映画『THE MONKEY/ザ・モンキー』(2025)を紹介&解説。
映画『THE MONKEY/ザ・モンキー』概要
映画『THE MONKEY/ザ・モンキー』は、オズグッド・パーキンス監督(『ロングレッグス』)が、スティーヴン・キングの短編小説「猿とシンバル」を映画化したホラーコメディ。ぜんまい仕掛けの猿のおもちゃを手にした双子の兄弟と、その周囲で相次ぐ奇怪な死を描く。『ソウ』『死霊館』シリーズなどで知られるジェームズ・ワンが製作を務めた。
主演のテオ・ジェームズが大人になった双子のハルとビルを一人二役で演じ、少年時代の2人もクリスチャン・コンヴェリーが一人二役で担当。共演にタチアナ・マズラニー、コリン・オブライエン、アダム・スコット、イライジャ・ウッド、ローハン・キャンベル、サラ・レヴィら。
作品情報
| 日本版タイトル | 『THE MONKEY/ザ・モンキー』 |
|---|---|
| 原題 | The Monkey |
| 製作年 | 2025年 |
| 本国公開日 | 2025年2月21日 |
| 日本公開日 | 2025年9月19日 |
| ジャンル | ホラー/コメディ |
| 製作国 | アメリカ |
| 原作 | スティーヴン・キング「猿とシンバル」(短編小説) |
| 上映時間 | 98分 |
| 監督・脚本 | オズグッド・パーキンス |
|---|---|
| 製作 | ジェームズ・ワン/デイヴ・キャプラン/ブライアン・カヴァナー=ジョーンズ/クリス・ファーガソン |
| 製作総指揮 | マイケル・クリア/ピーター・サフラン/ナタリア・サフラン/フレッド・バーガー/ジョン・フリードバーグ/テディ・シュワルツマン ほか |
| 撮影 | ニコ・アギラル |
| 編集 | グレッグ・ン/グレアム・フォーティン |
| 作曲 | エド・ヴァン・ブリーメン |
| 出演 | テオ・ジェームズ/タチアナ・マズラニー/クリスチャン・コンヴェリー/コリン・オブライエン/アダム・スコット/イライジャ・ウッド/ローハン・キャンベル/サラ・レヴィ |
| 製作 | C2 Motion Picture Group/Atomic Monster/The Safran Company/Range Media Partners/Oddfellows Entertainment/Stars Collective |
| 配給 | NEON(ネオン)(米国)/KADOKAWA(日本) |
あらすじ
双子の少年ハルとビルは、失踪した父が残した荷物の中から、ぜんまいを巻くとドラムを叩く猿のおもちゃを見つける。その頃から、2人の周囲では不可解で凄惨な事故死が相次ぐようになった。
猿がドラムを叩くことと人々の死に関連があると考えた兄弟は、おもちゃを枯れ井戸へと葬る。それから25年。大人になり、互いに疎遠となっていたハルとビルの周囲で再び異常な死が起こり始める。ハルは、封印したはずの猿が戻ってきたことを確信する。
主な登場人物(キャスト)
ハル(テオ・ジェームズ/少年時代:クリスチャン・コンヴェリー):ビルの双子の兄弟。幼少期に猿のおもちゃが引き起こす異常な死を経験する。大人になってからは息子ピーティーをもうけるものの、過去のトラウマから家族と距離を置いて暮らしている。
ビル(テオ・ジェームズ/少年時代:クリスチャン・コンヴェリー):ハルの双子の兄弟。幼少期からハルとは複雑な関係にあり、成人後は長年疎遠になっている。ハルと同様、猿をめぐる過去に人生を大きく左右されている。
ロイス(タチアナ・マズラニー):ハルとビルの母親。夫がいなくなった後、双子を育てる。死を避けることのできない人生について語る言葉は、後のハルの生き方にも大きな影響を残す。
ピーティー(コリン・オブライエン):ハルの息子。父親とはほとんど一緒に暮らしていないが、ハルと行動を共にしたことで、彼が長年恐れ続けてきた猿と死の連鎖へ巻き込まれていく。
