映画『ブラッド・スローン』(2016)を紹介&解説。
映画『ブラッド・スローン』概要
映画『ブラッド・スローン』は、リック・ローマン・ウォー監督(『オーバードライヴ』)が、交通事故をきっかけに刑務所へ収監されたエリート金融マンの転落と変貌を描くクライム・サスペンス。暴力とギャングの掟に支配された囚人社会で生き残るため、善良だった男が冷酷な犯罪者へと変わっていく過程を、出所後と過去の時間軸を交錯させながら映し出す。主演は『ゲーム・オブ・スローンズ』のニコライ・コスター=ワルドー。共演にレイク・ベル、オマリ・ハードウィック、ジョン・バーンサル、ホルト・マッキャラニーら。
作品情報
| 日本版タイトル | 『ブラッド・スローン』 |
|---|---|
| 原題 | Shot Caller |
| 製作年 | 2016年 |
| 本国公開日 | 2017年8月18日 |
| 日本公開日 | 2017年9月30日 |
| ジャンル | クライム/サスペンス/ドラマ |
| 製作国 | アメリカ |
| 原作 | 無 |
| 上映時間 | 121分 |
| 監督・脚本 | リック・ローマン・ウォー |
|---|---|
| 製作 | ミシェル・リトバク/ゲイリー・マイケル・ウォルターズ/ジョナサン・キング/リック・ローマン・ウォー |
| 製作総指揮 | ジェフ・スコール/ジェフリー・ストット/リサ・ザンブリ/マット・ローズ |
| 撮影 | デイナ・ゴンザレス |
| 編集 | ミシェル・テゾーロ |
| 作曲 | アントニオ・ピント |
| 出演 | ニコライ・コスター=ワルドー/オマリ・ハードウィック/レイク・ベル/ジョン・バーンサル/エモリー・コーエン/ジェフリー・ドノヴァン/ベンジャミン・ブラット/ホルト・マッキャラニー |
| 製作 | ボールド・フィルムズ/パーティシパント・メディア/カドレ・フィルムワークス |
| 配給 | サバン・フィルムズ(アメリカ)/松竹メディア事業部(日本) |
あらすじ
カリフォルニアで金融業を成功させ、美しい妻ケイトと息子に囲まれた順風満帆な生活を送っていたジェイコブ・ハーロン。ところが、飲酒後に起こした自動車事故で友人を死亡させ、刑務所へ収監されてしまう。
そこは看守ではなく、暴力と人種別ギャングの掟が支配する過酷な世界だった。家族のもとへ生きて帰るため、ジェイコブは肉体を鍛え、囚人たちの命令に従い、やがて“マネー”と呼ばれる冷酷なギャングへと変貌していく。
長い服役を経て出所したジェイコブを待っていたのは、自由な生活ではなかった。刑務所内の指導者から大規模な武器取引を実行するよう命じられた彼は、警察の監視をかわしながら、家族を危険から守るための選択を迫られる。
主な登場人物(キャスト)
ジェイコブ・“マネー”・ハーロン(ニコライ・コスター=ワルドー):金融業界で成功し、妻と息子に恵まれた生活を送っていたエリートビジネスマン。交通死亡事故によって刑務所へ収監され、生き残るために暴力とギャングの掟へ順応していく。
ケイト・ハーロン(レイク・ベル):ジェイコブの妻。突然の事故と夫の収監によって家庭を壊されながらも、息子を守り、新しい人生を築こうとする。
カッチャー(オマリ・ハードウィック):出所したジェイコブを監視する保護観察官。ジェイコブが刑務所ギャングの指示を受けて犯罪を計画していると疑い、武器取引の全容を突き止めようとする。
フランク/ショットガン(ジョン・バーンサル):ジェイコブと刑務所で知り合ったギャングの一員。
ボトルズ(ジェフリー・ドノヴァン):刑務所内の白人ギャングで影響力を持つ囚人。収監されたばかりのジェイコブに囚人社会の掟を教え、組織の一員として暴力に加わるよう求める。
ビースト(ホルト・マッキャラニー):厳重警備刑務所に収監されながら、外部の犯罪組織にまで強い影響力を及ぼすギャングの指導者。
作品の魅力解説
普通の男が刑務所の支配者へ変わる衝撃的な変貌劇
本作の中心にあるのは、善良な家庭人だったジェイコブが、生き残るために犯罪者へ変わっていく過程だ。最初は暴力におびえていた男が、刑務所のルールを学び、やがて他人へ命令を下す存在になる。原題の「Shot Caller」は、刑務所やギャングの中で重要な決定を下す指導者を意味しており、ジェイコブの変貌そのものを表したタイトルとなっている。
現実味を追求したアメリカ刑務所の描写
撮影には実在する拘置所や刑務所が使用され、囚人役のエキストラには元受刑者や実際のギャング関係者も参加した。監房の閉塞感、人種ごとに分かれた集団、暴力によって維持される序列など、刑務所内部の文化が生々しく描かれている。単純なアクション映画ではなく、刑務所という環境が人間の人格をどのように変えてしまうのかを見つめた作品だ。
ニコライ・コスター=ワルドーの徹底した役作り
主演のニコライ・コスター=ワルドーは、清潔感のある金融マンと、全身にタトゥーを入れた屈強な囚人という正反対の姿を演じ分けている。体格や外見だけでなく、歩き方、視線、声の出し方まで変化させ、ジェイコブが次第に人間らしい感情を押し殺していく様子を表現。ひとりの人物が別人のように変貌する説得力が、本作の緊張感を支えている。
家族を守る行為と犯罪の境界
ジェイコブが犯罪組織に従い続ける理由には、刑務所内での生存だけでなく、妻と息子を守るという目的がある。しかし家族を守ろうとするほど、彼自身は家族から遠ざかり、より深い犯罪へ足を踏み入れていく。愛情から生まれた行動はどこまで正当化できるのかという問いが、過酷な犯罪ドラマの中に重い余韻を与えている。
現在と過去が交差する緊張感のある構成
物語は出所後のジェイコブと、彼が刑務所で“マネー”へ変わっていく過去を並行して描く。現在の冷酷な姿を先に見せたうえで、なぜ彼がそのような人物になったのかを少しずつ明らかにする構成だ。武器取引の行方と変貌の理由が同時に展開され、最後まで緊張感が途切れない。
