映画『サブウェイ』(1985)を紹介&解説。
映画『サブウェイ』概要
映画『サブウェイ』(1985)は、リュック・ベッソン監督(『グラン・ブルー』『レオン』)が、パリの地下鉄に広がる迷路のような空間を舞台に描いたクライムドラマ。盗んだ重要書類を手に地下へ逃げ込んだ男フレッドが、風変わりな住人たちと出会い、書類の持ち主である人妻エレナに惹かれていく。
主演はクリストファー・ランバート、共演にイザベル・アジャーニ、リシャール・ボーランジェ、ジャン=ユーグ・アングラード、ジャン・レノら。
作品情報
| 日本版タイトル | 『サブウェイ』 |
|---|---|
| 原題 | Subway |
| 製作年 | 1985年 |
| 本国公開日 | 1985年4月10日 |
| 日本公開日 | 1986年12月20日 |
| ジャンル | クライム/ドラマ/恋愛 |
| 製作国 | フランス |
| 原作 | 無 |
| 上映時間 | 104分 |
| 監督 | リュック・ベッソン |
|---|---|
| 脚本 | ソフィー・シュミット/リュック・ベッソン/ピエール・ジョリヴェ/アラン・ル・アンリ/マルク・ペリエ |
| 製作 | リュック・ベッソン/フランソワ・ルッジェリ |
| 撮影 | カルロ・ヴァリーニ |
| 編集 | ソフィー・シュミット |
| 作曲 | エリック・セラ |
| 出演 | クリストファー・ランバート/イザベル・アジャーニ/リシャール・ボーランジェ/ミシェル・ガラブリュ/ジャン=ユーグ・アングラード/ジャン=ピエール・バクリ/ジャン・ブイーズ/ジャン・レノ |
| 製作 | ゴーモン/TF1フィルムズ・プロダクション/レ・フィルム・デュ・ルー/TSFプロダクション |
| 配給 | ゴーモン(フランス)/シネセゾン(日本) |
あらすじ
大富豪が開いたパーティーに潜り込み、金庫から重要書類を盗み出したフレッド。追っ手から逃れた彼は、パリの地下鉄に張り巡らされた通路や機械室へ身を隠す。フレッドは書類の持ち主であるエレナに連絡し、返却と引き換えに金を要求するが、やがて彼女自身に惹かれていく。
地下鉄には、ローラースケートで走り回る青年や花売り、音楽家など、地上の社会から離れて暮らす個性的な人々が集まっていた。彼らと親しくなったフレッドは、地下でロックバンドを結成し、コンサートを開こうと動き始める。一方、警察とエレナの夫が差し向けた追っ手は、地下鉄内でフレッドの行方を追っていた。
主な登場人物(キャスト)
フレッド(クリストファー・ランバート):大富豪の金庫から重要書類を盗み、パリの地下鉄へ逃げ込んだ男。大胆でつかみどころのない性格をしており、追われる身でありながら地下の住人を集めてバンドを結成しようとする。
エレナ・ケルマン(イザベル・アジャーニ):フレッドに書類を盗まれた大富豪の妻。退屈で束縛の多い生活を送っており、自分を脅迫するフレッドの自由な振る舞いに次第に心を動かされていく。
花売り(リシャール・ボーランジェ):エレナの夫からフレッドの捜索を任された男。花売りを思わせる格好をしているが、部下を率いて地下鉄内を執拗に捜し回る。
ジュスベール警視(ミシェル・ガラブリュ):地下鉄内で起きる犯罪を追う警察官。独自の秩序を持つ地下世界に入り込み、部下たちにフレッドの捜索を命じる。
ローラー(ジャン=ユーグ・アングラード):ローラースケートで地下鉄構内を疾走する青年。俊敏な動きを生かして盗みを働き、警察を翻弄している。
バットマン(ジャン=ピエール・バクリ):ジュスベール警視の部下。地下鉄に詳しい住人たちに振り回されながら、フレッドやローラーを追跡する。
駅長(ジャン・ブイーズ):地下鉄で働くベテラン職員。地下で暮らす人々の存在を知り、フレッドたちの騒動を見守っている。
ドラマー(ジャン・レノ):地下鉄で暮らす音楽家のひとり。フレッドが構想するバンドに加わり、地下コンサートの実現に協力する。
作品の魅力解説
パリの地下鉄を異世界へ変える映像美
物語の大部分が展開するのは、地下鉄のホームだけではない。一般客の立ち入らない通路や機械室、巨大な配管が並ぶ空間までを舞台にすることで、日常の足である地下鉄が別世界のように映し出される。美術を手がけたアレクサンドル・トローネルによるセットと、カルロ・ヴァリーニの撮影が作り出す鮮烈な色彩も印象的だ。
本作は、物語以上にファッションや色彩、音楽、若者たちの空虚さを重視した1980年代フランスの「シネマ・デュ・ルック」を代表する作品のひとつとされる。金髪を逆立てたフレッドやドレス姿のエレナなど、登場人物の外見そのものが映画の世界観を形作っている。
犯罪劇、恋愛、音楽が交差する自由な構成
重要書類をめぐる追跡劇を軸にしながら、フレッドとエレナの恋愛、地下生活者たちの日常、バンド結成の過程が緩やかに重なっていく。明確なジャンルに収まりきらない構成は好みが分かれる部分でもあるが、筋書きよりも登場人物と地下空間の雰囲気を楽しむ作品として独特の魅力を持つ。
エリック・セラの音楽と地下コンサート
リュック・ベッソン作品の常連となるエリック・セラが音楽を担当し、劇中ではベーシスト役としても出演。フレッドが地下で出会った演奏者たちを集め、即席のバンドを形作っていく展開によって、音楽が物語の重要な推進力となっている。クライマックスのコンサートは、地下に集まった孤独な人々が一時的にひとつになる象徴的な場面だ。
若きリュック・ベッソンの名を広めた出世作
長編第2作にあたる本作で、リュック・ベッソンは後の『ニキータ』『レオン』『フィフス・エレメント』にもつながる、孤独な人物への関心とスタイリッシュな映像感覚を明確に打ち出した。第11回セザール賞では、クリストファー・ランバートの主演男優賞をはじめ、美術賞と録音賞を受賞している。
