映画『リバー・ランズ・スルー・イット』(1992)を紹介&解説。
映画『リバー・ランズ・スルー・イット』概要
映画『リバー・ランズ・スルー・イット』は、ロバート・レッドフォード監督(『普通の人々』)が、ノーマン・マクリーンの半自伝的小説を映画化したヒューマンドラマ。20世紀初頭の米モンタナ州を舞台に、厳格な牧師のもとで育った兄ノーマンと弟ポールの人生を、家族を結びつけるフライフィッシングとともに描く。クレイグ・シェイファーとブラッド・ピットが兄弟を演じ、トム・スケリット、ブレンダ・ブレッシン、エミリー・ロイドらが共演。フィリップ・ルースロによる撮影は第65回アカデミー賞撮影賞を受賞した。
作品情報
| 日本版タイトル | 『リバー・ランズ・スルー・イット』 |
|---|---|
| 原題 | A River Runs Through It |
| 製作年 | 1992年 |
| 本国公開日 | 1992年10月9日 |
| 日本公開日 | 1993年9月4日 |
| ジャンル | ドラマ/青春 |
| 製作国 | アメリカ |
| 原作 | ノーマン・マクリーン「A River Runs Through It」(中編小説/邦訳『マクリーンの川』) |
| 上映時間 | 123分 |
| 監督 | ロバート・レッドフォード |
|---|---|
| 脚本 | リチャード・フリーデンバーグ |
| 製作 | ロバート・レッドフォード/パトリック・マーキー |
| 製作総指揮 | ジェイク・エバーツ |
| 撮影 | フィリップ・ルースロ |
| 編集 | ロバート・エストリン/リンジー・クリングマン |
| 作曲 | マーク・アイシャム |
| 出演 | クレイグ・シェイファー/ブラッド・ピット/トム・スケリット/ブレンダ・ブレッシン/エミリー・ロイド/エディ・マクラーグ/スティーヴン・シェレン/ジョセフ・ゴードン=レヴィット |
| 製作 | アライド・フィルムメイカーズ/ワイルドウッド・エンタープライゼズ |
| 配給 | コロンビア・ピクチャーズ(米国)/東宝東和(日本) |
あらすじ
20世紀初頭のモンタナ州。牧師の父のもとで厳格に育てられた兄ノーマンと弟ポールは、幼い頃からフライフィッシングを通じて自然と向き合ってきた。成長したノーマンは大学進学のため故郷を離れる一方、ポールは地元で新聞記者となり、天才的な釣りの腕を磨いていく。やがて帰郷したノーマンは、自由奔放な弟が酒やギャンブルにのめり込み、危うい人生を歩み始めていることに気づく。
主な登場人物(キャスト)
ノーマン・マクリーン(クレイグ・シェイファー):マクリーン家の長男。真面目で内省的な性格で、弟ポールの奔放さや圧倒的な才能に複雑な思いを抱く。大学進学で故郷モンタナを離れた後、再び家族のもとへ帰ってくる。
ポール・マクリーン(ブラッド・ピット):ノーマンの弟。明るく自信に満ち、人を惹きつける魅力と天才的なフライフィッシングの才能を持つ。一方で酒やギャンブルに傾倒し、自らを危険へ追い込んでいく危うさも抱えている。
マクリーン牧師(トム・スケリット):ノーマンとポールの父。長老派教会の牧師で、信仰と規律を重んじる厳格な人物。息子たちに聖書とフライフィッシングを教え、それぞれ異なる生き方を選んだ兄弟を見守る。
マクリーン夫人(ブレンダ・ブレッシン):ノーマンとポールの母。厳格な父とは異なる立場から、成長してそれぞれの道を歩んでいく息子たちを見守る。
ジェシー・バーンズ(エミリー・ロイド):帰郷したノーマンが出会い、惹かれていく女性。ノーマンとの恋愛を通して、彼が故郷を離れた後の人生を選択していくきっかけとなる。
作品の魅力解説・レビュー
若きブラッド・ピットが体現する、眩しさと危うさ
本作で強烈な印象を残すのが、ポールを演じた若きブラッド・ピットだ。屈託のない笑顔と人を自然に惹きつける華やかさがあり、一見すれば明るく自信に満ちた人気者。それでいて、その奥にはいつ崩れてもおかしくない不安定さが潜んでいる。
とりわけ借金をめぐり「俺の借金だ」と言い切る場面の眼差しには、兄に心配されても決して自分の領域へ踏み込ませようとしないポールの頑なさが凝縮されている。才能に恵まれ、誰より鮮やかに生きられるはずの青年が、自らその可能性を削っていく。そんな歯痒さを、ピットは若くして説得力たっぷりに演じている。
川とフライフィッシングが、人生の時間そのものになる
モンタナの自然を映した映像も本作の大きな魅力だ。川の流れ、木々に差し込む光、広大な山々の中で行われるフライフィッシング。自然の中へ身を置くことで日常の雑念から解放されていく感覚が、映像を見るだけでも伝わってくる。
フィリップ・ルースロによる撮影がアカデミー賞撮影賞を獲得したのも納得の美しさだが、本作では単に風景を美しく見せるだけではない。変わらず流れ続ける川と、変化し、離れ、ときに失われていく人間の人生が対比されることで、穏やかな時間の中に小さな痛みが差し込んでくる。ゆったりしたテンポだからこそ、ふとした表情や沈黙が後から強く心に残る。
「大切な人を救う」とは何なのか
兄ノーマンは、才能あふれる弟を愛しながら、その生き方を止めることができない。努力しても敵わない相手への悔しさと、それほどの才能を持ちながら自ら人生を壊していく弟への歯痒さ。その両方が同時に存在する兄の感情は、単なる兄弟愛では割り切れない複雑さを持っている。
では、ノーマンはどうすればよかったのか。本作は明確な正解を提示しない。誰かを愛していても、その人の人生を代わりに生きることはできず、助けたいと思っても本人が助けを受け入れるとは限らない。人生は無常で、運命は時に理不尽だ。それでも人は、理解し切れない誰かを愛し続けることができる。兄弟だけでなく、大切な人の人生を見つめながら「自分に何ができただろう」と考えた経験のある人ほど、ノーマンのやりきれなさが深く刺さる作品だ。
ライター/エディター/映画インスタグラマー。2019年に早稲田大学法学部を卒業。東京都職員として国際業務等を経験後、ライター業に転身。各種SNS(Instagram・X)やYouTubeチャンネル「cula 見て聞く映画マガジン(旧:アルテミシネマ)」においても映画や海外ドラマ、音楽といったカルチャーに関する情報レビューを発信している。
