『いつだってやめられる 闘う名誉教授たち』とはどんな映画?あらすじ・キャスト・魅力・レビューまとめ

映画『いつだってやめられる 闘う名誉教授たち』(2017)を紹介&解説。


映画『いつだってやめられる 闘う名誉教授たち』概要

映画『いつだってやめられる 闘う名誉教授たち』は、職に恵まれない優秀な研究者たちの犯罪と逆転劇を描いてきた、イタリア発のクライムコメディ三部作の完結編。服役中の神経生物学者ピエトロが、神経ガスを使った大量殺りく計画の存在を察知し、刑務所に集められた仲間たちと最後の作戦に挑む。

監督・脚本はシリーズ全作を手掛けたシドニー・シビリアエドアルド・レオステファノ・フレージヴァレリオ・アプレアらおなじみの研究者チームに加え、ルイジ・ロ・カーショが彼らと対峙する工業化学者ヴァルテル・メルクリオを演じる。コメディを基調としながら、研究者の不安定な雇用、能力を正当に評価されなかった者の怒り、社会から使い捨てにされる苦しみへと立ち返る最終章となっている。

作品情報

日本版タイトル 『いつだってやめられる 闘う名誉教授たち』
原題 Smetto quando voglio – Ad honorem
製作年 2017年
本国公開日 2017年11月30日
日本公開日 2018年11月16日
ジャンル クライムコメディアクションサスペンス
製作国 イタリア
原作
上映時間 102分
前作 いつだってやめられる 10人の怒れる教授たち』(2017)
監督 シドニー・シビリア
原案・脚本 シドニー・シビリア/フランチェスカ・マニエーリ/ルイジ・ディ・カプア
製作 ドメニコ・プロカッチ/マッテオ・ロヴェーレ
撮影 ヴラダン・ラドヴィッチ
編集 ジャンニ・ヴェッツォシ
美術 アレッサンドロ・ヴァンヌッチ
衣装 パトリツィア・マッツォン
作曲 ミケーレ・ブラガ
出演 エドアルド・レオ/ルイジ・ロ・カーショ/ステファノ・フレージ/ヴァレリオ・アプレア/パオロ・カラブレージ/リベロ・デ・リエンツォ/ロレンツォ・ラヴィア/ピエトロ・セルモンティ/マルコ・ボニーニ/ロザリオ・リスマ/ジャンパオロ・モレッリ/ペッペ・バーラ/グレタ・スカラーノ/ヴァレリア・ソラリーノ/ネリ・マルコーレ
製作 グルンランディア/ファンダンゴ/ライ・チネマ
配給 01ディストリビューション/シンカ(日本)

あらすじ

警察に協力し、新型ドラッグの取り締まりに加わっていた神経生物学者ピエトロと研究者チーム。しかし、彼らは警察に裏切られる形で逮捕され、それぞれ別の刑務所に収監されてしまう。

服役中のピエトロは、工業化学者ヴァルテル・メルクリオが神経ガスを使った大量殺りくを計画していると訴えるが、警察はまともに取り合おうとしない。計画の背景を探る中で、ピエトロは因縁の宿敵である麻薬組織のボス、ムレーナが、ヴァルテルの過去を知っていることに気づく。

ヴァルテルが狙っているのは、大学関係者や政府要人が集まる名誉学位授与式だった。迫り来るテロを阻止するため、ピエトロは刑務所に散らばった仲間たちを集結させ、ムレーナの協力まで取り付けて脱獄計画を実行する。

主な登場人物(キャスト)

ピエトロ・ズィンニ(エドアルド・レオ):神経生物学者で、研究者チームのリーダー。仲間とともに服役しながらも、神経ガスを使ったテロ計画を察知する。警察が警告を聞き入れない中、自ら仲間を集めて事件を阻止しようとする。

ヴァルテル・メルクリオ(ルイジ・ロ・カーショ):優秀な工業化学者で、神経ガスによる大量殺りくを計画する男。かつて所属していた研究施設の爆発事故で恋人を失っており、研究者を切り捨てた大学や社会に深い憎悪を抱いている。

アルベルト・ペトレッリ(ステファノ・フレージ):計算化学者で、ピエトロの右腕的存在。薬物に弱いという問題を抱える一方、優れた科学知識とオペラ歌手さながらの歌唱力を持ち、刑務所からの脱出計画でも思わぬ能力を発揮する。

