映画『スクリーム』(1996)を紹介&解説。
映画『スクリーム』(1996)概要
映画『スクリーム』(1996)は、ウェス・クレイヴン監督(『エルム街の悪夢』)が、ケヴィン・ウィリアムソンの脚本を映画化したスラッシャー・ホラー/ミステリー。
カリフォルニアの田舎町ウッズボローを舞台に、ホラー映画に詳しい謎の殺人鬼が高校生たちを次々と狙う中、母親を殺された過去を持つ少女シドニーが事件へ巻き込まれていく。往年のホラー映画の定石を登場人物自身が語り、そのルールを利用・逆転させながら「犯人は誰なのか?」という謎解きを展開するメタホラーとして知られるシリーズ第1作。
主演はネーヴ・キャンベル。共演にデヴィッド・アークエット、コートニー・コックス、スキート・ウールリッチ、ローズ・マッゴーワン、マシュー・リラード、ジェイミー・ケネディ、ドリュー・バリモアら。
作品情報
| 日本版タイトル | 『スクリーム』 |
|---|---|
| 原題 | Scream |
| 製作年 | 1996年 |
| 本国公開日 | 1996年12月20日 |
| 日本公開日 | 1997年8月23日 |
| ジャンル | ホラー/ミステリー |
| 製作国 | アメリカ |
| 原作 | 無 |
| 上映時間 | 111分 |
| 監督 | ウェス・クレイヴン |
|---|---|
| 脚本 | ケヴィン・ウィリアムソン |
| 製作 | ケアリー・ウッズ/キャシー・コンラッド |
| 製作総指揮 | ボブ・ワインスタイン/ハーヴェイ・ワインスタイン/マリアンヌ・マッダレーナ |
| 撮影 | マーク・アーウィン |
| 編集 | パトリック・ルシエ |
| 作曲 | マルコ・ベルトラミ |
| 出演 | ネーヴ・キャンベル/デヴィッド・アークエット/コートニー・コックス/スキート・ウールリッチ/ローズ・マッゴーワン/マシュー・リラード/ジェイミー・ケネディ/ドリュー・バリモア/ヘンリー・ウィンクラー |
| 製作 | Woods Entertainment |
| 配給 | ディメンション・フィルムズ(米国)/アスミック(日本) |
あらすじ
カリフォルニアの田舎町ウッズボロー。高校生ケイシーのもとへ、ホラー映画について質問する謎の電話がかかってくる。それをきっかけに凄惨な殺人事件が発生した。
同じ高校に通うシドニー・プレスコットは、1年前に母親を殺害された過去を抱えていた。やがてシドニーのもとにも不気味な電話がかかり、白い仮面をかぶった殺人鬼が襲来する。
恋人ビリーや親友テイタム、映画オタクのランディら身近な人々さえ疑わしく見えてくる中、殺人鬼はホラー映画の“ルール”をなぞるように若者たちを追い詰めていく。仮面の下に隠れている人物は、一体誰なのか。
主な登場人物(キャスト)
シドニー・プレスコット(ネーヴ・キャンベル):本作の主人公。ウッズボロー高校に通う女子生徒で、1年前に母モーリーンを殺害された過去を持つ。新たな連続殺人の標的となり、身近な人物への疑念と恐怖を抱えながら殺人鬼に立ち向かう。
ビリー・ルーミス(スキート・ウールリッチ):シドニーの恋人。陰のある雰囲気を持つ青年で、シドニーがゴーストフェイスに襲撃された直後に現れたことから、一時は犯人ではないかと疑われる。
ステュ・マッチャー(マシュー・リラード):ビリーの友人で、テイタムの恋人。大声で冗談を飛ばす陽気なお調子者。学校が休校となった夜、自宅を会場に仲間たちとのパーティーを開く。
テイタム・ライリー(ローズ・マッゴーワン):シドニーの親友で、ステュの恋人。勝ち気で明るく、母親を亡くして以来不安定な状況にあるシドニーを身近で支える。デューイの妹。
ランディ・ミークス(ジェイミー・ケネディ):シドニーたちの友人で、ビデオ店でも働く筋金入りのホラー映画オタク。スラッシャー映画の定石に詳しく、現実の連続殺人もホラー映画の“ルール”に当てはめながら分析していく。シドニーに好意を寄せている。
