映画『ハムナプトラ 失われた砂漠の都』(1999)を紹介&解説。
映画『ハムナプトラ 失われた砂漠の都』概要
映画『ハムナプトラ 失われた砂漠の都』は、『ヴァン・ヘルシング』のスティーヴン・ソマーズ監督が手がけた、古代エジプトの呪いがよみがえる冒険アクション。死者の都で禁断の存在を目覚めさせてしまった一行が、世界を脅かす災厄に立ち向かう。主演はブレンダン・フレイザー、共演にレイチェル・ワイズ、ジョン・ハナ、アーノルド・ヴォスルー。アクションとホラーが融合した娯楽作。
作品情報
日本版タイトル:『ハムナプトラ 失われた砂漠の都』
原題:The Mummy
製作年:1998年
日本公開日:1999年6月19日
ジャンル:アクション/アドベンチャー/ファンタジー
製作国:アメリカ
原作:映画『ミイラ再生』(1932)
上映時間:125分
次作:『ハムナプトラ2 黄金のピラミッド』
監督:スティーヴン・ソマーズ
脚本:スティーヴン・ソマーズ
製作:ジェームズ・ジャックス/ショーン・ダニエル
製作総指揮:ケヴィン・ジャール
撮影:エイドリアン・ビドル
編集:ボブ・ダクセイ
作曲:ジェリー・ゴールドスミス
出演:ブレンダン・フレイザー/レイチェル・ワイズ/ジョン・ハナー/アーノルド・ヴォスルー/ケヴィン・J・オコナー/ジョナサン・ハイド/オデッド・フェール/エリック・アヴァリ/パトリシア・ヴェラスケス
製作:ユニバーサル・ピクチャーズ/アルファヴィル・フィルムズ
配給:ユニバーサル・ピクチャーズ
あらすじ
紀元前1290年の悲劇から時は流れた1926年のエジプト。古代遺跡に魅せられた一行は、伝説の死者の都ハムナプトラへと足を踏み入れる。だが禁断の書が封印を解き、邪悪なミイラが復活。世界を脅かす災厄を前に、彼らは生き残りを懸けて想像を超える恐怖と戦うことになる。
主な登場人物(キャスト)
リック・オコーネル(ブレンダン・フレイザー):元フランス外人部隊員。行動力と戦闘力に優れた冒険家で、死者の都ハムナプトラを目指す旅の中心人物となる。
エヴリン・カーナハン(レイチェル・ワイズ):カイロ博物館で働く知的で好奇心旺盛なエジプト学研究者。古代遺跡への強い関心から、一連の冒険の引き金を引く存在でもある。
ジョナサン・カーナハン(ジョン・ハナー):エヴリンの兄。調子がよく金や宝に目がないが、妹と行動をともにしながら騒動に巻き込まれていく。
イムホテップ(アーノルド・ヴォスルー):古代エジプトで禁忌を犯し、呪われた高僧。封印からよみがえり、圧倒的な力で世界に災厄をもたらす存在として立ちはだかる。
アーデス・ベイ(オデッド・フェール):イムホテップ復活を阻止する使命を受け継ぐメジャイの戦士。危機を察知し、一行に警告を与える重要人物。
ベニ・ガボール(ケヴィン・J・オコナー):リックの旧友でもある狡猾な男。保身と欲望からたびたび立場を変え、物語をかき回していく。
アンクスナムン(パトリシア・ヴェラスケス):古代エジプトの王妃の愛妾で、イムホテップの悲劇と執着の核にいる存在。物語全体の発端に深く関わる。
主な受賞&ノミネート歴
アカデミー賞(2000)
音響賞にノミネート。
英国アカデミー賞(BAFTA)(2000)
視覚効果賞にノミネート。
内容(ネタバレ)
紀元前1290年-禁断の愛と呪い
古代エジプト。大神官イムホテップは王の愛妾アンクスナムンと禁断の関係にあり、ふたりは関係を知られたことで王を殺害する。アンクスナムンは自ら命を絶ち、イムホテップは彼女を蘇らせようと死者の都ハムナプトラへ向かう。だが儀式は王の護衛集団メジャイによって阻止され、イムホテップは“ホム・ダイ”と呼ばれる最悪の呪いを受け、生きたまま埋葬される。
