映画『幸せのポートレート』(2005)を紹介&解説。
映画『幸せのポートレート』概要
映画『幸せのポートレート』は、トーマス・ベズーチャが脚本・監督を務め、クリスマスを迎える恋人とその家族の衝突や恋愛模様を描いたコメディドラマ。エベレットは恋人メレディスを結婚相手として紹介するため、クリスマスにストーン家へ連れてくる。しかし、堅く生真面目なメレディスと、自由奔放で結束の強いストーン一家はなかなか打ち解けることができず、家族や恋人たちの関係が思わぬ方向へ動き始める。
主演はサラ・ジェシカ・パーカー、共演にダイアン・キートン、ダーモット・マローニー、クレア・デーンズ、レイチェル・マクアダムス、クレイグ・T・ネルソン、ルーク・ウィルソンら。
作品情報
| 日本版タイトル | 『幸せのポートレート』 |
|---|---|
| 原題 | The Family Stone |
| 製作年 | 2005年 |
| 本国公開日 | 2005年12月16日 |
| 日本公開日 | 2006年7月15日 |
| ジャンル | ドラマ/恋愛/コメディ |
| 製作国 | アメリカ |
| 原作 | 無 |
| 上映時間 | 103分 |
| 監督・脚本 | トーマス・ベズーチャ |
|---|---|
| 製作 | マイケル・ロンドン |
| 製作総指揮 | ジェニファー・オグデン |
| 撮影 | ジョナサン・ブラウン |
| 編集 | ジェフリー・フォード |
| 作曲 | マイケル・ジアッキーノ |
| 出演 | サラ・ジェシカ・パーカー/ダーモット・マローニー/ダイアン・キートン/クレア・デーンズ/レイチェル・マクアダムス/クレイグ・T・ネルソン/ルーク・ウィルソン |
| 製作 | Fox 2000 Pictures/Michael London Productions |
| 配給 | 20世紀フォックス |
あらすじ
クリスマスを迎えるため、エベレット・ストーンは恋人メレディス・モートンをコネチカット州に暮らす家族のもとへ連れてくる。結婚を意識するエベレットに対し、メレディスはストーン一家から認めてもらおうとするが、自由奔放な一家と生真面目な彼女の価値観はことごとく衝突。孤立してしまったメレディスは妹ジュリーに助けを求めるが、彼女の到着をきっかけに、それぞれの恋愛や家族関係まで思いがけない方向へ動き始める。
主な登場人物(キャスト)
メレディス・モートン(サラ・ジェシカ・パーカー):エベレットの恋人。仕事のできるキャリアウーマンだが、生真面目で緊張しやすい性格。結婚を意識してストーン家のクリスマスに参加するものの、一家とうまく馴染めず孤立していく。
エベレット・ストーン(ダーモット・マローニー):ストーン家の長男で、メレディスの恋人。メレディスとの結婚を考え、彼女を家族に紹介するため実家へ連れてくる。
シビル・ストーン(ダイアン・キートン):ストーン家の母親。家族への愛情が深く、率直で芯の強い人物。息子が連れてきたメレディスに対して複雑な感情を抱く。
ジュリー・モートン(クレア・デーンズ):メレディスの妹。ストーン家で孤立した姉から助けを求められ、クリスマスの集まりに参加する。姉とは対照的な柔らかい雰囲気を持つ。
エイミー・ストーン(レイチェル・マクアダムス):ストーン家の娘でエベレットの妹。気が強く歯に衣着せぬ性格で、メレディスに対して強い反発を示す。
ケリー・ストーン(クレイグ・T・ネルソン):ストーン家の父親。個性的な家族を見守る存在で、妻シビルとともに子どもたちを迎える。
ベン・ストーン(ルーク・ウィルソン):エベレットの弟。肩の力が抜けた自由な性格で、ストーン家の中ではメレディスにも比較的自然に接する。
作品の魅力解説・レビュー
「堅い」のはメレディスだけなのか
『幸せのポートレート』の魅力は、価値観を異にする人間同士がひとつの“家族”として結ばれることの難しさを、コミカルな衝突の積み重ねとして描き出した点にある。
一見すると、スーツをきっちりと着込み、言動も生真面目で不器用なメレディスこそが「堅い人間」であり、奔放に振る舞うストーン一家は「自由でオープンな人々」だと映る。ところが物語が進むにつれ、本当に凝り固まっているのはどちらなのか、その輪郭は次第に曖昧になっていく。
ストーン一家もまた、初対面のメレディスに対して早々と人物像を決めつけ、彼女の言葉や振る舞いを偏見のフィルター越しに受け取っているからだ。
掲げる価値観こそリベラルでありながら、自分たちとは異質な人間を迎え入れることにかけては、必ずしも寛容とは言えない。メレディスひとりを「問題のある部外者」として断罪しないところに、本作の一筋縄ではいかない面白さがある。