ピーティー・シェルボーン機長(アダム・スコット):ハルとビルの父親。家族のもとから姿を消している人物で、猿のおもちゃの元の持ち主。
テッド(イライジャ・ウッド):ハルの元妻の新しいパートナー。ピーティーを養子に迎えることを望んでおり、それによってハルは息子との関係について決断を迫られる。
リッキー(ローハン・キャンベル):ハルたちの故郷に暮らす青年。再び現れた猿のおもちゃをめぐる騒動に関わり、ピーティーたちを危険な状況へ巻き込んでいく。
アイダ伯母(サラ・レヴィ):ハルとビルの伯母。母ロイスを失った兄弟を夫チップとともに引き取る。25年後、彼女の不可解な死をきっかけにハルは故郷へ戻ることになる。
チップ伯父(オズグッド・パーキンス):アイダの夫で、幼いハルとビルを引き取った伯父。監督のオズグッド・パーキンス自身が演じている。
作品の魅力解説・レビュー
王道の“呪われたおもちゃ”ホラーに重なる、生と死の哲学
『チャイルド・プレイ』シリーズや『アナベル』シリーズをはじめ、『ベニー・ラブズ・ユー』、さらには『ドールハウス』に至るまで、人形やおもちゃを恐怖の源泉に据えたホラー映画は数多い。ドラムを叩く猿のおもちゃを引き金に、人々が次々と命を落としていく『THE MONKEY/ザ・モンキー』もまた、その設定において“王道の呪物ホラー”の系譜に連なる一作である。
だが、スティーヴン・キングの短編を原作とする本作が描こうとしているのは、「恐ろしいおもちゃから逃れられるか否か」という単純な攻防にとどまらない。
物語の根底に横たわっているのは、序盤から提示される「人はみな、いつか死ぬ」という、きわめてシンプルでありながら誰も逃れることのできない事実である。人は自らの死とどう向き合うのか。愛する誰かを突然失った経験、失うかもしれない恐怖は、残された者の人生をいかに歪めてしまうのか。主人公は、大切な人を失うことを恐れるあまり、いまそばにいる人間からさえ距離を置くという生き方を選んでしまう。
死を遠ざけることに人生を費やすのか。それとも、死が避けられないものだからこそ、生きている時間を受け入れるのか。猿のおもちゃを軸に据えたホラーの裏側には、そうした“生と死”をめぐる物語が一本の筋としてしっかりと貫かれている。
真面目なテーマなのに、死に方では徹底的にふざける
“生と死について考える映画”と言えば、いかにも重く生真面目な作品を想像するだろう。しかし本作は、そうした枠にまったく収まらない。むしろ最大の特色は、死という題材を徹底的にブラックユーモアへと転化してみせた点にある。
首が飛ぶ、身体に異物が突き刺さるといった、ホラー映画では比較的見慣れた惨劇にとどまらず、「なぜそうなる?」と思わず笑ってしまうようなとんでもない方法で人間がミンチと化すといった、常軌を逸した死に様までもが次々と披露されていく。
猿のおもちゃ自体が人間を追い回したり、直接襲いかかったりするわけではない。ドラムが鳴れば、やがてどこかで誰かが死ぬ。ただそれだけだ。「いつ、誰が、どれほど不可解な方法で死ぬのかわからない」というこのルールを巧みに利用し、パーキンス監督は殺戮シーンそのものをブラックコメディの見せ場へと昇華させている。
深刻な“死”の哲学と、笑っていいのか戸惑うほど悪趣味な死のオンパレード。その両極が一本の映画のなかで同居しているからこそ、本作は王道の呪物ホラーでありながら、ほかに類を見ない独特の鑑賞体験をもたらしているのだ。
テオ・ジェームズ&クリスチャン・コンヴェリーが双子を一人二役
物語の中心に据えられた双子のハルとビルは、成人後をテオ・ジェームズが、少年時代をクリスチャン・コンヴェリーが、それぞれ一人二役で演じている。
外見こそ瓜二つでありながら、性格も価値観も、そして過去の出来事をどう受け止めて生きてきたかも大きく異なる二人。ジェームズは、恐怖と罪悪感を抱え込んで他者との間に距離を置くハルと、それとはまったく異なる方向へと人生をこじらせていったビルとを、鮮やかに演じ分けてみせる。