1926年-ハムナプトラへの旅
時は流れ、1926年のカイロ。図書館司書でエジプト学に夢中なエヴリンは、兄ジョナサンが持ち帰った箱と地図から、伝説の都ハムナプトラの存在を知る。地図の持ち主だった冒険家リック・オコーネルを処刑の危機から助け出したエヴリンたちは、彼の案内で死者の都へ向かう。
死者の都で眠っていたもの
ハムナプトラでは、リックたちと別の発掘隊が遺跡探索を進める。そこへメジャイの戦士アーデス・ベイが現れ、一行に立ち去るよう警告するが、誰も耳を貸さない。やがて発掘隊は“死者の書”と壺を発見し、エヴリンたちは地下でミイラ化したイムホテップの遺体を見つける。
イムホテップの復活
その夜、エヴリンは別の発掘隊が見つけた“死者の書”を持ち出し、書かれていた古代文字を読み上げてしまう。すると封印されていたイムホテップが目を覚まし、一行を襲撃。リックたちは命からがらカイロへ戻るが、イムホテップも彼らを追って現代に復活する。
イムホテップが力を取り戻していく
カイロへ戻った一行の前に、復活したイムホテップが現れる。彼は自分を目覚めさせた発掘隊の人間たちを次々と襲い、肉体を奪うことで徐々に人間の姿と強大な力を取り戻していく。さらに街にはイナゴの大群や火の雨など、“エジプトの災い”を思わせる異変が広がっていく。
エヴリンが生贄に選ばれる
リックたちは、博物館長テレンス・ベイやアーデス・ベイから、イムホテップがアンクスナムンを蘇らせるためにエヴリンを生贄として狙っていることを知る。彼を止めるには、“死者の書”とは別に存在する“アメン・ラーの書”を見つけるしかないと判明し、一行は再びハムナプトラへ向かう。
砂嵐と最終決戦
リックたちは飛行機乗りのウィンストンの協力で砂漠へ向かうが、イムホテップが巨大な砂嵐を起こしたことで飛行機は墜落。仲間を失いながらもハムナプトラへたどり着いた一行は、エヴリン救出とアメン・ラーの書の奪取を目指す。ジョナサンは書の力でミイラ兵士を操り、リックとアーデスはイムホテップ側の勢力と戦う。
イムホテップの最期
ジョナサンとエヴリンの協力でアメン・ラーの書を読み上げることでミイラ兵たちは翻弄され、イムホテップも不死の力を失い普通の人間に戻る。リックはイムホテップを倒し、彼は再び朽ちたミイラの姿となりながら、「死はすべての始まり」と言い残して消えていく。
崩壊するハムナプトラ
戦いの直後、ハムナプトラは崩壊を始める。リック、エヴリン、ジョナサンは間一髪で脱出するが、財宝を持ち出そうとしていたベニは遺跡の内部に閉じ込められ、スカラベに襲われて命を落とす。リックとエヴリンはキスを交わし、一行は少量の遺物を積んだラクダとともに砂漠を後にする。
作品解説|魅力&テーマ
“インディ・ジョーンズ”を思わせる王道冒険活劇の楽しさ
遺跡探検、砂漠横断、罠だらけの地下神殿、軽妙な掛け合い、ロマンスといった要素がテンポ良く詰め込まれており、本作最大の魅力は“古き良き冒険映画”としての面白さにある。スティーヴン・ソマーズ自身も『レイダース/失われたアーク』や往年の活劇映画から影響を受けたと語っており、英語圏でも“新世代の『インディ・ジョーンズ』”として語られることが多い。リック、エヴリン、ジョナサンの掛け合いも、作品全体の軽快さを支えている。
CGと特殊メイクを組み合わせた“当時ならでは”の恐怖演出
イムホテップの腐敗した顔や再生していく過程、砂嵐に浮かぶ巨大な顔、スカラベの群れなど、本作は1999年当時としてはかなり先進的なVFXを導入していた。Industrial Light & Magic(ILM)は、完全なCGだけでなく特殊メイクや実写を組み合わせることで、今見ても印象に残る不気味さを作り出している。現在では一部に時代を感じるCGもあるが、“古びた”というよりも、アナログ感とデジタル表現の中間にある独特の味わいとして再評価されている。
