『ビッグ・シック ぼくたちの大いなる目ざめ』解説|どんな映画?あらすじ・キャスト・魅力・レビューまとめ

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『ビッグ・シック ぼくたちの大いなる目ざめ』より © 2017 WHILE YOU WERE COMATOSE, LLC. ALL RIGHTS RESERVED.

映画『ビッグ・シック ぼくたちの大いなる目ざめ』(2017)を紹介&解説。


映画『ビッグ・シック ぼくたちの大いなる目ざめ』概要

映画『ビッグ・シック ぼくたちの大いなる目ざめ』は、マイケル・ショウォルター監督(『ドリスの恋愛妄想適齢期』)が、パキスタン出身のコメディアンとアメリカ人女性の実際の恋愛を題材に、文化や宗教、家族の価値観の違いを乗り越えようとする人々を描くロマンティック・コメディ。コメディアンのクメイル・ナンジアニと妻エミリー・V・ゴードンが、自分たちの体験をもとに共同で脚本を執筆した。主演はクメイル・ナンジアニ、共演にゾーイ・カザン、ホリー・ハンター、レイ・ロマノ、アヌパム・カーら。製作はジャド・アパトーとバリー・メンデルが務めた。

作品情報

日本版タイトル 『ビッグ・シック ぼくたちの大いなる目ざめ』
原題 The Big Sick
製作年 2017年
本国公開日 2017年6月23日(アメリカ限定公開)/7月14日(全米拡大公開)
日本公開日 2018年2月23日
ジャンル 恋愛/ドラマ/コメディ
製作国 アメリカ
原作 無
上映時間 120分
監督 マイケル・ショウォルター
脚本 エミリー・V・ゴードン/クメイル・ナンジアニ
製作 ジャド・アパトー/バリー・メンデル
製作総指揮 クメイル・ナンジアニ/エミリー・V・ゴードン/ジェレミー・キップ・ウォーカー/グレン・バスナー/ベン・ブラウニング
撮影 ブライアン・バーゴイン
編集 ロバート・ナッソー
作曲 マイケル・アンドリュース
出演 クメイル・ナンジアニ/ゾーイ・カザン/ホリー・ハンター/レイ・ロマノ/アヌパム・カー/ゼノビア・シュロフ/アディール・アクタル/ボー・バーナム/エイディー・ブライアント/シェナズ・トレジャリー
製作会社 アパトー・プロダクションズ/バリー・メンデル・プロダクションズ/フィルムネイション・エンターテインメント/ストーリー・インク
配給 ライオンズゲート/Amazonスタジオ(米国)/ギャガ(日本)

あらすじ

シカゴでコメディアンとしての成功を夢見るパキスタン出身の青年クメイルは、ライブ会場で出会ったアメリカ人大学院生エミリーと恋に落ちる。しかし、パキスタン人女性との見合い結婚を望む家族の期待に背くことができず、彼女との交際を隠していた。やがて秘密が発覚し、2人は破局。ところが直後、エミリーが原因不明の重病で倒れ、治療のため人工的な昏睡状態に置かれてしまう。病院へ駆けつけたクメイルは、娘を傷つけた彼に怒りを抱くエミリーの両親と向き合うことに。命の危機にあるエミリーを見守る中で、クメイルは家族の伝統と自分自身の本当の気持ちの間で、重大な選択を迫られていく。

主な登場人物(キャスト)

クメイル(クメイル・ナンジアニ):パキスタン生まれ、シカゴ在住の駆け出しコメディアン。運転手として働きながら舞台に立ち続けている。両親からはパキスタン人女性との結婚を期待されているが、アメリカ人女性エミリーと恋に落ち、家族への忠誠と自分の望む人生の間で葛藤する。

エミリー・ガードナー(ゾーイ・カザン):セラピストを目指して心理学を学ぶアメリカ人大学院生。コメディライブで出会ったクメイルと恋人関係になるが、彼が家族に交際を隠していたことを知り、深く傷つく。その後、突然の重病で入院する。

ベス・ガードナー(ホリー・ハンター):エミリーの母親。娘への愛情が強く、率直で気の強い性格。エミリーを傷つけたクメイルに当初は厳しく接するものの、病院で時間を共にするうちに彼との関係が変化していく。