ゲイル・ウェザーズ(コートニー・コックス):連続殺人事件を追う野心的なテレビ記者。1年前のモーリーン殺害事件について、シドニーの証言に疑問を抱き、コットン・ウェアリーは無実ではないかと主張していた。スクープを求めて捜査へ深く関わっていく。
デューイ・ライリー(デヴィッド・アークエット):ウッズボロー警察の若い保安官代理で、テイタムの兄。どこか頼りなく周囲から軽く扱われがちだが、シドニーたちを守ろうとする善良で勇敢な人物。事件を追う中でゲイルに惹かれていく。
ケイシー・ベッカー(ドリュー・バリモア):物語冒頭に登場するウッズボロー高校の女子生徒。自宅で一人過ごしていた夜、見知らぬ人物から電話を受け、ホラー映画に関する危険なクイズへ巻き込まれていく。ステュの元恋人。
アーサー・ヒンブリー校長(ヘンリー・ウィンクラー):ウッズボロー高校の校長。威圧的で短気なところもあるが、生徒の死を面白半分に扱う学生には本気で怒り、怯えるシドニーを気遣うなど、生徒たちの安全を重く受け止めている。
作品の魅力解説・レビュー
最初から全開の“ホラー映画愛”とメタ感
1作目から“ホラー映画愛”にあふれているのが『スクリーム』シリーズ。
冒頭から殺人鬼が電話越しに「好きなホラー映画は?」と問いかけ、『ハロウィン』『13日の金曜日』『エルム街の悪夢』など、すでに存在するホラー映画の知識そのものを物語へ持ち込んでいる。
登場人物たちは、まるでそれまでホラー映画など存在しなかった世界で殺人鬼に遭遇するわけではない。彼ら自身がホラー映画を観て、そのお約束も知っている。
特に映画オタクのランディが「ホラー映画で生き残るためのルール」を解説する場面は象徴的。観客も知っている定石を登場人物自身が語り、そのルールを守るのか、破るのかまでサスペンスにしてしまう。
ホラー映画を散々観てきた観客だからこそ楽しめる“メタ”な構造が、本シリーズならではの大きな魅力になっている。
ドリュー・バリモアを冒頭から犠牲にする強烈なつかみ
そして何より強いのが冒頭。
当時すでに知名度の高かったドリュー・バリモアを登場させながら、映画は彼女を容赦なく最初の惨劇へ放り込む。
電話での軽い会話が少しずつ脅迫へ変化し、ホラー映画クイズ、恋人の危機、自宅への侵入と、段階的に逃げ場が失われていく導入は非常に強烈。
「この有名俳優が中心人物なのだろう」という観客の予想まで利用して覆すことで、開始早々から「この映画では誰がどうなるか分からない」と叩き込んでくる。
すぐに観客を引き込むパワーは、シリーズ第1作の時点ですでに全開だ。
スラッシャーホラーと犯人探しが両立
ジェイソン・ボーヒーズやマイケル・マイヤーズも仮面をかぶった殺人鬼だが、基本的には「仮面の中身は誰なのか」を推理することが中心のシリーズではない。
それに対して『スクリーム』のゴーストフェイスは、仮面そのものが殺人鬼の正体ではない。
「この仮面をかぶっているのは誰なんだ?」
という疑問が、最後まで物語を引っ張っていく。
恋人、友人、学校関係者、町の人々。誰もが疑わしく見えるように伏線とミスリードが配置され、殺人鬼から逃げるスラッシャーホラーとしての緊張感と、正体を推理するミステリーとしての面白さが同時に成立している。
この“殺人鬼から逃げながら犯人も当てる”構造が、ゴーストフェイスを他の有名スラッシャーとは違う存在にしている。
ホラーの定石を壊しながら、新たな定石を作った作品
『スクリーム』が面白いのは、ホラー映画のお約束をただ笑いものにしているだけではないところ。
「こういう人物は死ぬ」「殺人鬼は最後にもう一度起き上がる」といった定石を登場人物自身に語らせながら、それを逆手に取り、それでも一本のスラッシャーホラーとしてしっかり怖がらせてくる。