追い詰められたときに見えてくるメレディスの別の顔
メレディスもまた、単なる堅物として片づけられる人物ではない。ストーン家に溶け込もうと努めるほど空回りを重ね、精神的に追い詰められていくなかで、それまで押し殺してきた感情や、思いがけず大胆な一面までもがあらわになっていく。
不器用に自分の価値観を押しつけてしまうメレディスと、自らの価値観を疑いもせず当然の物差しとして彼女を測るストーン家。どちらか一方が全面的に正しいというより、相手を理解するより先に決めつけてしまっている点では、両者は“お互い様”とも言える。
だからこそ本作は、恋人の家族に受け入れてもらえるかというラブコメディの枠組みを借りながら、「異なる価値観の人間を受け入れるとは何か」という普遍的なテーマを浮かび上がらせていくのだ。
豪華キャストの存在感と、にぎやかさゆえの散らかり
サラ・ジェシカ・パーカーを軸に、ダイアン・キートン、レイチェル・マクアダムス、ルーク・ウィルソンといった実力派が顔をそろえたアンサンブルも大きな見どころだ。それぞれが濃い個性を放っているだけに、ストーン家のにぎやかさと、そこに漂う居心地の良さと悪さとが同時に伝わってくる。
その一方で、家族の関係と複数の恋愛模様を限られた尺のなかで一気に動かしていくため、物語にはやや散らかった印象も残る。個々の関係が大きく揺れ動くわりに、そのひとつひとつを腰を据えて掘り下げる余裕はなく、終盤に強烈なカタルシスが待つタイプの作品でもない。
とはいえ、クリスマス映画らしい温もりだけでは終わらない、どこか座りの悪い人間模様が後を引く——そんな味のあるファミリーコメディだ。
簡易ストーリー解説(ネタバレ)
起|恋人を連れてストーン家のクリスマスへ
エベレット・ストーンは、恋人メレディスをクリスマスに実家へ連れていく。エベレットは今回の帰省中に、母シビルから受け継いだ指輪でメレディスへプロポーズするつもりだった。
しかし、堅く緊張しやすいメレディスは自由奔放なストーン家になかなか馴染めない。特にエベレットの妹エイミーから強く反発され、家族との食事でも失言を重ねてしまい、完全に孤立してしまう。
承①|妹ジュリーの登場で恋人たちの関係が揺らぐ
追い詰められたメレディスは、自分を支えてもらうため妹ジュリーを呼び寄せる。
ところが、明るく自然体なジュリーはストーン家にすぐ溶け込み、エベレット自身も彼女に惹かれていく。
一方、エベレットの弟ベンは、家族から浮いてしまったメレディスにも比較的優しく接する。家を飛び出したメレディスを追いかけ、ふたりで酒を飲みながら過ごすうちに、メレディスもベンの前では少しずつ素の自分を見せるようになる。
承②|母シビルの病気と家族が抱える悲しみ
騒がしいクリスマスの裏で、ストーン家には大きな問題があった。母シビルの乳がんが再発しており、家族は彼女との時間が残り少ない可能性を知っていた。
エベレットは予定通りメレディスへプロポーズするため、シビルに家族の指輪を渡してほしいと頼む。しかしシビルはふたりの結婚に納得しておらず、簡単には指輪を譲ろうとしない。
同時に、エベレットとジュリー、メレディスとベンの距離はさらに縮まり、もともとの恋人関係は崩れていく。
転|エベレットとメレディスが別れ、それぞれ別の相手へ
エベレットは、自分が本当に惹かれているのがメレディスではなくジュリーだと認めるようになる。
メレディスもまた、完璧に振る舞おうと無理をしていたエベレットとの関係から離れ、ありのままの自分を受け入れてくれるベンと惹かれ合う。
クリスマスの混乱の中で、エベレットとメレディスの関係は終わり、エベレットとジュリー、ベンとメレディスという新しい関係が生まれていく。
結|1年後、母を失っても続いていく家族
物語は翌年のクリスマスへ。
ストーン家には再び家族が集まり、エベレットとジュリー、ベンとメレディスもそれぞれ一緒に過ごしている。
しかし、そこに母シビルの姿はない。部屋には彼女の写真が飾られており、その後シビルが病気で亡くなったことが明かされる。
家族は大切な存在を失った悲しみを抱えながらも、再び同じ家に集まりクリスマスを迎える。恋人たちのすれ違いから始まった物語は、最後には「誰かを失っても家族のつながりは続いていく」という余韻を残して幕を閉じる。
ライター/エディター/映画インスタグラマー。2019年に早稲田大学法学部を卒業。東京都職員として国際業務等を経験後、ライター業に転身。各種SNS(Instagram・X)やYouTubeチャンネル「cula 見て聞く映画マガジン(旧:アルテミシネマ)」においても映画や海外ドラマ、音楽といったカルチャーに関する情報レビューを発信している。