マッティア・アルジェリ(ヴァレリオ・アプレア):解釈論的記号学者。ジョルジョとともに給油所で働いていたチームの古参メンバーで、難解な知識を早口で説明する独特の会話が笑いを生み出す。

アルトゥーロ・フランティーニ(パオロ・カラブレージ):古典考古学者で、古代ローマの都市設計を専門とする。気弱で生真面目な性格ながら、仲間たちとともに最後の危険な作戦へ参加する。

バルトロメオ・ボネッリ(リベロ・デ・リエンツォ):動学マクロ経済学者。優れた頭脳を持つ一方でギャンブルに目がなく、危険な状況でも大胆な行動に出るチームの問題児。

パオラ・コレッティ(グレタ・スカラーノ):ピエトロたちを新型ドラッグ捜査に加えた警察官。組織の命令と研究者チームへの信頼との間で揺れながら、彼らの行動を追う。

ジュリア(ヴァレリア・ソラリーノ):ピエトロの妻であり、大学で働く研究者。名誉学位を授与されることになり、その式典がヴァルテルの復讐計画と深く結びついていく。

ムレーナ/クラウディオ・フェリーチ(ネリ・マルコーレ):かつてピエトロたちと対立した麻薬組織のボス。その正体は、ヴァルテルと同じ研究施設で働いていた元大学教授であり、テロ計画の過去を知る重要人物。宿敵だったピエトロたちと一時的に手を組む。

作品の魅力解説

作品ごとに変化するジャンルと、それをつなぐ個性

『いつだってやめられる』三部作は、作品を重ねるごとに物語の空気を変えてきた。第1作は職を失った研究者たちがドラッグ犯罪に乗り出すクライムコメディ、第2作は捜査チームとして暴走するドタバタ色の強いアクションコメディ。本作では笑いを残しながら、脱獄映画やテロサスペンスの緊張感が前面に押し出されている。

作風だけを見れば統一感に欠けるようにも映るが、おなじみの登場人物たちによる騒々しい会話と、青、赤、緑などの光で空間を染める独特の色彩設計が、シリーズとしての連続性を保っている。ジャンルを変化させながらも一目で同シリーズだと分かる映像世界は、シドニー・シビリア監督ならではのオリジナリティといえる。

雇用問題と研究者の怒りへ立ち返った最終章

第2作ではアクションとドタバタコメディが拡大した一方、本作は第1作の根底にあった研究者の雇用問題へと立ち返る。高い能力を持ちながら安定した職を得られず、組織に利用された末に切り捨てられる人々。その鬱屈はピエトロたちだけでなく、敵となるヴァルテルにも共通している。

同じように社会から傷つけられた者が、仲間と力を合わせて人命を救おうとするのか、失うもののない復讐者として暴走するのか。ピエトロとヴァルテルの対立を通して、被害を受けた経験は新たな犠牲を生み出す理由になるのかという問いを投げかける。シリーズの社会風刺を再び物語の中心へ戻したことで、完結編にふさわしいシリアスな重みが生まれた。

大人数だからこそ楽しい研究者チームの会話劇

シリーズを通じて登場人物が増えたため、一人ひとりの見せ場には差があり、十分に掘り下げられないメンバーもいる。しかし、大人数の研究者が集まり、それぞれの専門知識を持ち寄って無謀な計画を進めるにぎやかさは、本シリーズの大きな魅力である。

高度な学術用語を交えた説明、互いの知識に対する訂正、状況にそぐわない無駄話が次々に重なり、緊迫した脱獄やテロ阻止の場面まで愉快なトークコメディへと変えていく。個人の活躍だけでなく、全員が集まったときに生まれる集団としての愛嬌が、最終作でもしっかり残されている。

騒がしくも温かな三部作のグランドフィナーレ

前2作で積み重ねられた因縁を回収し、かつての宿敵まで巻き込んで研究者たちが最後の作戦に挑む構成には、三部作の集大成らしい高揚感がある。単純な勧善懲悪ではなく、ピエトロたちとヴァルテルが同じ社会問題から生まれた表裏一体の存在として描かれるため、対決の結末にもほろ苦さが残る。

それでも最後には、犯罪者としてではなく研究者としての能力が誰かの役に立ち、仲間たちの人生にも小さな希望がもたらされる。第2作で社会風刺が薄れたと感じた観客にとっても、本作はシリーズ本来のテーマと愉快な群像コメディの魅力を取り戻した完結編であり、騒がしい物語を温かな余韻とともに締めくくっている。

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