コンヴェリーもまた、同じ顔を持つ少年でありながら決して対等とはいえない関係にあるハルとビルを的確に演じ分けている。その演技は、幼少期から成人後へと連なる「同じ出来事を経験した双子が、まったく違う人間へと変わっていく」という本作の家族ドラマを、根底から支えるものだ。
派手な殺戮描写にこそ目を奪われがちな作品ではあるが、その中心にあるのは、死によって崩れてしまった家族と、長い歳月を経てもなお過去から逃れられない兄弟の姿である。一人二役という仕掛けもまた、二人の対照を視覚的に際立たせる重要な要素として機能している。
ライター/エディター/映画インスタグラマー。2019年に早稲田大学法学部を卒業。東京都職員として国際業務等を経験後、ライター業に転身。各種SNS(Instagram・X)やYouTubeチャンネル「cula 見て聞く映画マガジン(旧:アルテミシネマ)」においても映画や海外ドラマ、音楽といったカルチャーに関する情報レビューを発信している。
簡易ストーリー解説(ネタバレ)
起|猿のおもちゃが一家に死をもたらす
双子の兄弟ハルとビルは、失踪した父が残した荷物から、ぜんまい仕掛けの猿のおもちゃを発見する。猿がドラムを叩くたび、周囲では不可解かつ凄惨な事故死が発生。兄ビルから日常的にいじめられていたハルは、彼を殺そうと猿のぜんまいを回すが、実際に命を落としたのは母ロイスだった。
母を失った兄弟は伯母アイダと伯父チップに引き取られるが、再び猿が動いたことでチップも馬に踏み潰されて死亡。誰が死ぬかを選ぶことはできないと悟った2人は、猿を箱に入れて井戸の底へ捨てる。
承①|25年後、父になったハルの前に猿が戻る
25年後。大人になったハルには息子ピーティがいるが、「自分のそばにいる人間は死ぬかもしれない」という恐怖から家族と距離を置き、息子ともほとんど会わない生活を送っていた。
そんな中、伯母アイダが「FOR SALE」の看板に身体を貫かれて死亡。さらに故郷では異常な事故死が相次ぎ、ハルはかつて捨てた猿が戻ってきたと確信する。息子ピーティを連れ、再び故郷へ向かうことになる。
承②|猿を操っていたのは兄ビルだった
やがてハルは、猿を持っているのが疎遠になっていた兄ビルだと知る。
ビルは、少年時代に母ロイスが死んだのは、ハルが自分を殺そうとして猿を動かした結果だったと知っていた。その恨みから猿を取り戻し、ハルを殺すため何度もぜんまいを回していたのである。
しかし猿は殺す相手を指定できない。そのためハルではなく、町の無関係な人々ばかりが次々と奇怪な事故で死亡していた。
転|兄弟の復讐が町全体を死の連鎖に巻き込む
息子ピーティまで猿の存在に巻き込まれる中、それでもハルが死なないことに激昂したビルは、猿に無理やり何度もドラムを叩かせる。
すると死の連鎖は暴走し、飛行機事故をはじめ町中で大量の死者が発生。ハルとビルはついに直接対峙するが、ハルは、自分もかつて兄を殺そうとした人間だったことを認める。
2人は母を失った悲しみと長年の憎しみをぶつけ合い、ようやく互いに謝罪して和解する。
しかしその直後、猿が再びドラムを叩く。ビルは、自身が仕掛けていた装置によって飛んできたボウリング球を頭部に受け、首を吹き飛ばされて死亡する。
結|死を恐れて生きることをやめるハル
生き残ったハルとピーティは、猿を誰にも触らせないため、自分たちで持ち続けることを決める。
町を離れる途中、2人は「死」そのものを思わせる青白い騎手とすれ違う。ハルはそれまで、愛する人を失う恐怖から息子とも距離を取ってきた。しかし、死そのものを避けることはできないと受け入れ、今度はピーティと共に生きていこうと決意する。
ハルは、母ロイスが好きだったダンスへ行こうと息子を誘う。父子の関係に希望が生まれる一方、背後では新たな凄惨な事故が発生する。
死はこれからも突然訪れる。それでも死を恐れるあまり、生きることまで諦めるべきではない——そんな本作のテーマを、最後までブラックユーモアたっぷりに描いて物語は幕を閉じる。