エジプト神話と豪華な美術が生み出す非日常の世界観
本作は古代エジプトの神殿、巨大な石像、黄金の装飾、死者の都ハムナプトラなど、豪華で神秘的なビジュアルも大きな魅力である。史実とは異なる脚色も多いが、古代の呪いや王家の伝説、ミイラ復活といったイメージを大胆に組み合わせることで、“危険だが魅力的な未知の世界”を作り上げている。美術監督アラン・キャメロンによる壮大なセットや、実景とスタジオを組み合わせた映像づくりも、作品の没入感につながっている。
作品トリビア
当初は“1500万ドル規模”の企画だったが、最終的には大作路線へ拡大した
脚本・監督のスティーヴン・ソマーズは、企画初期にスタジオ側から「1500万ドル規模」で進める想定を聞かされていたが、自身は「それではVFXだけで足りない」と考えていたという。のちに本人は製作費が約6200万ドルになったと振り返っており、最終的にはユニバーサルの大型アドベンチャー作品へとスケールアップしていった。
モロッコ撮影は過酷で、キャストには“誘拐保険”まで掛けられていた
ロケはモロッコで行われたが、Entertainment Weeklyの回顧取材では、ブレンダン・フレイザーが製作者ジェームズ・ジャックスから「100万ドルの誘拐保険を掛けた」と聞かされたと証言している。さらに現場では砂嵐が機材を吹き飛ばし、アーノルド・ヴォスルーはトレーラーの塗装がはがれたと回想。スティーヴン・ソマーズも「そこら中にヘビやサソリがいた」と語っており、毒蛇への注意メモまで出ていた。
ブレンダン・フレイザーは絞首シーンで実際に意識を失った
序盤の絞首刑シーンは、本当に危険な撮影になっていた。フレイザーは後年、「完全に首を絞められた」と振り返っており、EWの取材でも、ロープのテンションを強めた再テイク中に意識を失い、救護スタッフに名前を呼ばれて気が付いたと説明している。PeopleやVarietyも、2023年にフレイザー本人がテレビ番組でこの出来事を再度語ったと報じている。
VFXは当時かなり制約が大きく、今では想像しにくい作り方をしていた
本作のVFXはインダストリアル・ライト&マジック(Industrial Light & Magic/ILM)が担当したが、ソマーズによれば当時は「カメラを動かすだけでも追加負担が大きい」時代で、CGカットの設計には強い制約があったという。フレイザーも、終盤のスケルトンとの戦いでは巨大なモーションキャプチャー機材を使い、動きのアドリブがほぼ許されなかったと振り返っている。本作は英国アカデミー賞の視覚効果賞にノミネートされた。
公開前は期待値が高くなかったが、スーパーボウルCMで空気が一変した
ソマーズは、事前テストでは「そもそも“ミイラ映画”に観客の関心が薄い」と感じていたと語っている。ところが30秒のスーパーボウルCMが流れると状況が一変し、公開前の期待値が急上昇。監督自身は2000万ドル級のオープニングを想定していたが、公開翌朝にUniversal幹部から4500万ドル級のスタートになると聞かされたという。後年の回顧では、この大ヒットがシリーズ化の出発点になったことがはっきり語られている。
ライター/エディター/映画インスタグラマー。2019年に早稲田大学法学部を卒業。東京都職員として国際業務等を経験後、ライター業に転身。各種SNS(Instagram・X)やYouTubeチャンネル「cula 見て聞く映画マガジン(旧:アルテミシネマ)」においても映画や海外ドラマ、音楽といったカルチャーに関する情報レビューを発信している。