テリー・ガードナー(レイ・ロマノ):エミリーの父親。妻ベスに比べて穏やかで、人当たりのよい男性。娘の病状を心配しながら、クメイルとも少しずつ交流を深めていく。夫婦関係における自身の問題も抱えている。

アズマ・ナンジアニ(アヌパム・カー):クメイルの父親。パキスタンの文化や家族の伝統を大切にしており、息子にも同じ価値観に沿った人生を望んでいる。愛情深い一方、息子の結婚をめぐる考え方には容易に譲れない部分がある。

シャーミーン・ナンジアニ(ゼノビア・シュロフ):クメイルの母親。息子にパキスタン人女性との見合い結婚をさせようと、食事の席に結婚相手の候補を次々と招く。家族の伝統と宗教的価値観を重視している。

ナヴィード・ナンジアニ(アディール・アクタル):クメイルの兄。すでに結婚しており、弟に家族の価値観や両親の期待を理解するよう働きかける。

CJ(ボー・バーナム):クメイルと同じコメディクラブで活動する若手コメディアン仲間。スタンダップ・コメディの世界で成功を目指している。

メアリー(エイディー・ブライアント):クメイルのコメディアン仲間。

ファティマ(シェナズ・トレジャリー):クメイルの母親が結婚相手として紹介するパキスタン系女性のひとり。見合い結婚を望む家族の期待を象徴する人物。

作品の魅力解説・レビュー

文化や伝統と個人の愛がぶつかる、実話に基づいた恋愛映画

本作の大きな魅力は、異なる文化的背景を持つ男女の恋愛を、単なるロマンティックな物語にとどめず、家族や伝統との衝突まで踏み込んで描いていることだ。

クメイルが直面するのは、ただ好きな人を選べば済む問題ではない。両親が大切にしてきた宗教や文化、家族の期待が、彼自身の人生に深く根付いている。自分の望む未来を選ぶことは、ときに家族との関係そのものを失う危険を伴う。

一方のエミリーにとっても、クメイルを愛しているからといって、ふたりの将来が見えない状況を簡単に受け入れられるわけではない。互いに愛情があっても、それぞれに譲れないものが存在する。

そうした恋愛の現実的な難しさを描いているからこそ、ふたりの衝突には説得力がある。文化の壁は簡単な愛情だけで乗り越えられるものではないが、本気で向き合い、行動することで越えられる場合もある。本作は、その可能性を力強く描いた1作だ。

恋人の両親との交流を通して浮かび上がる、家族のさまざまな愛情

エミリーの病気という深刻な出来事をきっかけに、物語は恋人同士の関係だけでなく、それぞれの家族との関係にも焦点を当てていく。

とりわけ印象的なのは、クメイルとエミリーの両親であるベス、テリーとの交流だ。娘を傷つけた男性を簡単には許せない両親と、彼女を心配するクメイル。最初は気まずく、互いに距離を置いていた3人が、同じ人物を想う気持ちによって少しずつ歩み寄っていく。

さらに、クメイルの両親も単純な悪役としては描かれていない。息子の幸せを願う気持ちと、長年守ってきた価値観を捨てられない気持ちは、彼らの中で矛盾なく存在している。

愛情があるからこそ相手を傷つけてしまうこともあれば、愛情があるからこそ理解し合えることもある。家族間の衝突を善悪で割り切らず、それぞれの立場にある愛情を描いている点が、本作の人間ドラマを豊かなものにしている。

重い題材にユーモアを織り交ぜる、コメディアンならではの語り口

異文化間の結婚、家族との断絶、重病による昏睡状態と、題材だけを並べれば非常に重い物語だ。しかし本作では、深刻な状況の中にも自然な笑いが織り込まれている。

主人公がコメディアンであることを活かし、舞台上のジョークだけでなく、気まずい会話や価値観のすれ違いからもユーモアを生み出している。なかでも、エミリーの両親とのぎこちないやり取りは、緊張感と滑稽さが同時に漂う独特の面白さを持つ。

笑いによって問題を軽く扱うのではなく、笑いがあるからこそ登場人物たちの痛みや不安が、より身近なものとして感じられる。コメディとシリアスな人間ドラマを両立させた構成が見どころだ。