既存のホラーを解体して見せた作品でありながら、ゴーストフェイス、電話による脅迫、映画に詳しい犯人、犯人当てとスラッシャーの融合といった本作独自のスタイルは、その後シリーズ化され、新たなホラー映画の定石のひとつになっていった。
過去の名作を知っているから成立する映画であり、その歴史への愛情を材料に、新しいホラーの形を作り上げた一本だ。
ライター/エディター/映画インスタグラマー。2019年に早稲田大学法学部を卒業。東京都職員として国際業務等を経験後、ライター業に転身。各種SNS(Instagram・X)やYouTubeチャンネル「cula 見て聞く映画マガジン(旧:アルテミシネマ)」においても映画や海外ドラマ、音楽といったカルチャーに関する情報レビューを発信している。
簡易ストーリー解説(ネタバレ)
起:高校生を狙う謎の殺人鬼
高校生ケイシー・ベッカーのもとに、謎の男から不気味な電話がかかってくる。やがて恋人スティーヴが目の前で腹を切り裂かれて死亡し、ケイシーも仮面の殺人鬼に追い回された末に刺殺され、遺体を木から吊るされる。
事件に揺れる町で暮らす高校生シドニー・プレスコットは、1年前に母モーリーンを殺害されていた。恋人ビリー・ルーミス、親友テイタム、その恋人ステュ、映画オタクのランディらと日常を送っていたシドニーにも、やがて殺人鬼の魔の手が迫る。
承①:シドニーへの襲撃とビリーへの疑惑
自宅でゴーストフェイスに襲われたシドニーは何とか逃げ延びるが、その直後に現れたビリーが携帯電話を落としたことで、彼が犯人ではないかと疑う。ビリーはいったん逮捕されるものの、その後も犯人から電話がかかってきたため釈放される。
事件を追うテレビ記者ゲイル・ウェザーズは、シドニーが母親殺害事件で誤った証言をした可能性を疑っていた。一方、テイタムの兄で保安官代理のデューイはゲイルと行動を共にするようになり、二人の間には次第に好意が芽生えていく。
そんな中、学校のヒンブリー校長もゴーストフェイスに何度も刺されて死亡する。
承②:パーティー会場で始まる惨劇
休校となった夜、ステュの家で高校生たちのパーティーが開かれる。
テイタムはガレージでゴーストフェイスに襲われ、逃げるためにガレージドアのペット用扉を通ろうとするが体が挟まり、そのままドアに持ち上げられて死亡する。
一方、シドニーはビリーへの警戒を解き、彼と一夜を共にする。しかし直後にゴーストフェイスが現れ、ビリーが刺されて倒れる。
さらにデューイも背中を刺されて重傷を負い、ゲイルのカメラマンであるケニーはシドニーを助けようとして喉を切られ死亡。ゲイルも車で事故を起こし、一時は生死不明となる。
転:ビリーとステュ、二人の殺人鬼
逃げ回ったシドニーの前に、生きていたビリーが現れる。助けに来たと思われた彼だったが、突然ランディを銃撃。
実はゴーストフェイスの正体は、ビリーとステュの二人組だった。ビリーが刺された場面もすべて芝居であり、二人が交代で殺人鬼を演じていた。
さらに1年前にシドニーの母モーリーンを殺したのも二人だった。モーリーンと自分の父親の不倫によって母親が家を出たことを恨んでいたビリーは、彼女を殺害し、コットン・ウェアリーに罪を着せていた。
二人は拘束していたシドニーの父親に今回の連続殺人の罪も着せ、自分たちは被害者として生き残る計画を立てていた。そのため互いをナイフで刺して傷を作るが、次第に計画は崩れ始める。
結:シドニーの反撃とゴーストフェイスの最期
隙を突いて逃げ出したシドニーは、今度は自らゴーストフェイスの衣装を利用してビリーとステュを翻弄する。
激しい争いの末、シドニーは大型テレビをステュの頭上から落とし、ステュは死亡。生きていたゲイルも戻ってきてビリーを銃撃する。
それでもビリーは再び起き上がろうとするが、最後はシドニーが頭を撃ち抜いて死亡させる。
シドニー、ランディ、ゲイル、デューイ、シドニーの父親は生き残り、一連の惨劇は幕を閉じる。
