動きや陰影まで含めて世界観に変えてしまう映像表現は、本作の怪奇幻想的な雰囲気と抜群に相性がいい。
ダニー・エルフマンの歌曲が物語そのものを動かす
映像と並ぶ本作の大きな魅力が、ダニー・エルフマンによる音楽だ。
ハロウィンタウンの住人たちを一気に紹介する「This Is Halloween」、クリスマスタウンを発見したジャックの興奮が爆発する「What’s This?」をはじめ、「Jack’s Lament」「Sally’s Song」「Making Christmas」「Oogie Boogie’s Song」など、登場人物の感情や世界観そのものを楽曲へ落とし込んだナンバーが次々と登場する。
単に物語の途中で歌が挿入されるのではなく、台詞で説明するはずの感情や状況を楽曲が引き受けているため、ミュージカルとしての一体感も強い。
有名な歌曲が目立つ作品ではあるものの、その間をつなぐオリジナル・スコアにもハロウィンタウンの怪しさ、クリスマスタウンの高揚感、ジャックの孤独といった感情が織り込まれており、音楽だけを聴いても作品世界を思い出せるほど印象的だ。
物語の薄さをデザインと音楽の力で押し切る76分
一方、複雑なドラマや緻密なストーリーを期待すれば、物語そのものはかなりシンプルだ。
大まかに言えば、退屈していたジャックがクリスマスを発見し、ハロウィンタウンの仲間たちと自分流のクリスマスを始めた結果、大騒動を起こすという話である。人物関係や設定を何層にも掘り下げるタイプの作品ではない。
しかし本作の場合、そのシンプルさは必ずしも欠点ではない。76分というコンパクトな上映時間の中へ、キャラクターデザイン、セット、美術、ストップモーション、歌曲、スコアといった圧倒的な創作物を次々と詰め込み、「この世界を見ていること自体が楽しい」映画として成立させている。
物語の情報量以上に、そこで何を見て、何を聴き、どんな世界を体験できるのかが価値になる。ハロウィンとクリスマスというふたつの季節を代表するモチーフを融合させ、映画全体をひとつの巨大なアートワークのように仕上げた、ストップモーション・アニメーションを代表する一本である。
簡易ストーリー解説(ネタバレ)
起|ハロウィンに飽きたジャック、クリスマスと出会う
ハロウィンタウンの人気者ジャック・スケリントンは、毎年ハロウィンを成功させ、町のみんなから称賛されている。しかし本人は、同じことを繰り返す日々に虚しさを感じていた。
一方、フィンケルスタイン博士によって作られた人形サリーは、自由を求めながら、そんなジャックに密かに想いを寄せている。
ある日、町を離れて森をさまよっていたジャックは、偶然クリスマスタウンへ迷い込む。雪、光、プレゼント、楽しそうな人々という、自分の世界とは正反対の光景に衝撃を受けたジャックは、クリスマスにすっかり魅了される。
承①|自分たちのクリスマスを作ろうと暴走する
ハロウィンタウンへ戻ったジャックは、クリスマスとは何なのかを研究し始める。しかし、その本質を理解することはできない。
やがてジャックは「理解できないなら、自分たちなりにクリスマスをやればいい」と考え、今年は自分がサンタクロース(“サンディ・クローズ”だと思っている)になると宣言する。
町の住人たちも大喜びし、棺桶のようなソリや恐ろしいオモチャなど、“ハロウィン流クリスマス”の準備を開始する。しかしサリーだけは、ジャックの計画が大惨事になる未来を予感していた。
サリーは何度もジャックを止めようとするが、クリスマスに夢中になっている彼には届かない。ジャックを本当に心配しているのはサリーなのに、ジャック自身はまだその気持ちに気づいていない。
承②|恐怖のクリスマスが始まり、すべてが大混乱に
ジャックは本物のサンタクロースを休ませるつもりで連れてこさせるが、ロック、ショック、バレルの3人は、サンタを危険な怪物ウギー・ブギーのもとへ渡してしまう。
そしてクリスマス・イブ。ジャックは意気揚々と人間界へ飛び立ち、子どもたちへプレゼントを配り始める。
しかし中身は、縮んだ首や怪物のオモチャなど恐ろしいものばかり。子どもたちは泣き叫び、街は大混乱に陥る。
それでもジャックは最初、自分のクリスマスが成功していると思い込んで楽しんでいる。しかし、ついには軍によってソリを撃ち落とされてしまう。
転|大失敗したジャックが、自分自身を取り戻す
墓地へ墜落したジャックは、そこでようやく自分がクリスマスを台無しにしてしまったことを理解する。
一度は激しく落ち込むものの、やがて「自分はやっぱりハロウィンの王なんだ」と気づく。クリスマスになろうとするのではなく、自分が本当に得意で愛しているものへ戻ればいいと悟ったジャックは、再び生き生きとする。
その頃、サリーは捕らわれたサンタを救おうとしていたが、彼女自身もウギー・ブギーに捕まってしまう。
事情を知ったジャックは救出へ向かい、ウギーと対決。ウギーの身体を作っている袋の糸をほどき、中から無数の虫を飛び出させて倒す。
結|クリスマスを取り戻し、ジャックとサリーが結ばれる
救出されたサンタはジャックに怒りながらも人間界へ戻り、残された時間で本来のクリスマスをやり直す。人々のもとには再び平和なクリスマスが戻る。
さらにハロウィンタウンにも雪が降り、怪物たちは初めて見る雪にはしゃぐ。
騒動が終わったあと、ジャックは、サリーがずっと自分を心配し支えてくれていたことに気づく。ひとり静かに丘へ向かったサリーのもとへジャックが現れ、ふたりは互いの想いを確かめ合って寄り添う。
自分の日常に飽きたジャックが、別の世界に憧れて暴走し、大失敗した末に「自分が本当に好きなもの」と「ずっとそばにいてくれた人」の大切さに気づく物語として幕を閉じる。
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ライター/エディター/映画インスタグラマー。2019年に早稲田大学法学部を卒業。東京都職員として国際業務等を経験後、ライター業に転身。各種SNS(Instagram・X)やYouTubeチャンネル「cula 見て聞く映画マガジン(旧:アルテミシネマ)」においても映画や海外ドラマ、音楽といったカルチャーに関する情報レビューを発信している。