実際の夫婦が共同執筆した物語と、結婚10周年に重なった全米公開

本作は、主演を務めたクメイル・ナンジアニと妻エミリー・V・ゴードンが、自身の交際から結婚に至る体験をもとに共同執筆した作品である。

実際の出来事をそのまま再現したドキュメンタリーではなく、映画としての脚色も含まれているが、ふたりが経験した文化的な衝突や病気、家族との関係が物語の土台になっている。

本作は2017年7月14日に全米公開を迎えた。この日は、クメイルとエミリーが2007年に結婚してからちょうど10周年の記念日でもあった。自分たちの人生を振り返り、互いの立場から物語を書き上げた夫婦が、結婚10周年という節目にその作品の全米拡大公開を迎えたという事実も感慨深い。

困難を乗り越えて結ばれたふたりの物語が、映画という形で多くの観客へ届けられたことまで含めて、作品の魅力を深めている。

簡易ストーリー解説(ネタバレ)

起:文化の違いによって引き裂かれる恋人たち

シカゴでコメディアンを目指すパキスタン出身のクメイルは、ライブ会場で出会ったアメリカ人大学院生エミリーと恋に落ちる。

しかし、クメイルの両親は伝統的な見合い結婚を望んでおり、彼は家族にエミリーの存在を隠していた。やがて、クメイルが複数のパキスタン人女性と見合いをしていたことを知ったエミリーは、2人の将来を考えられない彼に失望し、別れを告げる。

承①:エミリーの昏睡と、両親との交流

破局から間もなく、エミリーが重い病気で入院。クメイルは病院に駆けつけ、治療のため彼女を人工的な昏睡状態にすることに同意する。

エミリーの両親ベスとテリーも駆けつけるが、娘を傷つけたクメイルに冷たく接する。しかし、クメイルのライブ中に差別的な野次が飛んだ際、ベスが激しく抗議したことなどをきっかけに、3人の間には少しずつ信頼関係が生まれる。

その過程でテリーは、過去にベスを裏切って浮気したことをクメイルに告白。娘を心配する両親にも、夫婦として抱える傷や葛藤があることが明らかになる。

承②:家族との断絶、そしてエミリーの命の危機

エミリーは手術を受けるものの、病状は改善せず、感染が広がって命の危険にさらされる。ベスは転院を希望し、クメイルも彼女を救いたい一心で奔走する。

一方、クメイルはついに両親にエミリーへの愛を告白し、見合い結婚にも宗教的な期待にも従えないと伝える。しかし両親は激怒し、母シャーミーンから息子ではないと突き放されてしまう。

恋人の命と家族との関係を同時に失いかけたクメイルは精神的に追い詰められ、重要なコメディのオーディションでも失敗する。

転:エミリーの回復と、すれ違う2人の気持ち

その翌朝、エミリーの病状が改善する。原因は成人スティル病という珍しい炎症性疾患であることが判明し、適切な治療によって彼女は昏睡状態から目覚める。

しかし、エミリーは意識を失っていた間、クメイルが献身的に付き添い、両親とも親しくなっていたことを知らない。クメイルが復縁を望んでも、彼女は過去の裏切りを忘れられず拒絶する。

その後、クメイルの行動を知ったエミリーは彼への気持ちを見つめ直し始めるが、クメイルはコメディアンとして成功する夢を追い、仲間とニューヨークへ移住することを決意する。

結:家族との和解の兆しと、恋人との再会

ニューヨークへの出発前、クメイルは両親に対し、自分の人生を選んでも家族を捨てるつもりはないと伝える。

両親は依然として怒っているものの、出発当日、父アズマが母の作った料理を届け、連絡するように伝える。親子関係が修復へ向かうことを感じさせる場面となる。

ニューヨークで再び舞台に立つクメイル。すると客席から女性の歓声が聞こえてくる。声の主は、シカゴから彼に会いに来たエミリーだった。

2人が初めて出会った場面を再現するようなユーモラスなやり取りを交わし、互いに笑顔を見せる。復縁を強く予感させる形で物語は幕を閉じる。

エンドロールには、モデルとなったクメイルとエミリー本人の結婚写真が登場。クメイルの家族も結婚式に参加していたことが示される。

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