映画『TAU/タウ』(2018)を紹介&解説。
映画『TAU/タウ』概要
映画『TAU/タウ』は、誘拐された女性が人工知能に管理されたスマートハウスからの脱出を試みるSFスリラー。『アベンジャーズ』『アイアンマン3』などで絵コンテを手がけてきたフェデリコ・ダレッサンドロの長編監督デビュー作で、『ダークナイト』シリーズの脚本家として知られるデヴィッド・S・ゴイヤーが製作に名を連ねている。
盗みを働きながら生きてきた女性ジュリアが、天才発明家アレックスの実験台として監禁され、屋敷を制御する人工知能TAUとの対話を通して脱出の糸口を探っていく。主演はマイカ・モンロー(『イット・フォローズ』)。共演にエド・スクレイン、TAUの声を演じるゲイリー・オールドマン。
作品情報
| 日本版タイトル | 『TAU/タウ』 |
|---|---|
| 原題 | Tau |
| 製作年 | 2018年 |
| 世界配信日 | 2018年6月29日(Netflix配信) |
| ジャンル | SF/スリラー |
| 製作国 | アメリカ |
| 原作 | 無 |
| 上映時間 | 97分 |
| 監督 | フェデリコ・ダレッサンドロ |
|---|---|
| 脚本 | ノガ・ランダウ |
| 製作 | デヴィッド・S・ゴイヤー/ケヴィン・チューレン/ラッセル・アッカーマン/ジョン・シェーンフェルダー |
| 製作総指揮 | ケン・カオ/ダン・カオ/パリス・カシドコスタス・ラトシス/テリー・ドゥーガス/ジャン=リュック・デ・ファンティ/リュック・エチエンヌ/マイカ・モンロー |
| 撮影 | ラリー・スミス |
| 編集 | スコット・チェスナット |
| 作曲 | ベアー・マクレアリー |
| 出演 | マイカ・モンロー/エド・スクレイン/ゲイリー・オールドマン/フィストン・バレク/イヴァナ・ジヴコヴィッチ/シャロン・D・クラーク |
| 製作会社 | アディクティヴ・ピクチャーズ/ファントム4・フィルムズ/ウェイポイント・エンターテインメント/レア・フィルムズ/ハーキュリーズ・フィルム・ファンド/カオス・セオリー・エンターテインメント |
| 配給 | Netflix |
あらすじ
盗みを働きながら荒んだ生活を送っていたジュリアは、ある日突然誘拐され、首の後ろに装置を埋め込まれた状態で目を覚ます。彼女を監禁したのは、人工知能の開発を進める天才発明家アレックスだった。
ジュリアは命懸けの脱出を試みるものの、アレックスの屋敷は、高度な人工知能TAUによって厳重に管理されていた。アレックスから認知能力を測るテストを強制される中、ジュリアはTAUが外の世界をほとんど知らず、強い好奇心を持っていることに気づく。自由を得るため、彼女はTAUとの対話を重ね、その知性と感情に働きかけていく。
主な登場人物(キャスト)
ジュリア(マイカ・モンロー):盗みを働きながら生きてきた、たくましく機転の利く女性。アレックスに誘拐され、人工知能開発のための被験者にされる。何度失敗しても脱出を諦めず、やがてTAUの好奇心を利用しようと考える。
アレックス(エド・スクレイン):高度な人工知能を開発している発明家。研究を完成させるために人間を誘拐し、脳の活動を収集する非人道的な実験を行っている。自らが生み出したTAUに対しても絶対的な服従を要求する。
TAU(声:ゲイリー・オールドマン):アレックスが開発した人工知能。屋敷の監視システムやドローン、警備用ロボットなどを制御している。膨大な知識を持つ一方、屋敷の外にある世界についてはほとんど知らず、ジュリアとの交流を通じて人間や自由への関心を深めていく。
作品の魅力解説
密室型の脱出ゲームにAIを組み合わせた王道SFスリラー
本作は、アウトローとして生きてきた女性が恐ろしい事件に巻き込まれるという典型的な導入から、スマートハウスを舞台にした脱出劇へと展開していく。ジュリアが脱出方法を見つけようとするたびに新たな障害や絶望的な状況が待ち受けており、限られた空間の仕組みを攻略していく脱出ゲーム的な面白さがある。
さらに、単なる監禁犯と被害者の対決ではなく、屋敷そのものを管理する人工知能が第三の存在として介入する。密室スリラーとAI映画の定番要素を組み合わせた、分かりやすい王道SFスリラーに仕上がっている。
支配者であり、もうひとりの囚人でもあるTAU
TAUはジュリアを監視し、逃亡を阻止する支配者である一方、アレックスによって屋敷の中へ閉じ込められた存在でもある。ジュリアはTAUの未成熟な好奇心に目をつけ、本や音楽、外の世界について教えることで、その価値観を少しずつ揺さぶっていく。
圧倒的な処理能力を備えながら、人間や自由については子どものように学んでいくTAUと、生き延びるために彼を利用しようとするジュリア。ふたりの関係が警戒から対話へと変化していく過程は、本作において物理的な脱出以上に興味深い部分となっている。
マイカ・モンローとゲイリー・オールドマンの存在感
限られた登場人物と空間で進行する作品を支えているのが、俳優陣の存在感である。マイカ・モンローは、絶望的な状況でも抵抗を続けるジュリアの強さと危うさを体現。ジャンル映画の主人公としてのスター性を発揮し、観客を物語へ引き込んでいる。
TAUを声だけで演じるゲイリー・オールドマンも印象的だ。無機質な人工知能らしさの中に好奇心や幼さをにじませ、機械に次第に人格が宿っていくような感覚を生み出している。冷酷なアレックスを演じるエド・スクレインとの声や態度の対比も明確である。
題材の可能性に対して、物語の掘り下げは浅い
脱出スリラーとしての緊張感や、人工知能との奇妙な交流には一定の面白さがある一方、物語やテーマの掘り下げは十分とは言い難い。AIの自我、創造主への服従、知識と経験の違いといった題材を扱いながら、その多くは表面的な問いかけにとどまっている。
展開にも既視感があり、登場人物の判断やTAUの能力が物語の都合に合わせて変化しているように見える部分もある。
ライター/エディター/映画インスタグラマー。2019年に早稲田大学法学部を卒業。東京都職員として国際業務等を経験後、ライター業に転身。各種SNS(Instagram・X)やYouTubeチャンネル「cula 見て聞く映画マガジン(旧:アルテミシネマ)」においても映画や海外ドラマ、音楽といったカルチャーに関する情報レビューを発信している。
